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支配・筑後市リサイクル店殺人事件:/中 妻と出会い一変 転職、事業失敗、破産…転落の男

2014年06月18日 | 事故・事件・災害

毎日新聞 2014年06月18日 西部朝刊

 ◇金奪い続ける裏の顔

 「本当に子供思いのお父さん。周りに行方不明者が何人もいるなんて信じられない」。殺人容疑で逮捕された福岡県筑後市のリサイクル店経営、中尾伸也(47)と妻知佐(45)両容疑者の長女が数年前まで通っていた小学校のPTA関係者は、一連の事件に驚きを隠さない。

 中尾容疑者は毎日、車で長女の送り迎えをし、運動会などの行事にも参加。声をかけると敬語であいさつを返す「腰の低い人物」だったという。だが、県警によると、既にその頃には、店の従業員だった日高崇(たかし)さん(当時22歳)を暴行し、殺害していたとされる。

 表向きは子煩悩な父親。店では従業員らを暴力で支配する二面性。関係者の話をたどると、生活の苦境や知佐容疑者との出会いから“裏の顔”を持つようになったとみられる。

 中尾容疑者は筑後市出身。高校は中退したが、1990年ごろには市内の老舗ホテルでフロントや宴会係をしていた。近所の住民には「正社員になりました」と胸を張っていたといい、経営者の男性は「いたって普通の青年という印象」と振り返る。

 だが「一身上の都合」でホテルを数年で退職。95年には県に貸金業の届け出を提出しており、金融業にも手を出した。しかし、その3年後には自己破産。2年後には実家を差し押さえられ、両親や祖母も破産した。

 そのころ、中尾容疑者と偶然出くわした知人は、こう聞いた。「中洲の地下にある賭博場で働いている」。 更にその後「暴力団幹部の娘を嫁にした、ブイブイ言わせている」とも聞いた。それが知佐容疑者のことだったが、知人は「性格を知っていたのでハッタリだと 思った」と話す。

 両容疑者は2001年に八女市で喫茶店を開くが、客は入らず数カ月で閉店。知佐容疑者も同年に自己破産した。2人が次に始めた事業が03年4月に開店したリサイクル店だった。

 「不思議な店だった」。6年ほど前に勤務した元従業員の関係者によると、この従業員は当初、時給900 円で働き始めたが、1週間後には1300円に引き上げられた。だが、店の売り上げは1日数千円から数万円。「我々のお金はどこから来ているのか」と疑問 だった。中尾容疑者がスーツ姿で高級車を乗り回すこともあった。

 しばらくして怪しげな部分が見えてきた。ある日、家具を売りに来た夫婦がいた。両容疑者はその夜、防犯 カメラの映像でその夫婦が万引きする姿を確認すると店を飛び出した。元従業員は「すぐに夫婦を店に連れてきて暴行を加え、盗んだ商品の代金以上の金額を弁 償させたと聞いた」。

 両容疑者は朝、店に顔を出すとどこかに出かけ、夜遅く帰ってきた。それから何かに理由をつけては従業員を怒鳴ったり、殴ったりしたという。元従業員の親族によると、知佐容疑者とみられる「社長」と呼ばれる女が「従業員を土下座させ、何度も殴っていた」。

 死亡した日高さんや他の元従業員の親族らは、両容疑者から金銭を要求されていたと証言する。店は両容疑者が君臨し、金を吸い上げる場と化していたとみられる。



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