石原延啓 ブログ

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神なき現代の巫女

2009-08-14 12:22:34 | Weblog


先日、電車で通勤途中に大学時代の監督(水球部)に偶然会う。スーツをビッと着こなした元オリンピック選手で超一流商社の部長を前に私はTシャツ短パン、アロハ柄のショルダーバック。口調はパキッと体育会時代に戻したものの何ともしまりがない。思わず「こんな格好ですみません」と謝ってしまった。もっとも監督はといえば大らかなもので「ええんよそんなの。それよりも何読んでるの?」と私の文芸春秋に目を向ける。選挙も近いし少し勉強しとくか~と選挙特集号を実家からくすねてきたものだが、村上春樹の新作が書評欄にあったので読んでいた。以下佐倉統という東大の情報学の教授の書評の一部を抜粋。
「人間は誰しも程度の差こそあれ、直感や情念や衝動といった無意識の領域を抱えている。・・・そこをうまく飼いならすためにさまざまな方法を開発してきた。お茶、祭り、宗教。村上春樹はこの無意識領域との付き合い方が抜群にうまい。・・・そしてぼくたちは、彼の作品を読むことで、みずからの無意識領域を鎮めたり、適度に解放したりしてきた。そうやって、現実社会に適応し、人生を送ってきた。豊かな感受性を備えた者が、その発する言葉によって共同体の澱みを解き放ち、浄化するーーーこれは、古来「宗教」と称されてきた営みに等しい。そう、村上春樹は神なき現代の巫女なのである。・・・」
芸術の果たすべき役割もまた時代によって変わってゆく訳だ。
東大教授みたいな頭のいい人が私と全く同じ考えを持っていたとは嬉しい限りです。(境界考7/10参照)
ただそれだけなんだけれどね。
監督とは神なき現代の巫女の話はせずに一通り世間話をして大井町駅で失礼しました。