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世界はやがてジャパネスクの時代を迎える(非公式)

北方領土がタックスヘイブンになる日

2014-04-02 | グローバル・マクロ
 表向きはお互いに全く無関係のように見えるが、並べて比べてみると相互につながっていることに気付く出来事がある。とりわけグローバル・マクロ、すなわち国際的な資金循環を中心に国内外情勢をウオッチしていると、しばしばそのことに気付く。結局は、マネーがどこからどこへ移動しているのか。これが世界史を動かしているのだ。
 今年4月29日。安倍晋三首相はモスクワを訪問し、ロシアのプーチン大統領と首脳会談をした。それを踏まえ、実に10年ぶりに「共同声明」を発表するところまでこぎつけた。
 しかし問題はその後に生じた。3時間にも及ぶ首脳会談の席上で、プーチン大統領はこれまで中国やノルウェーなど他の隣国たちと、どのように領土問題を解決してきたのかを説明。「面積を等分することで解決してきた」と述べ、暗に我が国との「北方領土」についても同じように解決しようではないかと示唆したことが明らかになったのだ。
 これは全くもって由々しきことである。
 なぜならば北方領土は我が国固有の領土であり、国際法上、ロシアは旧ソ連時代から不法な占有を続けてきているからだ。「面積等分」などという議論をしたいということ自体が、盗っ人たけだけしいと言うべきなのである。
 だが、なぜそこまでしてロシアは、北方領土にこだわるのだろうか。これに対しては漁業権のためであるとか、あるいは安全保障上の理由からといった模範解答が頭に浮かんでくる。
 しかし、本当にそれだけのことなのであろうか。

http://www.web-nile.com/article/article.php?category=03&article=000213&page=1

 

 実は、このことともう一つ別の「事実」とをつなぎ合わせると、全く違う構図が浮かび上がってくるのだ。我が国から遠く離れた地中海の国・キプロスが今年3月になって、いきなりデフォルト(国家債務不履行)騒動を引き起こした。ロシアはキプロスに大量のマネーを預けてきた。そのため「キプロスが破産したならば、ロシアはどうなるのか」と大騒ぎになった。
 この渦中にあった3月21日、ロシアのメドベージェフ首相が奇妙な発言をしたのである。「キプロスの状況に鑑みて、北方領土を含むロシア極東地域にタックスヘイブン(租税回避地)をつくってはどうか」
 あまりに唐突な発言であったが、これでロシアの真意が明らかとなった。
 つまりこういうことだ。――ロシアは我が国に隣接するという地の利を生かして、ジャパン・マネーが滞留する拠点として「北方領土」を用いたいのである。「アベノミクス」以来の株高は日銀による「異次元緩和」のおかげで、2015年春までは少なくとも「日本バブル」とでも言うべき状況を招く。中東戦争勃発などにより「我が国以外に投資先がない」という状況が訪れれば、なおのことである。
 これを見たロシアが有り余るジャパン・マネーの受け皿として手を挙げたのだ。しかも、4月になるといわゆる「オフショア・リークス」と呼ばれる事件が発生。西側諸国にあるタックスヘイブンは情報公開の嵐に巻き込まれ、世界中のマネーは逃げ場所を「共産圏」に求めつつある。だが共産圏は共産圏であり、マネーを預けるには抵抗感を覚えるのだ。
 そうであるならば「共産圏」を卒業し、しかも我が国に隣接したところに預けたい。
――そんな日本人の人情を巧みにくすぐるのがタックスヘイブンとしての北方領土なのだ。 特に我が国の政党は、いずれもオフショアで資金運用をしているので、これに強い関心を持つはずである。北方領土は「日本が4島保有の権利を主張するが、2島だけが返還され、残り2島にはジャパン・マネーが優先して預けられる」という形で、解決が見られることになる。
 このあまりにも魅力的な提案の背後にあるロシアの深謀遠慮を見抜けるか否か。日本外交の知性が問われている。

http://www.web-nile.com/article/article.php?category=03&article=000213&page=2

 

(2013.06.14)