昔の望遠鏡で見ています

昔の望遠鏡による天体観望と、その鏡景写真についてご紹介します

ビデオ雲台に双眼鏡

2024-09-06 | 日記
 手持ちの双眼鏡は、どうしてもぐらぐらする。特に天体用と言われている7倍50は結構な重さがあるので、非体育系の自分にはじっくり観察するのも難しい。そのような中で同好会の双眼鏡愛好家より、ビデオ雲台付きの三脚を用いると良いという話を聞いたので、今回試したものである。ビデオ雲台付き三脚は、三脚部分がカーボン製のもので、この夏の星まつりでアウトレット品を購入したのだが、旧来のアルミ製の三脚しか知らない自分にとっては驚くべき軽さである。
 試してみる場所は、いつもの山岳道路にある駐車場とする。その日は海風が吹き込み、山麓に雲が発生していた。山道を登り始めると、すぐにヘッドライトに霧の塊が照らし出される。木々がトンネル状に生い茂っているところではライトの光は先まで届くのだが、開けたところに来ると再び霧に包まれる。そのような事を繰り返しながら、ゆっくりと登っていった。途中で軽のミッドシップ車が迫ってきたので道を譲ると、あっという間に見えなくなる。あの車の操作性は良いと聞くが、自分だったらあんなにスイスイと運転は出来ないなと思った。
 目的の場所に着くと、雲海の上には出ているのだが、山頂付近には別の雲が陣取っていた。それでも、南側には天の川の東側とティーポットが良く見え、天頂には夏の大三角が輝いている。ベガとアルタイルの中間付近には、コートハンガーと思われる星の集まりも判るので、結構な空の暗さである。振り返ると、北東の空にはカシオペアが昇り、そして更に左に視線を向けると、北斗七星がこれから下方通過しようとしているのが判った。
 北斗七星と北極星の間にも、いくつかの星が見える。星座ソフトで確認すると、りゅう座と子熊座だ。その中には赤っぽい星も見え、今宵はプラネタリウム級の空のようである。
 今回使用した三脚アダプターは、純正の物である。事前に、半世紀前に購入したカートンビノシーカーを取付けてみたのだが、総金属製のしっかりした造りなのだが、ちょっと寸足らずだった。





 上の画像は、カートン製のホルダーである。今回これは使っていない。次の画像は、純正のアダプターを使用し、トロピカルを三脚に取付けた様子である。
 最初に、三脚をほどほどの長さにして、高さの調節できる椅子に座って見てみた。ビデオ雲台は上下左右にじわっと動きカクンと倒れないので、使い易いと思った。ただ前後のバランス上、じっくり見る際にはクランプを閉める必要があるようだ。次に三脚を伸ばして、立った姿勢で覗いてみた。すると、フットワーク良く見渡せるので、これはこれで使えると思った。三脚が軽量なので、倒れるのではと少し心配したが、大丈夫であった。




 三脚に取付けて見てみて気が付いたのは、細かなところが見えるのは当然として、星の色が判り易いというのもメリットだと思った。




双眼鏡を持って山岳道路へ

2024-07-07 | 日記
 梅雨の晴れ間は、急にやってくる。望遠鏡を準備する気力は無いが、星は見に行きたい。それは、そんな日だった。
 これまで空の暗いところに行く時には、必ず望遠鏡を持って行った。鏡筒や架台、そして接眼鏡類は時間を掛けて吟味し、その日のために準備してきたものなのだから、それは当然のことだった。
 ところが最近、何か違うものが心に芽生えてきたように感じている。
 それは、先の星見の帰り際に、ぐるりと星空を見渡した時のことだ。星の色や星座の配置を確かめることに、これまでにない新鮮さを感じたのである。
 そうだ、その続きをやろうと思った。視力が今一つなので、双眼鏡類だけ持って出かけようと決める。他に星図に加え、最近話題の「かんむり座T」と、M11の近くで探しやすいと同好会O氏推薦の「たて座R」の変光星星図を、バックに入れて車に乗り込む。






 到着したのは、山岳道路にある駐車場だ。車に積みっぱなしのテーブルと椅子を出して、その上に星図と双眼鏡類を準備する。持参した双眼鏡は、ニコン7×35、同7×50、そして同TC-E2を用いた星座ビノである。星図は、ラミネートされた野外用Sky atlas 2000である。




 到着した時には山頂方向に雲があったが、次第に晴れ上がっていった。
 薄明が訪れる頃、東の方向に夜景が見え出す。まず星座ビノで覗く。小型軽量で低倍率なので手持ちでも揺れが少なく、無数の明かりが綺麗に見えた。シンチレーションの影響で点滅しているのも判り、とても臨場感あふれる見え方であった。次に双眼鏡で見たのだが、手持ちのために安定した保持が出来なかったのが原因だと思うのだが、明かりが糸を引くように見えていた。このような点光源を見るには、三脚に固定することなどが必要なのであろう。
 今回は、「てんびん座β星」が緑色に見えるかどうかも確かめてみた。薄明の中ほどから終了後まで、数度に渡って肉眼で見たり双眼鏡で覗いたりしたのだが、「ほんの少し緑色を感じる。」というのが、その時の感想である。

 「かんむり座」を探すと、ほぼ天頂に独特の形を見つける。その形状から、どうやら「T星」は増光していないようだ。次に、その下方の「たて座」を、星図とスマホに入っているSky safariを使用して探すことにした。正確な形を知らない星座だったので、周辺の星々から位置を割り出し、何回か星図と夜空を行ったり来たりして「R星」を同定した。この時、最初に星座ビノを、だいたい位置が判った段階で双眼鏡を使うのが、効率的だと思った。

 変光星を探した後は、ゆっくり星空を散策した。西空に「しし座」が沈むころ、その少し南側には「からす座」が見える。視線を上げるとスピカとアークトゥールスが輝き、そこから各々の星座の配列を追う。南の空には「さそり座」が横たわり、尻尾にある二つの青い星も見事だ。その東側にM7だろうか、美しい星の集まりが双眼鏡の視界に入ってきた。この日は天の川にある星雲星団も綺麗に見えていたのだが、椅子に座ってじっくり見たのも良かったのであろう。
 望遠鏡なしで、あちらこちらと星を見るのも良いものだと感じた一夜であった。















五藤1インチを覗く

2024-05-23 | 天体望遠鏡
 五藤光学の1インチ望遠鏡は、だいぶ前に入手していたのだが、ずっとしまい込んでいた望遠鏡だ。そこで先日、思い立ってロンキーテストを行ってみる。すると、部屋を真っ暗にできない日中に行ったからか、縞模様の像は確認できなかった。そこには口径2.5cmF32というスペックも影響しているのかもしれないとも思ったが、何せ昭和の初めの望遠鏡であるから、対物レンズに難があるのではとの不安も心をよぎる。そこで、まずはじっくり地上の風景を覗いてみることにする。
 風景を見るといっても、住宅地で望遠鏡を水平に向けるということは、なんとも怪しい所作である。そこで、山岳道路にある駐車場から、遠くの風景を覗いてみようと思った。
 そこは1か月ほど前に冬季閉鎖が解除された所で、これまでもしばしば訪れている。向かう道程も、いくつかあるのだが、お気に入りのルートを選ぶ。そこでは、ひなびた街並みを過ぎると左右に松並木が現れる。相当な大木もあることから、おそらく容易に拡幅できないのであろう。それが幸いしてか、昔のたたずまいが残っているのが嬉しい。景色を楽しみながら西に向かうと、正面に幾重にも重なった山並みが見えてくる。そしてそれは、日本画のように遠くほど青く霞んでいた。やがてプリン山と地元の子供たちが呼んでいると聞く台形の山が現れる。UFOブームの際には、山頂に基地があるのではないかと噂されたのも懐かしい。その麓を南に下ると、小さな温泉街を経て山岳道路に至る。
 目的地に到着すると、雲一つない青空が広がっていたが、遠景は春霞の影響だろうか、若干煙っているように見えた。
 1インチ望遠鏡の組立は、簡単だ。火箸のような三脚をつないで架台にねじ込み、鏡筒の下についている円筒状の金具を、架台上部に差込むだけだ。架台と三脚は鉄製で、加えて鏡筒も肉厚パイプが用いられているのだろう、それぞれが結構な重量である。




 五藤1インチ望遠鏡である。




 対物部は、シングルスレンズである。



 接眼レンズは、ラムスデン20mmと言われている。



 スリーブは、ドイツサイズである。スリーブに切り込みなどは無いのに、スムーズに着脱できる。職人技恐るべしである。



 P社ケルナー25mmを、装着したところ。



 三脚取り付け部である。



 三脚の接合部である。太い直棒と細い直棒をねじ込んで接合する。
 
 組み立てた後に動かしてみると、重量があって各部がしっかりしているからか、ガタなどは感じなかった。遠景に向けて接眼鏡を覗くと無事に見えたので、安心した。見え味は、テレパック6cmで風景を見た像を、暗くしたような像だと感じた。
 五藤1インチそのものについては、GOTOのドームナビというHPにある「星夜の逸品」に詳しい紹介があるので、そちらを参照願いたい。



春の星空を仰ぐ

2024-03-11 | 日記
 新月の頃、「メシエ天体を見る会」が催されれた。場所は、北西に都会の明かりの影響はあるが比較的空は暗く、自宅から1時間くらいで行ける所である。22時開始だったが、夕空に彗星が見えるというので早めに出発する。19時過ぎに到着すると、広くはない駐車場はもう半分くらい埋まっている。どうやら皆さん、彗星を見に早く来ているようだ。

 車から降りると、脇の草地でMさんが双眼鏡を西の空に向けているのが判った。挨拶もそこそこに、自分も年代物の7倍50のトロピカルを取り出す。この双眼鏡は40年以上も前に入手し、皮のケースはボロボロになりレンズのコーティングも最新の物とは比較にならないものではあるが、各部はしっかりとしているので今も愛用している。覗く方向は、スマホ上にある星空ソフトの助けを借りる。ソフトを立ち上げ、下にあるコンパスというボタンを押すと、画面の後ろ方向の星図が表れる。彗星はM31の下方にあることを確認し、スマホで導かれる方向に双眼鏡を向ける。2~3分間視野を振ってみたが、尾を持つ星は見当たらない。スマホ画面をよく見ると近くに2等星位の恒星があるのが判ったので、もう一度双眼鏡で周辺を覗く。すると彗星と思しき青白く滲んだ星を見つけることが出来た。




 次は望遠鏡の準備なのだが、駐車場は狭いので隣の広場まで運んで組み立てる必要があった。まず三脚をと持って行ってみると、皆さんは既に準備万端整っているようで、何と25cm反赤を持ってきている人もいた。今日持参したのは、メーカーで整備してもらったばかりの10cmアポである。接眼鏡は、結果的にPo24一本で観望を行った。自動導入の赤道儀は、古いスマホのせいでWiFiが繋がりにくかったのだが、一旦接続されると次々にM天体を導入してくれた。接眼鏡を覗くと、切れ味が鋭くコントラストの良い視野が広がり、淡い天体も良く判った。やはり自分は屈折の像が好みで、これだったらいつまでも覗いていられると思うものだった。
 皆で並んで記念写真を撮った後は、周囲の人達の望遠鏡を覗かせてもらったり、撮影した画像を見せてもらったりして歓談した。その後、少しの時間観望していたのだが、当夜は風が強く体の芯から冷えてきたので、残念だが一足早く撤収することにした。望遠鏡を車に積み込み帰宅しようとする時に、いくつかのお菓子を貰う。

 車の脇で、頬張りながら星空を見上げる。透明な空にシリウスが沈みかけている時にその右手を見ると、ひときわ高く”ふたご座”の金星銀星と”ぎょしゃ座”の五角形が、まだまだ冬だと言わんばかりに輝いている。北東を振り返ると、極望のセッティングに利用した”北斗七星”が高く登り、その柄の先を延ばしていくと、アークトゥルスとスピカが輝いているのは、星好きにはお馴染みの星の配列である。その曲線の先に、”からす座”の四角形もはっきり判るのは、空の暗さの恩恵であろう。
 不思議だったのは、”ふたご座”の金星の色を感じるのに、アークトゥルスが思ったほど麦色に見えなかったことだ。その時に、やはり春の星は朧夜に見るに限るのかもしれないと思った。





 持参した鏡筒である。整備前の対物レンズでは黒色の箔が使用されていたが、整備後は現行の120対物レンズと同様の銀箔が用いられている。保持力が上がり、かつ光路に影響を与えないように配置されているとのことであった。










40cmカセと15cmアポで見る

2024-02-19 | 天体望遠鏡


 念願だった40cmカセグレインと15cmアポ屈折を使える日が来た。西方の山々を見ながら、天文台へ向かう。一番奥に見える高山の中腹には、普段は横に細い筋が見えるのだが、今日は夕闇に霞んでいる。




 受付を済ますと、観察室に案内される。係の人はスライディングルーフを開け、次にカセグレイン鏡筒の接眼部の脇にあるケーブルを外す。聞くと、冷却ファン用のケーブルで、使用する予定のある日は前もって動かしておくとのことだった。

 
 
 40cmカセには、専用のバヨネット式の天頂ミラーが用意されているが、15cmアポは撮影用という位置付けなのか、用具箱の中には見当たらない。自前の接眼鏡と天頂ミラーは、いつも持参しているので、それを使う。




 初めに月を導入する。TOA150の切れ味はさすがだ。ちょうど半月の見頃だったこともあり、クレーターを取り囲む山々の影が中央平原に深く差し込んでいる様子や、蒸気の海のあたりだろうか、崩れかかった地形が周囲と異なった色調で見えているのが見事だった。

 40cmカセで恒星にピントを合わせる際に、ジャスピンの少し手前に、回転するドーナッツ状の光が見えた時は、独特なものだと思った。なかなか筒内気流が落ち着かないということなのだろう、これは終いまで続いていた。
 月と木星などは、15cm屈折には敵わないようであった。それでも、50mm接眼鏡を用い96倍視野0.55度で見る星団は見事だった。特にM37は細かな星が視野一杯に広がり壮観である。中央部にあるオレンジ色の星もはっきり見え、さすが光量の豊富な望遠鏡は違うと思った。大都会の郊外なので、それほど空が暗いところではないのだが、集光力を活かして、冬の星団を次々と自動導入して覗いていくのも楽しいものであった。

 15cmでは、シリウスの伴星にチャレンジした。木星の見え方が、最良とは言えない状況であったので、やはり明確に認めるところまでは行かなかった。それでも同時に行っていた、トラベジウムEやリゲルの伴星の確認については、はっきり認めることが出来きたのは良かった。この時に、自分の古いHi-Or4より新しいHR-3.4のほうが、明らかにクリアに見えていたのも印象に残った。トラベジウムEは、空の暗いところで35cmシュミカセでトライしたが見えなかったことがあった。これは集光力もさることながら、光学系の切れ味も大事ということなのだろう。この星の見え方については、観測室に居た他の人にも覗いて確認してもらっているので間違いない。

 今回、夢のような大口径を覗いたわけなのだが、小口径に興味を失ってしまったかというと全くそのような事はなく、利休ではないが「もとのその一」である自分の望遠鏡を、暗い空の下で早く覗きたいと思っている。