ぽぉぽぉたんのお部屋

季節の移ろい、道ばたの草花、美味しい食べ物、映画や友人のこと、想いがいっぱいの毎日をお話します

「偽りなき者」

2013-05-07 | 映画のお話
 カンヌ国際映画祭主演男優賞受賞

何だか気が晴れない日々が続いて、
ぽっと時間ができたのを幸いに
映画を観て気分転換でもしよう!
そう思ってこの作品を選んだのだったが・・・

デンマークのことわざに
「子供と酔っぱらいは嘘をつかない」というのがあるそうだ。

酔っぱらいはつい本音を出してしまうこともあるが
子どもははたしてどうだろうかと
私は疑ってかかるたちだが
自分の子どもなら信じてやりたいと思う。

小学校の閉鎖で職を失い、
離婚した妻の元に愛する息子がいるルーカスは
ようやく幼稚園の教師の職を得て、
穏やかに暮らし始めていた。

親友テロの家族や町の猟仲間の男たちとの楽しい集い

北欧の暗い森

裸で沼に飛び込むのは
この田舎町の男たちの祭りだろうか

酒を酌み交わして、
酔い騒ぎながら家路を帰る風景も
のどかだがどこか寂しい


それが、ある日突然、
まだあどけない親友の娘の作り話で
変質者にされてしまったルーカス。
 
真実はひとつしかないはずなのに
無実の証明ができない。
仕事も親友も失い、孤立してしまう。

町の住人たちの迫害はすさまじい。
これでもかと憎しみや敵意をルーカスや息子にまで
むけてくる。
スーパーでは食品も売ってもらえず
殴られ蹴られ、石をぶつけられる


観ているとあちらこちらですすり泣きがした。
ひとつおいた隣の女性は
ひとこと何か口走ったかと思うと
ずうっと泣いていた。

私はふと子どもの頃、
漫画で見た「村八分」を思い出した。

人間ってなんて惨い、酷いものだ。

逮捕され、裁判で無罪となっても
差別や偏見はおさまらない。
何もしていないルーカスの尊厳を捻じ曲げ
人としての良心などもうないくらいに・・・

「魔女狩り」のように
親しかった町の人々の狂気は燃え上ってゆく
最初は子どもを守るためだった行為が
どんどんエスカレートしてゆく様が耐えがたい

人としての誇り、信念、絶対に譲れないものがあって
ルーカスはそれでも町をはなれない。

愛犬を殺されても
自分の家に住み、その町で買い物をしようとする。

いつかみんながわかってくれるはずとでも信じているのだろうか・・・


一年後の人々の様子は和解したように見えた。
息子の狩りデビューの日の
ルーカスを狙った銃弾にびくりとするまでは

この映画ではびくりとすることが何回かあった。
私は泣かなかったかわりに、
座席から二度ほど飛び上がりそうになった。

ハッピイエンドでなくても
それらしき雰囲気で終わらせてほしかったのだが

人々の悪意と憎悪はそう簡単には消えはしない。

原題は「JAGTEN」
(狩る)という意味だそうだ。

狩りのシーンが最初にもあったが
中ほどで殺された愛犬も
ルーカスの代わりに狩られたのだろう。


昔観たデンマーク映画
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」も とにかく暗かった。
あれはリズミカルだったから少しは救われたけれど
でも不条理ないけにえだった。

ルーカスはどうなるのだろうか









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