昔の望遠鏡で見ています

昔の望遠鏡による天体観望と、その鏡景写真についてご紹介します

H85反射経緯台

2022-04-22 | 天体望遠鏡
 かつてのベストセラー機だったミザールH100の弟分で、光学系は主鏡85mm焦点距離850mmである。このクラスでF10というのは長い方だと思うが、組み立てや取り回しは、軽量であることも手伝って軽快なものだ。どうりで、昔の天文ガイドの ” 私の愛機 ” のコーナーに、毎月のように載っていたわけだと思った。
 経緯台は上下微動付きだが、水平方向の微動は付属しないので、入門機の扱いだと思っていたら、天文ガイド別冊「双眼鏡 / 天体望遠鏡ガイド」(誠文堂新光社 昭和44年)の解説に、高校生,アマチュア向けと記載されている。考えてみると当時の物価水準では、望遠鏡はまだまだ高価なものだったので、このような位置付けになるのだろう。

 以下に、箱内の格納状況や望遠鏡各部の詳細などを紹介する。



 段ボール箱に格納されている。日野金属のロゴが懐かしい。




 上箱を開けたところである。左側に三脚の三角板、右側に三脚架台、そして上側に木製三脚が見える。



 左右の発泡スチロールを外したところである。ファインダーの向きが逆なのでびっくりするが、発泡スチロールの格納スペースの関係でそのようになっているものである。




 筒先の方向から見たもので、なかなか格好が良いと思う。ファインダーは、古いH100と同じ3cm10倍のものである。

 

 経緯台部である。上下微動竿の回転部は、金属製のしっかりしたものだ。




 斜鏡は、極小の短径20mmである。



 主鏡と斜鏡である。メッキは周辺部に加え、内側もぽつぽつと一部劣化しているが、半世紀前の製品だと思えば良い方であろう。



 二段ドロチューブの様子である。粗動部は約30mmで、ヘリコイドの可動範囲は約25mmである。小型機に、この手抜きのない造りを採用したのは、ミザールの物づくりへのこだわりなのであろう。
 H100と同じく、粗動部があるのは旧型機なのだと思われる。このことについては、ミザールのyoutubeに関連する説明があったので、ご紹介しておく。
 https://www.youtube.com/watch?v=Apa6YtWGDLk

 筒径が小さいので、外した斜鏡を取付けるのに、うまく手が入らないので苦労した。これは逆から考えると、大型機の機構をそのまま小さく作ってあるからだろう。今の世の中では、コストが高くなりすぎて作ることが出来ない、手間暇が掛かった望遠鏡なのだと感じた。 


 

屋内に飾られた望遠鏡

2022-04-16 | 天体望遠鏡


 天文台に入ると、正面に天体望遠鏡が見える。これは、旧天文台において、約30年に渡って実際に使われていたもので、木辺鏡を三鷹の赤道儀に組み込んだ、均整の取れた姿の銘機である。

 右奥にある受付に向かう時に、望遠鏡の細かな部分が見えてくる。ニコンの副鏡が二本載っていることや、接眼部の合焦機構が精密に作られていることなどが目に入る。この事で初めて訪れた人も、ここが天文台であることを実感する。
 一方、かつての天文台を知る人は、この望遠鏡が古い観測室にあった時には、今よりもっと堂々としていて、人々を楽しませていたことを思い出す。そして、今はもう二度と覗くことの出来ないことを残念に感じる。
 


 星を見ることの出来ない望遠鏡の存在について考えていると、野尻抱影の言葉を思い出す。
「・・・目をつぶると、オリオンなんかがはっきり見えて、今あの方向にあの何度の高さでオリオンが出て、三ッ星が少しかしいでいるのが、はっきり目に見えますからね。ですから、まあ星につかれて、星にたたられている人間でしょうね。」( ” 星の文人 野尻抱影 ” 学問と情熱第22巻 紀伊国屋書店評伝シリーズ DVD )。




 昔の天文台で覗いた時のことを懐かしみながら、望遠鏡の周りを歩いてみる。間もなく、接眼部にアイピースが装着されているのに気が付く。その時、もしそこに目を近づけたなら、今でも星が見えるのではないかと錯覚しそうになった。そんな自分は、望遠鏡につかれて、望遠鏡にたたられている人間なのかもしれない。



 アイピースを見ると、主鏡にニコンのH60mm、ニコン15cm屈折にニコンのH40mm、そしてニコン10cm屈折には、なんと五藤のH7mmが装着されていた。

昔のスライド投影機

2022-04-08 | 日記
 町内会などの総会の案内が、届く季節である。地域からお声が掛かるので、柄にもなく、お手伝いを続けているのだが、その発端はこの天文という趣味なのだ。それは四半世紀くらい前に、何かの拍子に星好きということを知られ、小学校で星の教室を頼まれたのが始まりだった。

 星の教室を行ったのは夏休みの初めの頃で、少々夜更かしをしても良い時期だったので、大勢の子供やその父兄が参加してくれた。当日は、初め体育館で星の勉強を行った後に、校庭で望遠鏡を覗いてもらった。観望に使う望遠鏡は、星見友達に頼んで、ミューロン25cm~アポ10cmを数台並べてもらった。シューメーカーレビー彗星が木星に衝突した、ちょうどその日も開催しており、木星の自転によって裏側から現れてくる黒い斑点を見て、皆で驚いたものだ。

 体育館での星の勉強は、説明の上手な友人にお願いした。内容は、彼自身が撮影したスライドで星の動きを解説したり、地球儀や月に見立てたボールで宇宙の広がりを理解してもらったりするもので、玄人はだしのものだった。その際に使用したのは自前のスライド投影機で、予めスライドを挿入してあるマガジンを用意し、手際よく投影できるように工夫されていた。

 その後に、小学校以外でも星の教室を頼まれる機会が増え、先の友人が都合が付かない時などに、自分で星の説明を行う必要に迫られ、投影機やスライドなどを揃えることになった

 

 左がマガジンで、話の流れに応じて予めスライドを装填しておいた。

  よく使ったスライドは、「遥かなる宇宙へ(木曽観測所スライドセット)」「GOTO天文スライドセット(大気環境編)」「HUBBLE EXPANDING THE UNIVERSE(ARMAGH PLANETARIUM)」であった。久しぶりに出してみたのだが、乾燥剤を入れたビニール袋にしまっておいたのが良かったのか、紙のマウントに一部変色はあったが、カビは無かった。このほかに、NASAによる惑星探査のスライドもあったのだが、火星の人面岩を出すと歓声が上がったのも懐かしい思い出である。

春のテレパック

2022-04-02 | 日記
 春らしい日和に、鏡景写真を撮りに出かける。周りを見渡していると、遠くの雪山にジグザクの黒い筋があるのに気付く。その位置関係から、春の観光シーズンに備えて除雪された道路だと判る。一方、里の方だが、人影もまれだし小川の水音もまだ聞こえないので、外での作業はこれからなのだろう。

 

 年度には関係しないのだが、改めて星見の計画を考えてみる。久しぶりにあの山の上に星見に行きたいと思うし、友人が始める電視観望も見せて貰うことにしよう。利用できるようになる天文台の望遠鏡も、持参する接眼鏡などが使えるというので、いろいろ準備して覗いてみたい。そして何と言っても星まつりである。疫病の収束次第ではあるが、今年こそは開催されることを祈りたい。