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三十汁+α

いよいよ三十路のアタクシを、節度を保ちつつ、垂れ流していこうかな。
とか言ってるうちに、もう@年。

鉄の骨 <池井戸 潤>

2012-03-06 09:53:44 | 

 下町ロケットで直木賞取られた、池井戸潤作品です。

 初読みです。

 この作品は吉川英治文学新人賞取ってんですね。すげ

 

 いやぁ~~~、面白かった!

 建築業界の談合をめぐる、骨太社会派エンタテイメント小説ってトコでしょうか。

 社会派って読みにくいんだよね。

 難しいし重いし。(偏見)

 でもでも、談合なんていう重ーいテーマを扱ってるのに、実に読みやすかった。

 ハラハラするしテンポいいし、登場人物達も魅力的。

 読むの止められない!って感じ。

 

 本格社会派小説(そんなジャンルあるのか)好きの人にしたら軽すぎるのかもしれないけど、すごく良かったっす。

 談合が何故なくならないのか、そのそれぞれの理屈も分かりやすかった。

 

 ところでこの本、最初は 『走れ平太』 ってタイトルにしようとしてたとか。

 よくぞ止めた、編集者(笑)

 

 

 以下、ネタバレあり!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三橋さんが哀しかったね。

 三橋さんの語りは平太と話すってのがほとんどだったから、すっかり談合がなくなればイイと思ってるけどしがらみから抜けられない苦しい人ってイメージが着いちゃって。

 お金の為に談合してる人に見えなくて。

 でもあの三橋氏の姿ってのは、まだピュアだった頃仲良くしてた人の息子には、やっぱり一番キレイなトコだけ見せたかったって事なんだろうな。

 ホントは汚い気持ちもあったのかな。

 しぶしぶ腰を上げて調整に乗り出したのに、尾形に裏切られ逮捕までされちゃって、可愛そうに。

 哀れな人だヨ。

 

 そして尾形。

 うーーーーーん、どうなんだい。

 内部告発したのは偉いかもしれんけど、それも談合なくすためじゃなくて、単に自社の利益の為だったワケでしょ。

 しかもあんな形で出し抜いて…

 いやしかし元々談合しなきゃ、一松が落とせてた案件だったわけだし。

 それを「談合しません」って言っちゃうと、その仕組みのままでは干されてしまうから、内部告発でその仕組み自体をぶっ壊して、かつ入札も取るって事か。

 ひょー、まさに生き馬の目を抜くってやつぅ?!

 尾形、切れ者ぉ~。

 しかしいつからそのつもりで?

 最初の競馬場から?

 だとしたらオトナって怖すぎぃ (>_<)

 

 やっぱ正々堂々勝負してないと、いつ裏かかれるか分かんない、そういう危うさがあるって事かしらん。

 ま、実際の権力社会ではああ上手くいかないんだろうけど。

 多分もっとえげつなくて、殺されちゃうよぉ。(妄想過多?)

 

 萌ちゃんの絡みは特に何も…(笑)

 あ、でも園田のお母ちゃんはステキでした。

 平太のお母さんも。

 女性がなかなかステキに描かれてますなぁ。

 

 池井戸作品、他のも読みたいぜ!!

 

 

 

 

 

 

鉄の骨 (講談社文庫)
池井戸 潤
講談社

19歳―一家四人惨殺犯の告白 <永瀬 隼介>

2012-03-04 09:10:44 | 

 小説だけではなく、こういう本にも興味があります。

 犯罪者の心理、というものに。

 

 この本は淡々としていて、起こった事件、語られた言葉が記録されている、という感じ。

 サブタイトルに 『一家四人惨殺犯の告白』 とあるけど、告白らしい告白もしてないような。

 いや、告白と言えば告白なんでしょうか。

 自分の生い立ちや事件当時の様子なんかも語っているものね。

 でもすべてが他人事の様というか。

 もちろん起こした事件への反省や悔恨もなく、かといって悦に入ってるわけでもなく。

 

 そういうところが、筆者をして 『理解不能』 と言わしめた、光彦の闇なんだろうなと思う。

 この本をサラッと読むと、あまり伝わってこないと思ってたけど。

 今こうやって書いてみると、改めて恐ろしくなるような。

 

 あまりに淡々としていたので、引きずられたり嫌な気分にならずに済んだのは幸いでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

19歳―一家四人惨殺犯の告白 (角川文庫)
永瀬 隼介
角川書店

ユリゴコロ <沼田 まほかる>

2012-02-27 15:22:10 | 

 不思議なタイトルでございます。

 タイトルだけでは何のことやら、さっぱり分からんです。

 あたしゃーてっきり…ねぇ…ユリと言えば最近はやりの女の子同士のユリかと思いましたよ。

 っとまぁ、腐女子的発想は置いといて。

 

 いやー、オモロかった。

 細かく考えれば、ちょいちょいツッコミ所はありそうなんですが、読んでる間ほとんど気にならなかった。

 ぐいぐいでしたよ。

 楽しかった。

 小説なんだから、それでイイじゃない!!

 

 

 『9月~』 を読んだ感じから、もっと凄惨でリアルな描写があるかと思っていたのですが。

 なんだかイイ具合にオブラートに包まれてたんじゃないでしょうか。

 

 救いもあると思うし。

 

 かなり楽しませていただきました。

 

 

 あ、ジャケのフォント変わってるなーと思ったら、鈴木成一デザイン室。

 話題作にはもう絶対鈴木成一デザイン室なのかちら。むふ

 

 

 

 

 

 

 以下、ネタバレあり!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まーさーかー!!!

 細谷さんが…

 なんか勝手に太ったチャキチャキの中年のおばちゃんを想像していたので、全くイメージも結びつかず。

 最後の最後のその時まで、全く予想もしてませんでした。

 そう、『ユリゴコロ』 の手記とイメージが合わないんだよ。

 彼女は本当に、1回死んだんだね。

 だから人との付き合い方も、話し方も働く姿勢も何もかも、全然前とは違うんだよね。

 それとアレかなー、亮ちゃんのそばに居るっていうのも、大きかったのかなぁ。

 あの場所だからこそ、安定してたのかもしれないね。

 

 そしてやっぱり昔と変わってない部分もあって、多分塩見(だっけ?)を殺した事に後悔も恐怖も興奮も罪悪感も、何も感じてないと思う。

 まぁそれがないと、亮ちゃんと千絵は一緒になれないし。

 何故バレんのだ?

 という問いは愚問でございましょう。

 

 

 最後、お父ちゃんとどこへ行ったんでしょう。

 荷物もほとんど持たずに、思い出だけを乗せて、二人っきりで車で。

 末期癌なんて多分そんな甘くないけど、すごく苦しんでたら殺してあげるのかもしれませんな。

 あるいは一緒に死ぬのか…

 フェイドアウト的ひっそりとした退場でしたな。

 

 

 

 

 

 

 

 

ユリゴコロ
沼田 まほかる
双葉社

ホテルジューシー <坂木 司>

2012-02-24 15:53:11 | 

 このニャーの表紙がずっと気になっておりました、『ホテルジューシー』 でございます。

 変なタイトル(笑)

 

 タイトルからは全く中身が想像つかなかったんですが、いやいやいやいやステキな話だった。

 舞台は沖縄です。

 話にのめり込みすぎて、車内読書からふと顔を上げた時に外が雪だった事に、違和感を感じてしまいました。むふふ

 

 シーズンの長期バイトで沖縄のホテルジューシーで働く女の子ヒロちゃんの話です。

 このヒロちゃんがねぇ、真面目で正義感が強くて、融通きかないんだ。

 でもイイ子なの。

 

 その真面目さゆえに、オーナー(代理)や清掃担当のおばぁや、ひいてはホテルの客のゆるさが許せないわけです。

 で真正面から彼らと関わるわけですな。

 うーん、若いねぇ。

 

 でもちゃんとちょっとずつ、彼らから色んなものをもらって、成長していく(と書くと陳腐ですが)のです。

 エエ子やねぇ~。

 

 沖縄行きたくなっちゃった。

 でも私はビジターでイイや。

 現実にも、沖縄に憧れてそこで暮らしたくなって、行っちゃう若者達がたくさんいるんでしょう。

 それにまつわる嫌な話や危険な話も。

 それは沖縄に限らず、色んな土地である話なんでしょう。

 『暮らす』 という事は生きていくという事なんだから、どこであれ厳しさを伴うのは当然だということは、肝に銘じておかなくてはいけないかもしれませんな。

 

 でも沖縄行きたい~。

 1ヶ月くらいホテル住まいで、とかが理想的ぃ。(←軟弱者め)

 

 

 一つ心残りと言えば、オーナー(代理)が不眠症になったワケ、知りたかったな。

 

 

 

 

 

 

ホテルジューシー (角川文庫)
坂木 司
角川書店(角川グループパブリッシング)

 


幸せまねき <黒野 伸一>

2012-02-22 09:23:32 | 

 優しい話でした。

 

 中山家の色々が、ママ、パパ、穣(娘)、翔(息子)、タロウ(犬)、ミケ(猫)、啓二(穣の彼)視点を織り交ぜて描かれています。

 翔は学校でイジメられ、ママはテニスのコーチと不倫、穣は啓二との恋に夢中で部活もやめて初Hに向けて悶々中。

 パパは家庭に無関心だし、平凡で平和ながら結構崩壊寸前?な中山家。

 みんなどんどんバラバラな方向に行っちゃいそうなのを引きとめたのは、結局タロウ(とミケ)だったわけね。

 

 犬猫の語り部分があるのに、それはあんまり気にならない。

 というか、あーそんな風に考えてそう、ってニマッとしちゃう感じでした。

 

 それにしても一度でいいから、猫の集会を見てみたい。

 噂ではそういうのあるって聞くけど、実際見た事ないもんなー。

 やっぱ夜中なのかなー。

 でも夜中ににゃーの集団見ちゃったら、ちょっと怖いかも…?

 

 

 

 以下、ネタバレあり!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 いやー、ママのその不倫っぷりはどうかと思ったけど、でもやってくれましたな。

 優れすぎている運動能力、素人じゃないパンチでやっつけちゃうなんて、イケすぎでしょー。

 

 翔も頑張りましたな。

 イジメられっ子が本気で刃向った時、イジメっ子があんな風にビビッってくれるとは限らないんだろうけど。

 そして可愛そうに坂本家ってば、呪われた家になっちゃって。

 居られなくなって引っ越したのは気の毒だし、坂本君はボスとしての威厳も失っちゃったみたいだけど。

 でも引越際、翔が声をかけたあのシーンのお陰で、坂本君にも明るい未来が垣間見えました。

 そういう意味でも、すごく優しい話だったなぁ、と。

 

 やっぱ犬か猫、飼いたいなぁ…(そういう話?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸せまねき (小学館文庫)
黒野 伸一
小学館

よろずのことに気をつけよ<川瀬 七緒>

2012-02-19 10:55:38 | 

 第57回江戸川乱歩賞受賞作品だそうで。

 またまたハードカバーです。

 人様からお借りしました。むふ

 

 帯には 『被害者は呪い殺されたのか!』 『謎が謎を呼ぶ、呪術ミステリーの快作』 と。

 しかも江戸川乱歩賞(今まで気にしたことなかったけど)。

 おぉ、これはそそりますなぁ。

 暗くてドロリとしてて怨念が渦巻いてそうですよぉ。むふふ

 

 

 

 

 と思ってたんですが。

 

 うーん、全体的に悪くはないし途中怖かったしどんどん読めたんですが。

 どうも所々ひっかかるっていうか。

 

 まず呪術のくだりを警察があっさり受け入れるトコが。

 警察が呪術研究家の言葉をそうもあっさり聞くかねぇ…あぁ、現場からそれらしいものが見つかってたからってコトなのね。

 

 とか。

 

 そもそも見知らぬ女の子が飛び込んできたのを、そうもあっさり受け入れるのかね。

 一応人づきあいがそんなに豊かじゃない人なんでしょ。

 

 とか。

 

 

 なんか色々、チョコチョコひっかかるんですよな。

 

 とまぁ、そういうのがあったけど、オモロかったよ。

 中澤先生のシリーズとか出てほしいし。

 今後が期待できます。(おぉ、おまえは選考委員か)

 

 

 それにしても呪術でドロリだと、高知は避けて通れないのか(笑)

 

 

 

 

よろずのことに気をつけよ
クリエーター情報なし

講談社


世界の終わり、あるいは始まり <歌野 晶午>

2012-02-18 10:28:37 | 

 えぇぇぇぇぇ、そりゃないよ!!!

 というのが感想ですな。

 

 以上。

 

 

 というのもアレなんでね。

 

 

 

 以下、超ネタバレあり!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうかー、そういう作りかー。

 ってコトですよ。

 

 結局最後まで真相分からんままっていう。

 そりゃないですぜ。

 

 小学校6年生が、小学校低学年の連続誘拐殺人事件にどう関わってるのか。

 部屋から被害者の親たちの名刺と、凶器と思しき拳銃、1件目の事件で使われたぽい夜光塗料、等々が見つかってはいるんだけど。

 主犯なのか。

 ホントに彼が4人の小さな子どもを殺したのか。

 気になるじゃん。

 知りたいじゃん。

 

 でも最後まで父ちゃんの想像だけで終わるんだよねぇ。

 

 作りが上手いから 『今度こそ真実か』 と何度も思わされ。

 さすがにディズニーランドのくだりはおかしかったけど。

 

 6年生が犯した(かもしれない)凶悪犯罪っていうテーマにそそられただけに、読後の 『そらないわー』 感は大きかった。

 何度も叫んじゃった(笑)

 

 何も分かってないし解決もしてないので、読後の爽快感はないんですが。

 消化不良感もあるんですが。

 読んでる間は楽しかった。

 特にしょっぱなの想像は緊張感たっぷりで、ぐいぐい読まされます。

 

 こういうのもあるんだなー、って感じでした。

 くそぅ、なんか悔しいぜぃ。 

 

 

 

 

 

世界の終わり、あるいは始まり (角川文庫)
歌野 晶午
角川書店

草原からの使者―沙高樓綺譚 <浅田 次郎>

2012-02-15 11:16:03 | 

 沙高樓綺譚その2、でございます。

 ラグジュアリーで濃密で怪しい世界ですよ。ふふ

 その世界を堪能すべし、なのですよ。

 

 選ばれた語り部が語る、一夜限りの打ち明け話。

 語る人間は嘘や誇張を禁封じ真実のみを語る事、聞く人間はそれを決して外に漏らさぬ事。

 

 主人の語り口調がヨイですよね。

 女装の主人なんですが。

 お決まりの文句が、とてもヨイのですよ。

 あれでまず沙高樓の人間(そして読者も)は、ぐっと心を掴まれるよねぇ。

 そしてめくるめく、お話の世界へ。

 

 部屋も暗いし、これって百物語だよねぇ。

 まぁ語られる話は何も恐ろしいものばかりではなく、不思議な話、温かい話、ファンタジックな話と色々だけど。

 でもその場で聞いてたら、もう眩暈を覚えそうですな。

 うーん、一度呼ばれてみたいぞ、沙高樓。

 

 さて表題の 『草原からの使者』 は、なんとも不思議な話でしたな。

 ものすごい運命の話のはずなんだけど、不思議と爽やかだし。

 ハイセイコーの連勝が止まったのって、ホントにあの通りだったのかな。

 

 個人的には 『終身名誉会長』 はオモロかった。

 すごいねー、あんな大掛かりな仕掛け、ハメられてみたい。

 

 『宰相の器』 は何が何だかよく分からんかった。。。

 結局運命はどうで、どっちがどう抗ってたのやら。

 

 『星條旗よ永遠なれ』 ・・・・・・へぇ、そういう都市伝説(?)があるんだ。

 男の人は知ってるのかな。

 ぶっちゃけて言えば、退役軍人の猥談と下ネタジョークって感じなんだけど、まぁさすが浅田さん。

 品を失いませぬな。

 女性なら眉をひそめそうなテーマなのに、むしろ微笑ましい。

 私だけ?!

 中身がおっさんなのか?!

 いやいやいやいや、微笑ましい話のはず。

 

 

 と、これで全部かな。

 優雅な時間でしたよ。

 

 

 

 

 

 

草原からの使者―沙高樓綺譚 (徳間文庫)
浅田 次郎
徳間書店

水の柩 <道尾 秀介>

2012-02-11 09:29:08 | 

 会社の人が貸してくれました、ハードカバー。

 やはりハードカバーはヨイです。

 ジャケのタイトルはホログラム?みたいな、光る系の素材になっております。

 そしてダムに沈んだ村を表現しているのでしょう。

 あぶくがある青い水の中に村の写真。

 ぐるりを取り囲むのは村のシルエット。

 そして中扉には少女のシルエット。

 んー、そそるそそる!(変態か)

 

 

 さて 『向日葵の咲かない夏』 以来の道尾さんでございます。

 やはり読みやすい。

 勝手に、もっとホラーミステリっぽい、怖い話と思ってたんですが全然怖くなかった。

 

 全体的に暗いトーンですが、救いのある話だったと思います。

 

 

 

 

 以下、超ネタバレあり!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いやぁ~騙された。

 ずーっと、敦子は死んでるものと思って読んでた。

 やられたー。

 あれは見抜けないよねぇ。

 

 タネが分かって振り返ってみると、現在の様子を描いたバスのシーンがまた違ったものに。

 15の冬を迎える事のなかった少女の写真ってのは、たづちゃんの事で。

 逸夫に話しかけてるばあちゃんはもうボケてて、逸夫本人に話しかけているのではなく。

 ふうちゃんの反対側にはちゃんと敦子も居て。

 平和で楽しそうな小旅行。

 でも敦子や逸夫、ボケちゃってるけどばあちゃんは、一体どんな思いを抱いていたんだろう。

 

 敦子死ななくて良かった、本当に。

 逸夫よくぞ間に合った!偉い!!

 そして3体の等身大人形をダムに沈めるという儀式。(あれはもう儀式だよね)

 よくぞ思いついた!

 逸夫君はホンマに優しいコやなぁ~。

 

 でもお父ちゃんには誤解されちゃったね。

 でも逸夫もお父ちゃんの事、誤解してたよね。

 この親子はまぁそのうち自然に、関係が修復されていくんでしょう。

 なんか安心感あるし。

 

 

 

 それにしてもイジメてる方ってのは、なんて鈍感なんだろう。

 可愛くて人気があっても、なんて不幸で貧しくて可愛そうな人たち。

 そんな自分の貧しさを感じたくなくて、暴力のもたらす恍惚感に身をゆだねるんだろうか。

 

 

 

 自分を傷つけるっていう方法ではあったけど、立ち向かう勇気を持った敦子、本当に良かった。

 ずーっと水の中に沈んでるようなトーンだったけど、最後の最後、ちょっとだけ敦子明るくなった気がする。

 お母さんもちゃんと怒ってくれてよかった。

 

 逸夫も敦子も多分おばあちゃんも。

 湖に葬ったもう一人の自分を結局忘れる事はなく、死者に対して抱く思い出の様に、抱えて生きていくんだろうな。

 でもそうやって一度決別し距離を置ける事で、また生きていくって事なのかな。

 

 

 

 ところでものすごーくどうでもイイけど。

 

 多々朗ちゃんがソースをこぼして胸の前が真っ黒になってたシーン。

 すわ事件か!

 ここからミステリ展開か?!

 と思ったワタシはおバカさんです。。。。

 

 

 

水の柩
道尾 秀介
講談社

長生き競争!<黒野 伸一>

2012-02-05 10:43:48 | 

 すげーよ、殺人事件でもないのに、バタバタ人が死んでいくよ。

 何でそんなに死ぬかっつーと、年寄りだからなんですな。

 小学校からの幼馴染で現在76歳の6人(+エリ)で誰が長生きするか、自分たちの命をかけるっつーとんでもない話ですよ。

 とんでもないんだけど、なんか明るいのです。

 自分たちで 『老人版バトロワ』 とか言っちゃったりして。

 ってそれは多分この時点では彼らも、自分たちが死ぬ事ってを実感してなかったからだろうなぁ。

 

 いずれにせよ、ミステリーでもないのに人がバンバン死ぬ、老人度の高い斬新な話って感じでしょうか(笑)

 こんな老人たち(と若者たち)が、どこかに居たってイイじゃない!

 

 

 以下、ネタバレあり!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 老人たちが死んでいく話なんだから、もっと暗くてじめ~っとしててもおかしくないのに、このお話はカラリとしておりますな。

 葛藤やら悲しみやら色々あるにはあるんですが。

 若者たちとの交流がイイのかな、やっぱ。

 みんなそんなちゃんとしてない若者ばっかりだけど、ちゃんと交流できてるっていうか。

 そういうのが楽しい。

 

 さすがにエリちゃんが死んだ時は悲しかったなぁー。

 彼女だけだもんね、若くて死ぬの。

 でも多分こういう悲惨な話、現実にもあるんだ。

 エリはまだ白石さんに看取ってもらえたからイイけどさ。

 AIDSの最期って、あんな壮絶なんすか。

 苦しみで暴れて間接外れるって・・・

 それをはめるって・・・

 

 白石氏が最後じゃなかったんだねぇ。

 やっぱ女性の方が長生きなのねん。

 でも最後まで残っちゃうのはきっと寂しいから、最後じゃなくて良かったんだよ。

 ちゃんと芝桜の国にも行けたみたいだし。

 

 心温まるというのとはちょっと違う、なんと言ってイイかよく分からんけど、イイ話でした。

 

 

 

 

 

長生き競争!

小学館