「 住まば日ノ本 遊ばば十和田 歩きや奥入瀬三里半 桂月 」
に誘われ、去る10・23、奥入瀬を散策する会に参加した。
「石ケ戸」から「子ノ口」までの9.3㎞、 途切れることのない瀬音の中、
大勢の人とすれちがいながら、約3時間半歩いた。
この渓谷の景観は、両岸に続く鬱蒼とした森 ( 渓畔林 ) と、川中や岸辺の
苔むし草木の生えた石 ( 転石上の植物群落 ) に特徴がある。
これは、十和田湖を源とする奥入瀬川の流量が一定に保たれ ( 水力発電用取水、
子ノ口水門での調節等の操作 )、 氾濫がおきにくいためと、箱型の渓谷地形並びに
やませ気候の影響によるものと考えられている。
渓畔林の景観は・・・・・・・
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渓畔林の樹種は、カツラ、トチノキ、サワグルミ、シロヤナギなど水気を好む木々
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車道、遊歩道、川がほぼ同じ面になる所が多い。
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カツラは株立ちに
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かつての土砂崩れ地 “九十九島”付近
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近年土砂崩れがあったところ。パイオニア植物のハンノキ。
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落ち葉を踏みしめて・・・ 色いろな樹種の葉
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かつて遊歩道で枯れ枝の落下による人身事故があった。
転石に生えるシダ類やコケ類や草木は・・・・
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リョウメンシダ、オシダ、ジュウモンジシダ・・・・・・・・
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トクサ
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石にコケ
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丸太にコケ
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石垣にコケ
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転石上の植物群落
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渓流内の転石上の草木
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転石上の植物群落
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渓谷の基盤は・・・・・
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渓谷の全体に分布する八甲田カルデラ由来の溶結凝灰岩とその板状節理
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玉簾の滝(たまだれ) 湖沼堆積物の地層で、古い湖の存在が考えられるという。
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これも板状節理か?と 思わせる高い岩壁。
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子ノ口橋
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子ノ口 この先に水門がある。
近年の地学的な調査報告によると、 湖沼堆積物の存在、 法量や焼山付近等の火成岩
の分析 ( 全岩化学組成、古地磁気測定等 ) による供給源火山の検討、 八甲田ー十和田地域の
重力調査で、奥入瀬渓谷の北西にきわめて大きな低重力異常域があることが報告されている等から、
古いカルデラ・仮称“子ノ口カルデラ”の存在が取沙汰されているという。
“渓畔林”については、村井三郎編 「十和田湖・八甲田山の植物」 (昭和10年青森営林局)
の中で “沢通帯” として記述されており、参考までに以下に引用する。 (一部現代用語に修正)
十和田湖・八甲田山の植物
嘱託 村井三郎編
青森営林局 昭和十年
Ⅲ 植物群落の概況
八甲田山、十和田湖方面の植物を群落的に見て大別するならば、下部から上部に向かって次の四帯が発達していると言うべきである。
1) 沢通帯 2) ブナ帯 3) 亜高山帯 4) 高山帯
ただしこれら四帯に分けたけれども、群落調査が未だ完成しないゆえ、本稿は大略的なものであり、かつ通俗的なものであることをお断 りしなければならない。
1) 沢通帯
八甲田山及び十和田湖付近、ことに国立公園候補地々域内において最低部に発達する森林は湿潤地を好む樹種の群落である。これは特に各渓沢に沿いかなりの高所までも分布しているゆえ、これらを総括的に一帯とみなし、沢通帯 という名称を付する。つまり垂直的分布から見た落葉広葉樹帯中にブナ帯(後述)の下部に現出する一帯である。
主要な樹種としてはカツラ、サワグルミ、トチノキ及びケヤマハンノキを挙げ得るものであるから、トチーカツラーサワグルミ群落( Aesculus_Cercidiphyllum_Pterocarya ASS. ) と称することもある。
この帯の良く発達している場所は荒川流域、蔦川、黄瀬川及び奥入瀬川の各流域と、さらに十和田湖の周囲とがある。ただし、いずれにおいてもこの帯に属する部分は沢に面した場所ばかりであり、かつ上流のものは下流のものに比し次第にその幅が狭くなるのを原則とする。
一般的の植相は高木に
バッコヤナギ、サワグルミ、サワシバ、ケヤマハンノキ、ミズナラ、カツラ、ハウチワカエデ、ベニイタヤ、トチノキ
があり、低木には
オノエヤナギ、シロヤナギ、タニウツギ
を見、さらに草本には
リョウメンシダ、オシダ、サカゲイノデ、ミゾシダ、ジュウモンジシダ、オオイタドリ、ヤグルマソウ、ヤマブキショウマ、オニシモツケ、ミヤマ カタバミ、スミレサイシン、アマニュウ、ミヤマヤブニンジン、オオバノミゾホオズキ、アキタブキ、エンレイソウ、オオウバユリ
等が挙げられる。換言すればこの帯の特徴は、林地には長大な落葉広葉樹が亭々とそびえ、中層林 (従高木) は種類も量も少なく、林下にはシダ類や他の大型な草本 (これを大形多巡草という人もある) が繁茂し、低木は渓畔もしくは路に面した部分にのみ限られて生ずるというような林況を呈するものである。
十和田湖周囲のものは湖水に面する輪状の平地を主とするもので、さらに外輪山から湖水に入る各小沢にもかなりの発達が見られる。ここの特徴はサワグルミが旺盛で最も繁茂著しく、カツラ、ケヤマハンノキ、これに次ぎ、イヌエンジュ、ケヤキの混入する場所も見られる。
奥入瀬川のものは川に沿って帯状に発達した部分であるが、カツラが最も優勢であり、下流にミズナラの多いこと及び林下は岩石が多くてシダ類が量においても、種類においても、豊富なることが特徴である。また河床内の沖積地にケヤマハンノキが群生することは蔦川、黄瀬川とともに著しい点の一つであろう。ただしここは本区域内での最下部を占める所であるから、東北地方の平地要素の植物がかなり多数に混入している。
黄瀬川及び蔦川はいずれも地殻構成上の壮齢期に当たるもので、その大特徴としてV字型の谷を形成している。それゆえ本帯植物群の生育するのは沢沿の極めて狭い範囲で、V字の底部のみに生育するものであり、他のV字の両斜面の大部分は後述のブナ帯に属するものである。樹種ではカツラが少なく、トチノキが優勢である。荒川流域もこれとほとんど同様である。