昔の望遠鏡で見ています

桜の下のテレパック


 山間部の湖畔の桜は、まだ見頃であった。画像は、その桜とテレパックの鏡景写真である。
 桜をバックとする鏡景写真は、奥が深い。花びらを後ろにすると、白い鏡筒が埋もれてしまうし、幹を後ろにすると、今度は幹が黒々と写ってしまう。上の作例では、正面から太陽光が当たる頃を見計らったもので、幹の黒さの低減を試みたものである。

 さて今頃の入学式のシーズンになると、初めて天文同好会の部室を訪れた時のことを思い出す。
 校舎の間を抜けると草ぼうぼうの空地になり、手前に手造りの楽焼窯、奥にテニスコートが数面見えてくる。そこを右に曲がって桜の咲く土手を上ると、目指すサークル棟があった。進駐軍が使っていたという細長い建物を改修したもので、番号の付いた扉が並んでいる。そこのC棟の24番が、天文同好会の部屋だった。

 入学して、真っ先に探したのが同好会の募集案内だ。それまで、一人で星を見てきたのだが、どうも仲間が欲しくなってきていた。この時期の学内は、沢山の人が出て、各々のサークル員の募集を行っていた。一年で一番活気がある時期だったろう。その人の間を抜け、食堂の扉の上のガラスに、天文同好会員募集のビラを見つけた時の喜びは、昨日の事のように覚えている。ビラは、下宿の物干し台で望遠鏡を覗く学生と、その家の娘が描かれたもので、その頃に流行していた4畳半的イメージの、ほのぼのとしたものだった。

 部屋に入ると、ぽつんと一人座っている。入部したいと話すと、自分も新入生だという。後の部長となるD君との出会いだった。その後に何度か行ってみると、人の出入りは少なかったが、数人の新入会員が入ったという。また同好会の成り立ちは、UFOや熱気球を研究していたサークルが母体となって、二年前に出来たということだった。どうも怪しい雰囲気の、つぶれそうな同好会だと判ってきたのだが、きっと自分に合っていたのだろう、居心地はとても良く、楽しい時間を過ごさせてもらったのだった。


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