スペインを代表するブランド、ロエベ。
セラーノ通りにあるロエベの本店で、秋冬もののファッションショーがあるから行かない?という魅力的なお誘いを断れるはずもなかった。
夜の9時からのショー。
夜のお出かけなんて久しぶり。
その日のロエベ本店は閉店後も煌々と明かりがきらめいており、入り口にはイケメンがずらりと並んで招待券のチェックをしていた。
実は私たち、招待券は持っていなかった。
普段ロエベ商品を定価でバシバシお買い上げになる、いわゆる上得意様だけがもらえるプラチナチケットなのだ。
自慢じゃないが、そんなものもらえるはずもない。
ロエベブティックには日本人女性スタッフが常駐している。
友人がその「エリコサン」と一度美容室で顔を合わせ、その機会をググッとつかんで離さず、ショーへの入場を口約束ながら許可してもらった。
その「連れA」として無理やり入ったのだ。
入り口で「エリコ、エリコ」と連呼し、苦笑するイケメンスタッフの前をソソッと通り過ぎたが、結構恥ずかしい。
聞いていた通り、ブティックの中ではシャンパンが次々に注がれ、飲み放題。
若くて可愛い男の子たちがカナッペなどを持って客の間をまわる。
招待客も様々なファッションで、見ていて飽きず、面白い。
どんどんお客が入り、まるで満員電車のようになってきた。
フツーにディスプレイされているバッグや毛皮のコートのすぐ隣で、ブルーチーズがべっとりついた指を振り回してしゃべるセニョーラがいたり、シャンパンをこぼすセニョールがいたりでなんだかハラハラ。
やっぱり私のような小市民の来るところではないのだわ。
しばらくの後、店内の長い通路を利用して並べられた席につくように誘導され、そしてショーが始まった。
男女それぞれ5~6人のモデルさんが次々にロエベの服を着てバッグを持ち、現れて消える。
モデルさんは皆、驚異的に頭が小さく、手足がものすごく細長い。
洋服は、黒を基調にしたものがほとんどで、時々鮮やかなエメラルドグリーンが指し色に入る。
袖にデザインのあるものが多く、今年風だ。
ただ、どれもこれも自分が着たいと思うかといえば、微妙だ。
あの超人的プロポーションがあってこそ、の服ばかりだと思ったのは私だけではなかったようだ。
隣に座った「連れB」さんが、「あれを私が着たら大阪のおばちゃんみたいになるに違いない」だの、「あんなすごい毛皮を着たら鉄砲で撃たれる」だのぶつぶつ耳元でささやくのでショーの間中笑いをこらえるのに必死だった。
男性モデルもまたこれが微妙で、カッコいいんだか悪いんだかよくわからない。
眉間にシワを寄せてバッグ斜め掛けなんかしちゃっていたが、顔がみんなムーディー勝山に見えてしまって、これも笑えた。
いやー、しかしこんな世界が見られて楽しかった。
最後に振舞われたデザートのチョコレートを3つも食べて帰ってきた。