ボイスの本に関連して河合隼雄と村上春樹の最初の対談における近代的自我の話やらネットで拾った「中世後期の戦士的領主階級と狩猟術の書」という論文、更には「ケルトの宗教 ドルイディズム」や未読だった「聖地の想像力」、ハイネの「流刑の神々」などなど活字中毒でもないのに読みたい本が山のような昨今。おまけに2月にオーダーしたユングの「赤の書」(重さ3kg?)がやっとこさ届いてドカンと机に積んである始末。
しかし今、日記に書いて記憶しておかねばならないのはサッカー南アフリカW杯日本代表の戦いぶりと日本国内の熱狂についての考察でしょう!
PKを外した駒野を抱きしめる中沢や松井の姿に涙し、父親も観たことがないというクールな遠藤の涙にもらい泣きした後にうむむと考える。
サッカーオタク的に検証したいことは数多いけれども、ここで注目したいのは今回の熱狂を通して見える私たち「日本人」です。そしてこの日本代表チームはいみじくも、沈滞してしまっている現在の日本が目指すべき方向性、可能性について、ヒントを与えてくれているのではないかと勝手に思う訳です。
今回は2回も勝ってしまい決勝Tに進んだことが列島熱狂の一番の要因だけれども、やはり皆が胸を打たれたのは日本代表チームの団結力と燃え尽きるまで戦い抜いた姿勢でしょう。
以前私は中田英寿という選手が大好きだった。彼は湘南ベルマーレの若手選手の頃から誰よりも頑張っていたし、現役最後となった2006年独W杯ブラジル戦でも一番最後まで戦い抜いていた。しかしリスペクとされつつも一人浮いてしまっていた印象だし、最終的に皆が納得する結果が出なかった。
なぜだろう?
思うに彼は欧米人と同じように(良い意味で)個人主義者であり、自分の為に戦い抜くのは当たり前であり周囲にもそれを要求していた。
ここで98年仏ワールドカップの思い出。イタリアーフランス戦だったかな、凄い緊迫した試合で確かPK戦で決着がついたのだけれども、90分終わると足がつる選手が続出して、それでも延長に入る時に彼らは内なる闘志をみなぎらせながらひとりひとりで淡々とピッチへと戻っていった。この光景を観たTVの解説者が感銘を受けながら「こちらの選手は戦うのが当たり前だから円陣を組んだりする必要がないんですよね」と言ったセリフが忘れられない。
中田はこのような姿を理想としていたのではなかろうか。
しかし残念なことに岡田ジャパンの団結力と比較して2006年のチームが内部で崩壊していたという各報道を通しても想像できるけれど、それが受け入れられていたとは言いがたい。
日本人にとってはやはり今回の代表チームのように「円陣」を組んで「皆」で戦う方が力を発揮出来るのだ。
「自分(個人)」の為よりも「チーム(組織)」の為により頑張ることが出来るのだ。
そして人々は無私の心でチームの為に戦う姿に熱狂する。
今回の躍進は多分岡田監督によるチームへの精神的なマネージメントの成功によると思う。
この、チームの「団結」こそ日本人が輝きうる特性のひとつではなかろうか。
観客である私たちもまた自分を殺して「チームの為に」戦い抜いた選手たちに拍手を惜しまない。中田のような突出したヒーローの出現を待ちつつも「彼のお陰で」という図式より「皆で勝ち取った勝利」とか「あのヒーローが献身的に」みたいな方を好む傾向があるだろう。
ここ数年の間「自由」とか「リベラル」とかについて考えることが多い。
特に目から鱗だったのが華道家・故岡田幸三先生との出会いだった。先生は池坊という伝統でがんじがらめの塊みたいな場所で人生の大半を過ごされながら、常にチャレンジングでクリエイティブであり、その魂は本当に自由であられた。
自由とは誰かが用意してくれた体制やら論理ではなく、各々の内側から醸し出される躍動したエネルギーのようなものだとすれば、人間が輝いて見える状況こそ重要だろう。
自由を唱った2006年のジーコジャパンが消化不良に終わり、攻めを捨てて規律を守ることに重点をおいた超守備的な岡田ジャパンに魂の躍動を感じたのは皮肉だが、学ぶ点は多い。
友人のエドガーは、日本人は個人の成功とかに対してではなくて社会的なファンクションが機能することに忠誠を尽くすと言っていたけれど、それは昔は「家」であったり「殿様」や「藩」であったり、一昔前は「会社」であったりした。今の日本人は何に対して自分の人生を捧げるべきか?
個人の幸せを誰もが求めるが、「自由」にそれをやっても良いと言われると意外に難しいものだ。
どうも日本人のイメージする「自由」「リベラル」「個人」などの言葉の意味は西洋人の考えるそれとは似て非なるものであるような気がしてならない。
福澤諭吉は「独立自尊」を唱えたけれども、グローバル化した現在の世界を眺めるにつけ、今改めて何と言う素晴らしい言葉だろうかと驚いてしまう。
試行錯誤しながらも「日本らしさ」を見つけつつあった岡田ジャパン。もう少し観たかったけれど、私たちに何かを残してくれたのは確かだろう。
繰り返しになるけれどサッカーオタク的には突っ込みたいポイントは多々ある。でも良いもの見せてもらって多謝多謝。
冒頭のように読みたい本が目白押しなんだけれども、このにわかサッカーブームで何故だか実家に前代表監督のオシムさんの本が置いてあってついつい手に取ってしまう。
何なに?リスクを負って攻めるべき? う~ん