天ぷら三代目揚げアゲ日記

大久保天ぷら店三代目の日常の出来事、思いをつらつらと書きます

ちょっとしたさよなら。

2022-06-11 19:35:00 | 2022
大久保さんにぜひ
食べてもらいたいお店がある。

10数年前、友達に連れて行ってもらった。
お世辞にも綺麗とは言えない
カウンターのみのお店、今で言う町中華。
これをと、ラーメンを強引に頼まれて
スープをひと口・・・。

なんとも言えない口当たり。
優しさという感情の味。
来て良かったと言うと
やっぱり分かってくれた??
連れてきて良かったと友人は笑った。

それ以降よく行くようになった。
そのスープを使った他のメニューは
もちろん美味しいに決まっていた。

ある日ご主人は
人によって味付けを変えてると言った。
ビールを飲まない僕は
飲むお客より薄くしていると。
遅い時間にはスープが煮詰まってきて
早い時間より薄くすると。

街の奥深い狭い場所に
そんな場所があることが
妙に誇らしかった。

家内と付き合ってから連れて行った。
彼女も簡単にその店の虜になった。
味が合うということで
仲が深まり今に至った、ような気がする。

食について
自分の仕事について

この店に出会う以前と以降で
考え方がガラっと変わった。
肩肘張らずに普通にさらっとやる。
僕もそれに習ってやっているつもりだ。

おじさんと話をする中で
いつの間にか自分なりに決めたことが。

SNSには載せない。

忙しくさせないため
夕方5時半に1番客として行く。

注文するのは
餃子2人前、ラーメン2杯、
酢豚、後もう1品、これでささっと帰る。

新聞とかSNSに載ってるのを見ると
ちょっとーやめてーなんて思っていた。
でも紹介したい気持ちは分かる。

それぞれみんなお店に愛があった。


そのお店が突然6月8日に閉店した。


いつか来るとは思ってたのだけど
終わりはあっさりしたもので
おじさんらしい終わり方だなと納得した。

最近あまり会えない
お店を紹介してくれた友達にメールした。

彼は以前招待してくれた結婚披露宴で
出席者全員にひとこと
メッセージカードを用意していて
僕の席にあったカードに

「あんたは僕の親友です、ありがとう」

と、嘘くさいむずがゆいことを
普通に書いていた。

まあ嘘ではないだろうが
もしかしたら
あのお店へ連れて行き、美味しいと言った
僕に、
僕の舌に、
親友だと思ってくれたのじゃなかったか。

そんなことを想像しながら
幸せな結末を受け入れて
これからの人生を
もっと充実したものにしたい。

ありがとうございました。
お疲れさまでした。
これからは
思う存分競馬をして楽しんでください。

















コメント
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