大倉草紙

旅の記録 食の記録 日々の記録

【東京】 浮世絵の雪景色 (浮世絵太田記念美術館)

2009年12月17日 21時00分00秒 | 美術館・博物館・記念館・資料館
12月10日(木)
当日の行程:(JR・目黒駅) → 【日本磁器ヨーロッパ輸出350周年記念 パリに咲いた古伊万里の華(東京都庭園美術館)】 → (JR・目黒駅~恵比寿駅) → 【木村伊兵衛とアンリ・カルティエ=ブレッソン ― 東洋と西洋のまなざし(東京都写真美術館)】【開館記念特別展Ⅱ 没後10年記念展東山魁夷と昭和の日本画展(山種美術館)】 → (JR・恵比寿駅~渋谷駅) → 【中央大学創立125周年記念特別展 平木コレクションのすべて 浮世絵百華(たばこと塩の博物館)】 → (JR・渋谷駅~原宿駅) → 【浮世絵の雪景色(浮世絵太田記念美術館)】 → (東京メトロ・明治神宮前駅~表参道駅) → 【新創記念特別展 第2部 初代根津嘉一郎の人と茶と道具 根津青山の茶の湯(根津美術館)】【医学と芸術展 生命(いのち)と愛の未来を探る ― ダ・ヴィンチ、応挙、デミアン・ハースト(森美術館)】【清方ノスタルジア 名品でたどる 鏑木清方の美の世界(サントリー美術館)】


展覧会の話、だけど、雪の話から。

関東平野に降る雪は、たかが知れている。
珍しいから、心惹かれる。なんだってそうだ。
だから、子どもの頃から、雪が降ると心がわくわくした。
温暖なところで降る雪は、水分をたっぷり含んでいて、綿みたいにふかふかだ。
だからなのかどうかは知らないが、降る雪は何重にもカーテンがかかったように見えた。
そんな雪を、教室の窓からずっと見詰めていたのを憶えている。
それから少し経って、雪のたくさん降る国で過ごしたこともあった。
そこで降る雪はサラサラだったから、私の知っていた雪とは全く違った。
足跡がつかないのだ。

雪は、足跡がつくから楽しくて、
足跡がつくから、さみしい、と思う。

そんなことを考えながら、太田記念美術館に向かった。
……ゴメンナサイ、正確には、お腹がすいたので、渋谷のマクドナルドでチキンフィレサンドセットを食べながら、そんなことを思った、のだ。

最初に観たのは、川又常正『遊女見送り之図』。
画題通り、遊女が男を見送っている。
遠く、小さくなった男を、女は見詰めている。
解説があった。
他の女のもとに通う夫の安否を気遣いながら見送る妻の姿だという説もあるという。
んー、度量が大きいことですなあ。
足跡が雪で埋まっても、待っているのだろう。
「足跡がつくから、さみしい」のだ。
浮世絵の彼女をランチにでも誘おうか。

歌川国貞(三代歌川豊国)の『今様三十二相 さむ相』は、こま絵の寒そうな男性に目をやりながら火鉢にあたる女性の姿が描かれている。
まるでテレビを見ているよう。


歌川広重『名所江戸百景 深川洲崎十万坪』はおなじみの一点。
遠くに見えるのは筑波山。
鷹の視線の先には、桶があるっていうのがおもしろい。

歌川芳虎『忠臣雪夜志』と歌川広重『忠臣蔵 夜討』を観ながら、ああ、もうそんな季節なんだな、と思う(※コレを書いたのは12月14日より前)。
どちらも犬がいるのだけれど、綱吉の時代だったから?

歌川国貞・歌川国久『江戸名所百人美女 猿若町』や歌川国貞(三代歌川豊国)『花鳥風月ノ内 鳥』は、着物にうっとり。
空刷りが美しい。

葛飾北斎『勝景雪月花 摂津能瀬の雪』では、能勢妙見山を描いている。
行ったことのある場所だと、興味の持ち方が違ってくる。

能勢妙見山の山門には、こんなふうに、最高気温と最低気温をグラフにして貼ってあった。
寒いからこそ、このようなグラフがあるのだろうなあ。

最後に、チラシにもなっている歌川広重の『木曽路之山川』。
なまじ凍っちゃっているよりも冷めたそうな深い青色の水に浮かぶ雪が、これまた寒そう。
そんな中、橋を渡る人が小さく、ちいさく描かれている。