ねるまえとねおき

ねるまえみたいにいろいろ考える自分と、ねおきみたいになんもかんがえない自分の思ったことを、思いついたときにかきます。

課題レポート

2011-02-03 11:50:56 | 環境
前の記事で紹介した授業の課題レポートを書いたのでついでに載せます。
A4三枚ちょっと分なのでちょっと長くて申し訳ないですが、、、





環境と人間 課題レポート

テーマ:低炭素社会の実現に向けて

1.序論
低炭素社会は人類が目指すべき一つの未来である。現在、地球規模での人口増加、生活水準の上昇によるエネルギー需要の増加を賄っているのは、非再生可能資源、主に化石燃料である。しかし、化石燃料の消費は二酸化炭素の排出を伴い、地球温暖化を促進するとされている。また、非再生可能資源は将来枯渇する恐れもある。従って、人類はエネルギー生産を非再生可能資源から再生可能資源へシフトさせていく必要がある。それにも関わらず、日本を含め、世界各国で低炭素社会の実現に向けた動きが加速しているとは言い難い。
低炭素社会実現への障壁となっているものは何か。私は、未だに「経済と環境」という視点に関して十分な議論が行われていないことが一つの原因であると考える。本講義においても、環境税の導入やエネルギー関連政策において、経済産業省、環境省、財界、研究者などで思想や主張が大きく異なる例が多く見られた。一方で、環境には雇用や新規産業の創出など経済と密接に関わる部分も存在する。経済と環境が共存できる領域および相容れない領域について考察することで、実現すべき低炭素社会への道筋が見えてくるのではないか。本レポートでは経済と環境が今後どのような関係性を保っていくべきか、またこれをもとに、低炭素社会をどのように実現するかについて述べる。

2.経済と環境
経済の発展にエネルギーの消費は不可欠である。一人あたりのGDPとエネルギー消費には正の相関関係があり*1、よりエネルギーを消費する国が経済的豊かさを獲得している。このように、経済は環境と密接に関連している。まず、経済と環境が共存できる領域について述べる。先述のように、環境対策への投資は新規雇用や新規産業を生み出す可能性がある。アメリカ合衆国のオバマ大統領が掲げたグリーン・ニューディール政策が記憶に新しい。また、企業にとっても、環境対策は社会的責任を果たし企業イメージの向上につながる。省エネ技術の導入によるコスト削減も企業利益に直結する。一例として、トヨタ自動車ではエコカーの開発だけでなく、リサイクルしやすい車の設計、再生可能エネルギーを利用する工場の建設、植林事業など様々な環境への取り組みを行っている*2。このように、経済的活力の好材料としての環境は経済と共存できる。
一方、経済と環境が相容れない点も存在する。環境が経済に悪影響を及ぼすと予想される場合である。エネルギー関連企業にとって、エネルギーは「売り物」であり、省エネルギーは売り物を減らすことに他ならない。また、環境税の導入も経済界からの反発は強い。日本経団連は「環境税は景気回復に水をさし、産業活動の足枷となる」との意見書を掲載している*3。さらに、企業活動の環境対策には、本業に影響を与えないという大原則がある。どれだけ環境に良いとしても、自動車産業に関わる企業が自動車の購入を止めて公共交通機関を利用するよう促すことはない。極端な例ではあるが、仮に100年や1000年交換する必要のない電球が発売されると、次に電球を買い替えるのは100年後、1000年後となる。これでは企業は利益を得ることはできない。経済と環境が相容れない点も多く存在するのが事実である。

3.低炭素社会の実現に向けて
前項で述べたように、経済と環境には共通点と相違点が存在する。これらを踏まえたうえで、低炭素社会をどのように実現していくかについて述べる。
低炭素社会の実現はCO2排出量の削減につながると共に、エネルギー供給の内訳を大きく変えることとなる。現在、日本に供給される一次エネルギーの80%以上は利用に際してCO2の発生を伴う非再生可能資源、すなわち、石油、石炭、天然ガスである*4。低炭素社会を実現するためには、これらのエネルギーの利用率を減少させ、原子力および再生可能エネルギーの利用率を増加させていく必要がある。原子力の利用は安全管理、施設の老朽化、ウランの枯渇、使用済み核燃料の再処理など様々な問題を含むが、本レポートでは再生可能エネルギーの普及に焦点を当て論ずる。
再生可能エネルギーは太陽光発電、風力発電、バイオマスエネルギーなど、一般的には半永久的に利用可能なエネルギーを指す。これらの普及は低炭素社会の実現に必要不可欠である。しかし、現在の日本において、総エネルギー供給に占める再生可能エネルギーの割合は5%程度である*4。普及の障壁として、a) 再生可能エネルギーの利用に伴う国民負担の増加、b) 規制導入に対しての経済界からの反発、c) 電力の安定供給に対する技術的な課題などが挙げられる。これらの課題をどう解決すべきかについての考察を以下に述べる。

a) 再生可能エネルギーの利用に伴う国民負担の増加
2011年4月から、東京電力など電力10社は太陽光発電促進付加金を適用する。これは太陽電池による発電の余剰を電力会社が買い取る際に、その費用を各家庭に負担させる仕組みであり、事実上の国民負担である。このような制度は、再生可能エネルギーの導入に対する経済的なインセンティブを生む。しかし、太陽光発電設備をすべての家庭に設置できる訳ではなく、不平等な負担であるとも言える。従って、再生可能エネルギーの利用には、国民の理解および同意が必要である。再生可能エネルギーの普及に経済的負担が必要な例であるため、一見経済と環境が相容れない領域に思えるが、一方でこれをチャンスと捉える視点も必要ではないかと考える。その一つの可能性がエネルギーの地産地消である。地産地消とは、農畜産物の生産と消費を同じ地域で行う考え方である。農畜産物を生産地から消費地へ輸送すると、輸送コストがかかり鮮度が低下する。そこで、地方で生産した農畜産物はできるだけ地方で消費しようという発想が地産地消である。再生可能エネルギーも、農畜産物との共通点が多くある。まず、再生可能エネルギーではバイオエネルギー、風力、水力、地熱など、エネルギー生産地の多くが地方に存在する。また、エネルギーの大消費地は都市部である。そこで、地方は必要なエネルギーを自ら生産し、余剰分を都市に売却することで利益を得る。地方はそれぞれの地域に適した発電方法を導入することでより多くの利益を得ることができる。このような仕組みにより、再生可能エネルギーを効率的に普及させることができるのではないかと考える。技術面、コスト、制度設計などで解決すべき課題は多くあるかもしれないが、経済と環境を結び付けるという点で有効な発想ではないかと考える。

b) 規制導入に対しての経済界からの反発
前述のように、環境問題は必ずしも経済的発想で解決できる訳ではない。経済の重要性も理解できる。しかし、低炭素社会の実現に必要な政策、特に経済と環境が相容れない領域に関する政策を、政府が責任を持ち、経済とは分離して実行していく必要があるのではないか。また、環境規制により日本の省エネ技術が進歩してきた事実もある。世界にとってこれらの技術は魅力的であり、将来は環境規制を克服することによって誕生した新技術を世界に向けて売り出すことも可能ではないかと考える。

c) 電力の安定供給に対する技術的な課題
講義の中で以下のことを学んだ。「電力会社は全供給エネルギーに対する再生可能エネルギーの割合を高めることに難色を示す。電力会社の言い分として、再生可能エネルギーは時間、季節による発電量の変動が大きく、電力の安定供給に適していない。」電力需要が供給を上回ると停電が生じてしまうことから、どうしても余剰な電力を発電する必要がある。また、火力発電、原子力発電は発電量を変動させることが難しい。このため夜間には電力需要が低下するにも関わらず、一定の発電量を維持しているのが現状である。これらの問題の解決策として、優良な蓄電池の開発が挙げられる。十分な電力の蓄電および放電を行うことができる蓄電池が存在すると、発電量の差が大きい再生可能エネルギーも効率よく利用できる。すなわち、発電量の多い時には充電を行い、発電量の少ない時には放電を行うことで、電力をより安定的に供給できる。また蓄電池の開発により、昼夜間の需給ギャップの解消も期待できる。これに関しても技術的な問題が多く存在すると予想されるが、優良な蓄電池の開発は低炭素社会実現への非常にパワフルなツールになると期待される。

4.結論
将来も経済的な豊かさとエネルギー消費が相関し続けるとすると仮定し、世界の人々が一定以上の豊かな生活を送ることができる持続的社会を目指すとすると、我々が達成すべき目標は明確である。それは、世界で必要とされる消費エネルギーを、再生可能資源から得たエネルギーにより供給することである。本レポートでは経済と環境の関連性について考察することで、低炭素社会実現への障壁に対するいくつかの解決策を提案した。これらの障壁を乗り越えていくことで、低炭素社会が「本当に」実現する未来を望む。




参考文献
*1 新・?を!にするエネルギー講座 財団法人エネルギー総合工学研究所 GDPとエネルギー消費量の関係
(http://www.iae.or.jp/energyinfo/energydata/data1023.html)
*2トヨタ自動車企業HP; 環境への取り組み
(http://www.toyota.co.jp/jp/environment/)
*3日本経団連 意見書「環境税の導入に反対する」2003年11月18日
(http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2003/112.html)
*4資源エネルギー庁 日本のエネルギー事情 私たちの暮らしと社会を支えるエネルギー
(http://www.enecho.meti.go.jp/topics/energy-in-japan/energy2009html/japan/index.htm)

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