オートバイで旅して観たモノの記録

 Ôtobai de tabi site mita mono no kiroku.

三木峠

2022年03月06日 | 熊野古道


 陽が昇ってから,まだ間もない.太陽の真っ赤な光を浴びながら,賀田湾の海沿いをオートバイで北上していく.尾鷲市の古江と三木里の境に三木里峠道の入口がある.入口から300メートルほど登った先に展望所があるらしい.



 オートバイを三木里峠道の路肩に停めて,前から気になっていた展望所を目指して歩いていくことにした.まだ朝早いので,辺りは薄暗く,ひんやりしていて少し肌寒い.聞こえてくるのは,風によって揺れる樹木や葉の音だけだ.



 時折,太陽の光が差し込んできて,常緑樹林の青い葉がまるで輝いているように見えるのが,きれいでとても美しかった.紀伊半島の原生林は,まだ春前だというのに,緑が力強く生い茂っていた.



 それにしても,美しい景観とは裏腹になかなかにきつい上り坂が続く.峠まで300メートルだと言うことで,少し軽く考えてしまって,ジャケットを羽織ったまま来てしまったものだから,全身にじんわりと汗が滲んでくる.



 そうこうしている内に,ようやく三木峠にたどり着く.峠は樹木が生い茂っていて,展望はまったくない.展望所は峠から,少し東へ登った先にあるようだ.ちょっと一休みしようかと思ったけれど,展望所まで一気に行ってしまうことにした.



 展望所までの道は,高く林立した樹木の根元周りにシダが群生していて,とても美しかった.道の先には,真っ白な空が垣間見える.展望所まではもうすぐだ.


 
 最後の登坂を越えると,広場のようになっていて,太陽の真っ白な光が降りそそぐ.視界の先には,賀田湾の海が白く輝いていた.展望所とはいえ,辺りには樹木が生い茂っていて,オーシャンビューという訳にはいかなかった.



 それでも,峠から見える海はやっぱり気持ちがいい.ベンチに腰掛けて,ペットボトルのお茶を一気に飲み干す.ジャケットを脱いで,クールダウンしていると,爽やかな風が通り抜けていく.三木峠で迎えた穏やかな朝だった.

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