石原延啓 ブログ

seeking deer man

nobuhiro ishihara blog 

残像の家具

2009-05-21 22:00:46 | Weblog


5/19は武蔵野美術大学まで恩師の森豪男先生の退任記念展を観に行って来た。先生とは留学時代にNYでお目にかかって以来長い間お付き合いさせていただいている。
先生の作品を拝見していると日頃使っている「デザイン」という言葉の定義がわからなくなってくる。作品の背景に広がるオリジナリティー溢れる世界観や、作品そのものの強さとそこから醸し出される空間の緊張感など「アーティスト」と名乗ってもらった方が私はすっきりしてしまう。それでも先生は一貫して新しいオリジナルのデザインを模索され続けてきた。今回の「残像の家具」のシリーズは先生が影響を受けた作家たちへのオマージュのような作品群だったが、改めて先生のアーティストとしての力量を再認識させられる素晴らしい展覧会だった。先生から教えて頂き私も大きな影響を受けたアルゼンチンの作家・ボルヘスにちなんだ本箱があったのも嬉しかった。私が一番好きだったのは「友のテーブル」。先生の創造した本の幽霊とともにひとりきりで本を読み続ける生活も悪くないなと思わせる不思議な作品だった。
その後、研究室で展覧会のビデオを撮った映像作家の大田さんや空間デザイン科の院生たちと話す。「皆アイディアに詰まると先生のところにネタ探しにくるのか~、なんだ俺と同じじゃん」と嬉しくなった。


AUN

2009-05-14 20:11:53 | Weblog


昨年末より友人のオーストリア人アーティストのエドガーから映画を撮っているので撮影現場に遊びにおいでよと誘われていた。更に今回「記念になるからエキストラの科学者役で出てみないかい?」と言われた。映画に出るチャンスなんて滅多にないだろうと深く考えずにOKしてしまい、日曜日いざリハーサルへ。役柄は科学者ABCDの次の「E」くらいかな。台本を見ても当然エキストラの私にセリフはなく、本物の役者さん(なんとなーく顔を見たこともある人がいた)たちの台本読みをボーッと聞いていた。このカット本番は後日荒川線の車内を2時間だけ借りて撮るらしい。稽古場を都電車両に見立てて動きをやってみる。すると監督(エドガー)より「役者さんだけでなく、エキストラの皆ももっと芝居に参加して!」と指示が飛ぶ。「そこの台詞で皆さんはあきれ顔を見合わせて失笑してください!」あれれれれ?もしかしてこれって演技しろってことなのか?そしてカット3、台本には主人公(身長187cm、ブラジル人)が相手役に殴りかかると書いてあるのだが。。。「ハイッ、そこは皆さんで彼を止めて!!」
ぞろぞろと後ろの方を歩いている通行人みたいなのを想像していた私は愕然です。プロの役者さんたちはさすがにさすがでしたが。
エドガーはまだ脚本を書き直しているようですが、撮影は順調に進んでいるようです。エキストラの不肖私が登場するシーンは6月に撮る予定だそうです。

何でもない石ころ

2009-05-07 19:18:17 | Weblog


アートの季節がやってきて、さぞかしブログの更新も進むかと思いきや、何だかおっくーで。その間150号(227 x 162 cm) のキャンバスを3枚張って、大きい作品の制作に取りかかりましたが、この大きさに取りかかるのは去年の夏以来で久しぶり。木枠を組んで綿布を張るのも一日がかり。ジェッソを一回塗るだけで1時間半かかる。日頃の運動不足を痛感してます。
アートフェアや展覧会のオープニングにちょこちょこ顔を出しておりましたが、アートフェア東京で旧知のアーティスト水野君と香港の画廊の天野喜孝さんのガッチャマンの作品の前でばったり会う。
平川さんのトークの時にもちらりと顔を見かけたのだが話せず終いだったので少し立ち話をした。彼はなかなかの論客でガッチャマンの作品を見ながら「アニメを模倣した作品が並ぶのを見て大御所(天野喜孝)がオリジナルを見せてやると腰を上げた。いや、それともシュミレーションアートをシュミレーションしているのか!?」などなど毒のあるユーモアの中に的を得た表現が多くて面白かった。その時の会話が印象的だったので彼のblogを覗いてみると、やはりアートに関する事柄を非常に論理的かつストレートに展開していて面白い。自分のblogのいい加減な書き込みを思い起こして反省してしまった。
彼の作品は自分の内面に蓄積されたドロドロしたものをストレートに出し切る傾向のものが多く、そのストレートさ故に情念的なイメージを受けていたが、ここまで論理的に物事を組み立てて考えられる人が真摯にあのような仕事に取り組んでいることにある意味感動をおぼえた。更に目指すところが熊谷守一が述べているなんでもない「石ころ」だという展開に興味をそそられた。
私も華道家の岡田幸三先生との出会いを通して、その中で先生のご自宅のお庭にあったあまりにも「なんでもなく」すっと立つ松を拝見して以来、自分の目指すべきところが果てしなく遠いところにあることに気づかされた。そこで「なんでもない」ってのは一体「なんなの?」というやり取りを水野君と始めたんだけれど、彼があまりにも鋭い論客なので、彼の言わんとすることをしっかりと理解する、さらには自分の意見を彼との共通言語を作りながら伝えていくという作業に取り組んでみた訳だが、近頃ボーッと生活していたせいか時間がかかってかかって。ごめん水野君。いずれにせよ、言葉で明確にしようとすると逆に逃げていってしまうようなことを言葉で考えるというのもまた勉強になります。作品を通してその領域にたどり着きたいというのが彼と共通するところなんだけれど、「その領域」がハッキリと分からない。だから作品を作っていくしかないってことなんだろうけどね。
写真は岡田先生から頂いた絵はがきの立花図と水野君の石のシリーズより。
水野亮HP>> http://www.drawinghell.com/index.html