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昔の望遠鏡で見ています

昔の望遠鏡による天体観望と、その鏡景写真についてご紹介します

火星とその観測

2020-10-31 | 天体望遠鏡


 風が少しありますが天気も良いので、西村15cm反射を出そうと思います。この望遠鏡は、いつもは組み立てたまま保管していますので、外に出す際には一旦鏡筒を外さなければなりませんが、このように床に立てることが出来るので便利です。




 外気温に十分馴染ませるよう、筒先の蓋を外し、主鏡脇の扉も開放しておきます。
 今晩の火星の観望に備えて、火星の模様について調べておくことにします。

 用いるのは、名著である ” 火星とその観測 ” です。おなじみの青表紙の「天体観測シリーズ」1冊と、その前進である「中学天文教室」があります。ともに著者は佐伯恒夫、発行所は恒星社厚生閣です。「中学天文教室」には、少なくとも二つのバージョンがあるようです。右綴じのものが初版で、左綴じが改訂版のようです。初版本と改訂版が初めて発行されたのは、序及び奥付に記載された日付より、それぞれ昭和27年と昭和33年と考えられます。これらの本が売り出された時代は、まだまだ豊かではなかったと思いますが、夢や希望は現代より有ったと思います。そのような中、多くの天文少年少女が、この本を目を輝かせて読んだことでしょう。

 改訂版には帯が残っていました。そこには、次のように記されています。 ” 週刊朝日が日本の火星男と呼んだ著者が、二十余年にわたる観測の経験をもとに著作した我国最初の本格的火星入門書。二年二か月毎にわが地球に接近し、空飛ぶ円盤・火星人来襲の話題を投げる謎の火星!いま著者らの努力によって詳細な火星地図は完成し、気候変化、物理的状態は捉えられ、火星運河や生命生存説に最後のキメ手が与えられようとしている。百七十枚の写真・スケッチによる詳細な火星実測案内書 価三百五十円 ”
 火星男とは、最大級の誉め言葉なのでしょう。また、空飛ぶ円盤や火星人来襲という言葉には、時代を感じます。

 さて、アメリカのマリナー号が火星の撮影に最初に成功したのが、昭和四十年ですので、これらの本では、地球からの観測で考えられていた事柄について書かれていることになります。一部をご紹介します。 ” この地域で、小望遠鏡でも出来る面白い観測は、大シルチスの夜明け時の白雲です。大シルチスが火星の西縁から現れる時には、必ずと云って良いほど白く輝いた巨大な雲状物に掩われています。しかし時刻が移るにつれて、先ずその北端が、雲の中から現れ、つづいて大シルチスの姿が出現します。そしてシルチスが完全に全姿を現した時には、白雲はその白さも輝きも衰えてしまって、シルチスの西側に横たわっていますが、間もなく消え去ってしまいます。さてつぎに時刻が移り、大シルチスが火星の東端に達したた頃には、非常に濃く明らかに見えますが、数本の白条が現れて、この大海を分断します。又、稀には薄いモヤが大シルチス全体を掩います。こうした珍象は殊に春から夏にかけて頻繁に発生します。ここで大シルチスや前に述べたアシダリウム海などは文字通り海とは云えないながらも、非常に湿気の強い部分、云い換えれば、火星世界の大湿地帯であると考えたくなる訳です。”(初版 火星の地理 大シルチス付近、より抜粋。)

 今の時期、まさに大シルチス付近が西端から出てきますので、上記の説明はとても興味深く感じられます。