ブログ、巨人軍。

頑張れ、ジャイアンツ!
頑張れ、日本のプロ野球!

高いプロ意識が、井端、鈴木尚の思い切りの良さを生む。

2014-09-11 23:07:23 | 2014年シーズン

「まぐれに決まっている。自分でも本塁打は考えていなかった。」
7回表、起死回生の同点弾を放った井端は、本塁打はまったく狙っていなかったと謙遜するようにそう応えている。

一方、原監督は 「あの場面は一発を狙っていたと思う。」 と断言。ベテランの勝負強さを絶賛した。

この日、CS放送で解説を務めていた掛布雅之氏も予想外の本塁打と驚きながらも、
「狙っていたように見える。6球目に、いちばんアマい球を投げさせた」 と舌を巻いた。


あの場面、井端は何を、どう狙っていたのだろう。

外の球も内にきた球も上手くおっつけ逆方向へ打つのは井端の真骨頂でもあるが、
もうひとつの井端の特徴に、狙い球を絞り、それを思い切って引っ張るという、
いわゆるキメ打ちが出来る勝負勘の良さがある。
クラッチヒッターという言い方があるけれど、まさにそれだろうか。

先日のスワローズ戦でのセンターへのタイムリーヒットや、
カープ戦で見せた一、二塁間に転がしたタイムリー内野安打など、
内角の厳しいボールを強引にでも逆方向へ持っていく打ち方は、井端にとってもうおなじみの姿である。
だがそれと同じくらい、思い切りのいいスイングでボールを引っ叩き、
強引にレフト方向へ引っ張るといった力強いイメージもまた、
同じように井端の特徴として多くの野球ファンのアタマに残っているのではないだろうか。

そんな思い切りのいいスイングが出る雰囲気を、あの場面、観ている側も少なからず感じていた。
ノーアウトでランナーなし。チャンスメイクしたい場面。条件は整っている。
だからこそタイガースバッテリーも徹底した外角攻めだったのではないか。
さらに2ボール2ストライクから投じた5球目のシュートがボールの判定。
岩田はストライクを確信して、投げたボールがキャッチャーのミットに納まって瞬間にマウンドを降りかけた。
これをボールと判定されたことが、次の球をやや内側に入れてしまう原因になったかもしれない。


「3ボール2ストライクまでの5球はすべてアウトロー。
5球目をボールと判定されたことで、最後の球がやや高めにいってしまった。
最後の球は井端くんがあのコースに投げさせた。
3ボール2ストライクというカウントをつくったことで、井端くんは狙い球を絞りやすくなった。
最後のひと振りは狙っていたようなスイングだった」。
掛布氏が解説するように、スローで見ると、
たしかにフォロースルーはきれいにレフトスタンドに向かって見える。

井端はその後のインやビューでこう言っている。
「二死から連打を続けるのは難しい。二塁打を打てればと思っていた。
中途半端にならないように、しっかりスイングすることを考えた」。

この場面、何が最善かということを冷静に見極めて、
そのためにはどうすればいいか、相手に対してどうアプローチすれば相手も乗ってくるか、
そんなことまで考えながら野球をやっていることは、普段の井端のインタビューの端々からも窺える。
ある程度のリスクを承知で思い切った策に出れるのも、
技術や経験、度胸や責任感といった、裏打ちされた多くの蓄積があるからこそだ。

3回裏の上本の痛烈な一二塁間のゴロに飛びついた際のあの絶妙なグラブの位置にしても、
あるいは初回の無死一塁で上本の犠打を処理したキャッチャー阿部に対し、
走ってくる俊足の上本とかぶって阿部が送球しづらくならないように、
一塁カバーに入った際にきっちりとベースに着かず、
阿部が投げやすい位置に少しだけズレて立っているというそんなプレイすらも、
すべて計算されたうえでの動きに思えてしまう。
そういった楽しみ方を、井端は常に与えてくれる。

タイガースが1点リードしていた中での岩田、菅野のこう着した投げ合いも、
この井端の同点弾で完全に流れがジャイアンツに傾いたように見えた。

「うちの戦う風景が来たということ」。
原監督は8回表の先頭バッター・長野がヒットで出塁した時点で、そこを勝負どころと捉えた。
もはや鈴木尚広の代走は、今季、中盤の代打・高橋由伸、昨シーズンの代打の切り札・矢野謙次、
一昨年の代打の切り札・石井義人に匹敵、あるいはそれ以上の効力を発揮していると言っても過言ではない。

無死一塁、橋本が3球目に送りバントを決めた瞬間、解説の掛布氏が思わず声を上げた。
鈴木尚広のスタートがあまりにもいいスタートだったからだ。
「原監督も苦笑いしてますよ」。カメラが捉えたベンチの原監督はたしかに苦笑いだった。
「成功したとはいえ、バントしたのがもったいなく思えるくらい素晴らしいスタートだった」。
掛布氏がそう感嘆したとおり、スローVTRの映像で見ても鈴木尚広のスタートは完璧だった。
いくらいいスタートをきっているといっても、スローVTRで見れば、
おおかたは投手の足が上がってからランナーが走り出しているのが分かる。
しかし、この鈴木尚広のスタートは、スローVTRで見ても、
投手の足が上がるのとほぼ同時に走り出していた。

「早い段階で盗塁のシュミレーションは出来ていた」。
鈴木尚広は、その回からマウンドに上がっていた福原の投球練習を観察し、
その段階で投球モーションを盗んでいたことを試合後のインタビューで明かしている。

さらに坂本のショート強襲ヒットの際も、鈴木尚広は福原のモーションを完璧に盗んで三盗を試みている。
掛布氏もこのシーンを振り返りながら 「今、鈴木選手はスタートきってましたよ!」 と驚嘆。
ストレートを狙っていたかのように振りぬいた坂本の強い打球がショート・鳥谷のグラブを弾き、
結果的にはこれがランエンドヒットのようなカタチになって鈴木尚広は一気に生還。
今季のジャイアンツの勝ちパターンが完遂した瞬間だった。

坂本の打った強い当たりの低いライナーがハーフバウンドで鳥谷のグラブを弾いたとき、
鈴木尚広はすでに三遊間の辺りを通り過ぎようとしていた。
この走塁が視界に入り、鳥谷は打球から一瞬、目が切れたのではないかと掛布氏は分析した。

「どんな形でも止めないといけなかった。前に落としていたら点は入っていない」。
鳥谷はそう言って悔やんだ。
たしかに強い当たりではあったが、鳥谷の技術なら捕れないことはなかったかもしれない。
とすれば、やはり鈴木尚広の走塁が鳥谷の守備に影響を及ぼしていた可能性は高い。

だが、あの場面はもう、鳥谷の守備云々ではなく、やはり鈴木尚広の走塁なのだろう。
あの状況で躊躇なくスタートがきれる鈴木尚広の勇気は、鈴木尚広の ”プロ意識” そのものである。
かつて、代走という役割をここまで深めた選手が他にいただろうか。

井端の思い切りのいい打撃にしても、鈴木尚広の思い切りのいい走塁も、
高いプロ意識あってこその仕事だといえよう。
もちろんそれは、しっかりと裏打ちされた技術があってこその意識である。



タイガースの守備を前へ前へと誘い出したジャイアンツのプレッシャー。

2014-09-10 23:47:48 | 2014年シーズン

タイガースの焦りばかりが目につく試合になってしまった。
エース・メッセンジャーを立てた絶対に落としたくない初戦。
その出端を挫くかのように、初回から坂本が2ラン本塁打を放った。
これが、タイガースに強い焦燥感を与えた。

その坂本からはじまった4回の集中打も、結局は1回に2点先制されているというタイガースの焦りに繫がって見える。
2打席連続で打たれたことに、多少の高ぶりがあったのか、メッセンジャーは次の阿部を四球で歩かせると、
亀井にもストライクが入らず、3ボールからストライクをとりいった外角高めのストレートをしっかり叩かれた。
けっしていい当たりではなかったが、これが三遊間を抜けていく。
無死満塁となったところでタイガースベンチは内野手に前進守備の指示を出した。
これ以上、追加点を与えたくないというベンチの思いは当然だろう。

外野手はバッターが村田修一ということで、この時点でさほど前には出ていなかった。
カメラが捉えた映像では、ほぼ定位置に見えた。
ランナーを還すことだけを考えてセンターから逆方向を意識していたと語った村田。
狙いどおり、放った打球はやや詰まり気味のライナーでセンターの前へ落ちる。
これがタイムリーとなり、1点が入った。
なお満塁。
次のロペスの当たりも会心の当たりではないゴロが前進守備の三遊間を抜けていった。
これで二人が生還してさらに2点追加。

続く片岡もコンパクトに振りぬき、強い当たりが三遊間を抜けた。
また満塁。
コンパクトな振りでコツコツと点数を重ねられてゆくジャイアンツ。
アウトカウントがないまま単打で繫がる打線をなんとか食い止めたいタイガース。
ここでベンチは先発のメッセンジャーをあきらめて二番手の金田をマウンドへ送る。

バッター杉内になって外野もさらに前へ出てきた。
ここで解説の(CS放送)有田修三氏は 「コツンと当てられてまた内野の間を抜かれないように、
あまり内野手も前進しすぎると危険。
4-3のダブルプレイでアウトカウントを2つ獲ることも視野に入れた守りを考えたほうがいい」 と、
徹底して前進守備を敷くタイガースの内野の守備体型を気にする発言。

三振かホームゲッツーを狙いたいタイガースバッテリーだったろうが、
杉内の打球は高いバウンドのセカンドゴロ。
ホームは間に合わないと素早く判断したセカンド上本はファーストへ送球し1つアウトを獲った。
しかしセカンドに投げていても間に合っていたような微妙なタイミング。
上本が捕球したときファーストからセカンドに走る片岡は、まだ一二塁間の真ん中辺りいた。
しかもバッターランナーは杉内。

ところが極端に前進守備を敷いている為、ショートの鳥谷もかなり前に出ていてセカンドベースからは遠い位置にいた。
ゴロを捕球した際、上本には鳥谷の位置が視界に入っていただろう。
ホーム・ホースプレイを狙って前進守備を敷いている以上は仕方のないプレイだが、
タイガースは勝負の綾がうまく噛み合わない。

これでジャイアンツはこの回4点目。
6対0となってさらに一死二三塁。
バッターボックスには長野が入る。
タイガースベンチは変わらず外野の守備を前進させたまま。
全体は見えなかったが、少なくともレフトのマートンは前に出したままだった。
こういう時は得てしてその方向にそういう打球が飛ぶもの。
今シーズンのGT線で原監督が執った内野手5人、外野手2人という作戦は記憶に新しい。
その時も西岡の打った打球はそれをあざ笑うように誰もいないセンターに飛んでいった。
通常なら平凡なセンターへの飛球。あえてそこに打った西岡の技術は褒められるべきだろう。
ただ、投げた投手が、その作戦を活かすようなコースにきっちりボールを投げた上で打たれているのであれば、
仕方がない結果かもしれない。
しかし、そうでなく打たれているとなると、作戦の意味がまったく失せてしまう。
この時のジャイアンツはまさにそれだった。
とはいえ、作戦の意味を無視してそこに投げてしまったわけではないことくらい観ているファンだって理解は出来る。
いくらコントロールのいいピッチャーでも100%はない。
投げるべきところにコントロールできなかった、そういうことだろう。

そしてこの場面でも、いわばそれと同じようなことが起きた。
金田の投げた2ボールからの3球目のシュートはド真ん中。
これを逃さず振りぬいた長野の打球はレフトへ一直線。
打球は前進守備のマートンの頭上を越えてゆく走者一掃の2ベース。
やはりこれも通常の守備位置ならバックして間に合う当たり。
しかし、それも前進守備という作戦を敷いた以上、言っても仕方のないこと。
そこに打たせないような投球をしてこその作戦である。

ただあの場面は、あそこまでレフトを前進させておく必要があったかという疑問も残る。
有田氏が指摘したように、失点を防ぐことばかりに目がいって、
アウトカウントが獲れない状況に自ら陥ってしまった感もある。
どちらの判断が正しかったかは結果論だが、
やや一辺倒な思考に傾いてしまっているようには見えた。

これ以上、点をやれないというその焦りは、
エースを立てて、初回に2点を奪われたという危機感から繫がっている。
初回の坂本の2ランで、ジャイアンツには安堵感が生まれ、
タイガースには焦燥感が芽生えた。
そんな雰囲気があった。

それぞれの打者が冷静にメッセンジャー対策を考慮し、
コツコツとコンパクトにバットを振りぬいて単打を重ね、
タイガースに少しずつプレッシャーをかけていった。
そのプレッシャーが、もうこれ以上は点を与えられないという焦燥感に繫がり、
タイガースの守備を前へ前へと誘い出した。

初回の2点が、最後までゲームの流れを支配しているように見えた試合だった。




原監督! 6番目はご愛嬌で!

2014-09-08 23:05:13 | 2014年シーズン

3戦目を落としたことで、1戦目の敗戦がクローズアップされ、
3戦目を落としたこと以上に、1戦目を獲れなかったことが、
今となっては、ちょっと効いてる気がする。
3戦目、獲れないのであれば、1戦目は獲っておきたかった。
今にして思えば、というやつだが。
逆に、3戦目を獲ることが出来ていれば、1戦目の敗戦も仕方なしと救われる。
なんだかまどろっこしい言い方だな。
まあ、どうでもいいか。


スワローズの七條は、ルーキーイヤーの2011年にジャイアンツ戦でプロ初勝利を挙げたのが印象に深い。
そのイメージがあるので、その後の何年かの成績は意外だが、
今季久しぶりにイースタンリーグのジャイアンツ戦で登板しているのを見た。
ファームで投げているのだからそれほど調子がいいわけではないのだろうが、
キレのあるボールを投げていたのが印象に残っている。

昨夜の勝利が今季初勝利ということらしい。
インタビューを受けながら涙していたということは本人的には何か苦労することがあっての現在なのだろう。
七条がこの日のピッチングをすればスワローズにとっては大きな駒が加わって心強いだろう。
ペナントは時既に遅しだが、ベイスターズ同様、最後の最後で上位を脅かす役割として、
ラストスパートで存在感を示して欲しい。


昨夜の試合、久保はたしかに不憫な役回りだったが、
役割としては踏ん張らなければ仕方がない立場の投手である。
故障明けであったり、先日の3連続押し出し四球であったり、いきなりの先発であったり、
どんな状況下に置かれてもどうにかこなしてくれるだろうという信頼があってこそのベンチの無理強いなはずだ。
おそらくこの後は何事もなく中継ぎに戻るのだろう。
故障明けということだけが心配の種だが、いずれにせよ、久保はふところが深い。

そもそもそんな久保にいらぬ負担を負わせている原因は、
現在ファームにいる宮國、今村ら若手投手が今季、まったく機能しない為である。
もっともそれは彼らに限ってことではない。
今季ファームから上がってくる投手の顔ぶれは順繰りで回っているだけであまり代わり映えがしない。
原監督が吐き捨てたように 「今やらなくて一体、いつやるんだ」 ということではないか。
今、突き出ないで、いつ出るんだ!
本人の意思で上がったり下がったり出来るわけではないから闇雲に指摘するのも大人気ないが、
今季は例年になく控え投手や若手投手らにとってはチャンスの多いシーズンであることに変わりはない。
なのに今ひとつ、あらたな顔が出てこない。それが残念でならない。

この際だから、今日は少し愚痴を言ってしまおう。
そういうわけで矛先は若い中継ぎ投手に向かう。
今季は後ろの3枚、山口、マシソン、西村が揃って不調である。
山口鉄也は毎年別格に投げているので彼の不調を責めることは出来ないだろう。
マシソン、西村も仕方がないとは言わないが、
ここ数年の貢献度からすれば一概に責めきれるものでもない。
不調だといいながらも大きな離脱もせずに投げ続けているのだから、
彼らの出来不出来にはファントしても心中覚悟である。


で改めて、矛先を若い中継ぎ投手に向ける。
ハッキリ名前を出してしまうと、今季、笠原の状態に、少しヤキモキしてしまうのだ。
他球団と比べるとジャイアンツは、中継ぎ投手にストレートでグイグイ押すタイプが少ない。
交流戦などを見ていると、とくにそんな印象を持つ。
そういった意味では、ジャイアンツでは笠原が、球の力、年齢ともに、もっとも期待が高い。

ここ何年か、一軍に定着しつつも、確固たる立ち位置が確立出来ていない笠原の現実。
きっちり抑えられているときと、そうでないときの、周期が短い。
いい投球が2試合ほど続いたかと思うと、そのあとどうも締まらない投球が続いたりする。
とくに、独り相撲のような状態が目につくときが多々ある。
昨日も、自分のことでいっぱいで、
周りを見る余裕をなくしているのではないかと疑うようなシーンがあった。

3回、久保からマウンドを引き継いだ一死一塁の場面。
バッターは畠山。
笠原はキャッチャー阿部からの返球を受けるたびに帽子を取って額の汗をぬぐい、
バックスクリーンの方向に身体の向きを変えオーロラヴィジョンに視線を向けた。
おそらくオーロラヴィジョンにリプレイされる自分の投球フォームだか投球自体だかを確認していたのだろう。
それはほんの僅かな時間だが、それをしてからまたホームのほうへ向き直って、次の投球の準備に入る。
結局、笠原は畠山に7球投じ、四球で歩かせた。

一死一、二塁。次のバッターは飯原。
阿部は畠山が一塁に歩くのを見送ったあと立ち上がって笠原にボールを返球した。
そのとき阿部は笠原に向けて何かジェスチャーを送った。
投球についてのアドバイスか、次のバッターに対する軽い指示か、あるいはランナーについてか。

それがどんな仕草だったかは一瞬のポーズだったのと、
カメラのアングルがやや阿部の上半身をアップ気味に撮っていたので判別までは出来なかったのだが、
それよりも、阿部がボールを笠原に返球し、そのあとすぐにそのジェスチャーを笠原に向けてやり始めた瞬間、
笠原はその阿部のジェスチャーに目もくれず、
ボールを受け取ったと同時に例によってクルっと後ろに向き直ってしまったのだ。

これには阿部も、うな垂れるように首をかしげるしかない。
マスクをしていたので阿部の表情までは判らなかったが、
その首のかしげ方には明らかにタメ息がまじっていた。
そのあと阿部がマウンドに向かうことはなかったので、
どういったレベルのメッセージだったかはおおよそに予測は立つが、
その回はどうにか無失点で乗り切った笠原も、回をまたいだ次の4回裏、
先頭の山田に本塁打を浴び、結局、1回2/3を投げ2安打2四球1失点、
ピシャリと締めて次の投手にバトンを渡したという感じにはならなかった。


7月11日のドームでのタイガース戦でもこんなことがあった。
8回表からマウンドに上がった笠原。
この試合は中盤にタイガースが得点を重ね、
8回に入った段階でタイガースが8対3と5点差をつけていた。
8回、二死から打席に入ったのはルーキーキャッチャーの梅野。
梅野と笠原は同じ福岡工大城東高校の出身。笠原が1学年、先輩らしい。
梅野が今季からタイガースに入団し、この試合で初対決が実現した。

ルーキーでスタメンマスクを任されている以上、
そんな対決も楽しいでいる場合ではない梅野。
もちろん笠原もそれは同じことだが、先にプロ入りし、
6年目迎えている笠原には、高校時代、共に汗を流した後輩との対決は嬉しかっただろうし、
マウンドでの表情も少し笑みをこぼしながらバッターボックスに入る梅野に視線を向けていた。
それでも先輩の意地を見せたい笠原。それは当然のことだろう。

ただ明らかに、笠原のほうが意識しすぎていた。
穏やかに笑みを浮かべている表情とは裏腹に、身体には力が入りまくっている。
1球、2球とカーブが低め高めに大きく外れ、3球目、おもいっきりリキみまくって投げたストレートは、
今までの笠原には見たこともないような力任せの投球フォームで、
これまた笠原の球速では滅多に見ない151キロを表示。
外角に大きくはずれた速球をキャッチした阿部は、
あるで内野手がライナーを横っ飛びするような格好でどうにか捕球。
3ボールとしてしまったことで、表情の笑みにも少し余裕がなくなってきた笠原。
どうにか3ボール2ストライクまで漕ぎつけたのだが、
四球は出したくない気持ちが最後のフォークボールを置きにいかせてしまった。
まったく落ちないフォークボールがド真ん中に入る。
それを見逃さなかった梅野はおもいきりのいいスイングでバットを振りぬき、
打球はレフトスタンド中段へ。
ここではじめてマウンドの笠原は ”やってしまった” の表情になった。

どうにか後続を断つことは出来たが、次の9回表のマウンドでも先頭の上本に初球のストレートを本塁打された。
次の大和には2球目をレフト線へ2ベース。ここでマウンドを今村に譲って降板。

プロの世界に入って、高校時代、大学時代の先輩後輩や旧友、
ライバルとの初対決を楽しむのは心情的にはすごく理解できる。
力が入るのも解るし、抑えたい気持ちも解る。

ただ、そういうことである。

これを悪いといっているのではない。
こういうことが、象徴としてある、ということ。
マウンドで、自分の投球だけになってしまっているように見える。
そう見えることがけっこうある。

昨シーズンだったか、金本知憲氏が笠原に対して非常にいい評価をしていた事があった。
「球に力があり、向かっていく投球で、球児のようになれる可能性を感じる」。
ものすごい褒め言葉だが、一流の打者にそう評価されているのだから、能力が高いことは間違いないのだ。
高校からの入団とはいっても、もう6年目。一軍のマウンドも随分経験している。
原監督が高い評価を与えるように、いい結果も出している。
もうひとランク上がったマウンド捌きを身につけ欲しい。
ゲームの流れに呑まれるのではなく、流れを整えられるような冷静なマウンド捌き。
制球など課題も多いだろうが、共に磨きをかけて、20代の中継ぎ投手を牽引する立場になって欲しい。
もっともっとレベルアップしてもらいたい存在だ。


大竹の故障が、当初発表されていた状態よりも、意外と長引くのではないかという報道が出ている。
古傷でもある右肩らしいから、無理は出来ないだろう。
一昨年、後半にきて杉内が故障で離脱し、そこでシーズンを終えたのを思い出すが、
現在、杉内が健在でマウンドに上がっているのを見ると、大竹もここで無理をせず、
先を見据えたほうがいいように思う。
どこまで戻っているかは先日のファームでの一試合だけだから分からないが、菅野が還ってくる。
2試合も続けて驚くような投球をしているのだから、次がどんな結果であっても、
澤村にはもうラストスパートに向けローテーションの一角を担ってもらわなければ困るだろう。

そして杉内、小山、内海。
結局、6人目、昨日の久保のところで投げるべく、
本来、登板するべき役割の6番目の先発投手に、
原監督はまたしても頭を痛めなければならないのだ。

ただ、もうこの5人が動かぬことは間違いないのだから、
あとはひとり、活きの良さそうな、あくまでも贅沢は望まずに、
活きの良さそうな、くらいの期待で、若い投手をつぎ込んでくれると、
ファンとしては非常に嬉しいし、胸も躍る。

例えば松本竜也。例えば田口麗斗。例えば平良拳太郎。

ここまで来たら、もう誰が投げてもそんなには変わらないということで、
原監督! ここはもうご愛嬌ということで如何でしょう?



見せた井端、見ていた長野。

2014-09-07 23:43:57 | 2014年シーズン

井端が打たせたホームランー
実況席で解説の谷沢健一さんは繰り返しそう言った。

井端のタイムリーヒット。長野の逆転満塁ホームラン。
神宮2日目は、5対2で勝利したジャイアンツが前夜の完封負けの屈辱を晴らした。


スワローズ・石山を打ちあぐね、ランナーが出ても繫がる気配がまったくなかったジャイアンツ打線。
尻上がりに球がキレてきたと、解説の谷沢健一さんと金村義明さんは口を揃えた。

中盤までまったく手が出ず、後半のワンチャンスで打ち崩すという展開は、
前回、石山と対戦した7月15日の東京ドームでのヤクルト戦とよく似ている。
小山、石山で始まった7月15日の対ヤクルト12回戦は、8回表が終わった段階で3対0、
スワローズ3点リードで8回裏のジャイアンツの攻撃を迎えた。
それまで僅か2安打に抑え込まれていたジャイアンツ打線だったが、
一死からフォアボールとデッドボールでチャンスをつくると打線が繫がり一気に同点に追いついた。
試合はその後、延長戦にもつれ込み、12回裏、
橋本のライト前ヒットでジャイアンツがサヨナラ勝ちを収める。

昨日のジャイアンツも6回の攻撃が終わった時点で5安打無失点。
ランナーを出してもその後がなかなか続かずに、2対0でスワローズにリードを許す展開だった。
前回の石山も一死から四球などが絡んで失点を重ねたが、
この日も一死から村田、片岡に連打を浴びると、次の小林を四球で歩かせた。
外一辺倒の攻めを、最後、小林は完全に見切っていた。

一死満塁。ここで代打の井端は2-2からのインコース・ストレートをセンター前へはじき返した。
身体を少し開き気味にしておっつけた強い当たりは、狙い澄ましたようなピッチャー返し。
「冷静に見極めて、打つべき球を打てた」。
そう振り返った井端。
一塁ベース上での険しい表情に集中力の極みを見た。

井端との6球の勝負で、石山は完全に自分のテンポを失った。
井端との勝負のテンポのままで、次の長野を迎え、その流れのままで1球目を投じた。
そのテンポを掴みきっていた長野が、一発でストレートを捉えた。

長野の、一瞬で決まったこの勝負には、井端による、6球の死闘からの繫がりを感じざるを得ない。
”打線の繫がり” という表現をよくするが、 ”繫がる” の意味の深さを、まざまざと見せられた気がした。
集中力、タイミング、スイング…、井端の打席内で起きていた多くが、そのまま長野の打撃に繫がって見えた。

解説の谷沢さんは、井端の粘りが長野に初球のストレートを狙わせたと興奮気味に話す。
「勝負の中でタイミングを計っていった井端を、長野はネクストでじっくり見る事が出来た。
井端のこの粘りで、長野は少しずつタイミングを合わせていけた」。
一発で仕留めた長野を賞賛しながらも、この井端の粘りからの流れに、谷沢さんは感嘆しきりだった。


1イニング必殺のゲームが、今週これで3試合目となった。
なかなかチャンスがつくれない中にあって、ワンチャンスをものにする集中力も、
今季、ジャイアンツの勝利の法則のひとつ。
さほど数のない法則のひとつひとつは、すべて、ギリギリの戦法ばかり。
その重圧につぶれない強さが、チームとしての経験値だろうか。


しつこさと、はぐらかすこと投球の如し。

2014-09-06 23:44:21 | 2014年シーズン

山本昌と同様に、1983年のドラフトで高校からプロの世界に入った主な有名選手を何人か上げてみると、
読売ジャイアンツ・水野雄仁、広島東洋カープ・紀藤真琴、阪神タイガース・仲田幸司、
ヤクルトスワローズ・池山隆寛、西武ライオンズ・渡辺久信、阪急ブレーブス・星野伸之、
近鉄バファローズ・吉井理人、この辺りが同い年の同期選手である。

入団した年は違うが年齢がいっしょという選手は、元ヤクルトで兼任監督も務めた古田敦也、
さらに中日ドラゴンズ・与田剛、日本ハムファイターズ・武田一浩、千葉ロッテ・小宮山悟、
元ヤクルトスワローズで現・読売ジャイアンツ一軍打撃コーチの橋上秀樹、
同じくジャイアンツの一軍投手コーチ・斎藤雅樹は学年は一つ上だが生まれた年は同じである。

同い年の元・野球選手らは、既に監督、コーチ、解説者などの立場である程度の実績を得ている。
そういう見方をすると、彼らの引退から、それなりに時間が経過してたことを実感する。
改めて、山本昌が如何に長くやれているかを思い知る。


最年長記録やら、最多記録やらで、
山本昌が毎年のように何かの記録更新とともに名前が取り沙汰されるようになったのは、
41、42歳くらいの2006年頃からだろうか。
当時はまだ山本昌より2つ年上の工藤公康氏が現役だった為、
両リーグ通じての記録は工藤氏のほうが少し先に達していたが、
リーグ記録に関してはドラゴンズひと筋の山本昌のほうが圧倒的に勝る。
工藤氏が引退を表明した2011年以降は、球団記録も含めたそれらのリーグ記録に係わらず、
NPB記録自体も徐々に山本昌が塗り替えている。



プロ野球の最年長勝利を達成した昨日の試合、
CS中継で解説をしていた元ドラゴンズの小松辰雄氏が、
山本昌の入団当初の印象などを語っていたのがとても面白かった。
「とにかく身体が大きくて、当時のピッチャーとしては手足が長かった。
すごにあっちが痛いこっちが痛いと泣き言ばかり言っていたのを思い出す。」 と小松氏。
ストレートの球速は当時も今もさほど変わらないと笑う。

山本昌が入団した1984年頃から数年は、まさに小松氏の全盛期。
85年、87年は最多勝を獲得するなどタイトルも数多く手にした。
山本昌と同じ高校からの入団であったが、入団当初から150キロ投手の片鱗を充分い発揮する。
そんな小松氏の目には、山本昌は身体が大きいだけのひ弱な高卒投手としか映らなかったろう。

くしくも小松氏が引退を決意した94年は、山本昌が2年連続して最多勝を獲得した年である。
自身のキャリアハイとなる19勝を挙げ、最優秀投手、最多勝、沢村賞などを獲得。
まさに山本昌の絶頂期といえる。

その絶頂を迎える数年前が、星野仙一のドラゴンズ第1次監督時代にあたる。
小松氏が語った山本昌の入団当初の印象は、
これまでにも星野仙一・現楽天監督が同じようなことをスポーツ紙やスポーツ番組などで話している。
よく山本昌の転機として語られるのが88年のロサンゼルス・ドジャースへの野球留学の話。
5年目のその年、ベロビーチで指導を受けたアイク生原さんとの関係はTV番組でも紹介されて有名だ。
そこで身につけた低めへのコントロール、スローカーブ、
そしてスクリューボールが、その後の山本昌の礎になる。

2012年にドラゴンズは1995年以来17年ぶりに高木守道氏が監督に就任した。
これも山本昌にとってはちょっとした縁ではなかったか。
高木監督は前年に右足の故障で手術していた山本昌を鼓舞し、復活を厳命した。
高木監督の第1次監督時代はまさに山本昌絶頂の時期と重なる。
高木監督が再び球団から監督に任命された意味を、
山本昌の復活というイメージに重ね合わせたかどうかは分からないが、後の山本昌のコメントで、
このとき高木監督からは開幕投手という具体的な言葉までかけられていたことを明かしており、
それが励みになったことを山本昌は高木監督への感謝の言葉と共に述べている。


2004年からドラゴンズの監督に就任した落合博満氏は8年間、監督を務めた。
2004年は山本昌が39歳になった年だ。
ようするに、40代はほぼ、落合監督のもとで野球をやっているということになる。
40代の山本昌を、監督としていちばん近くで見て、いちばんよく知っているのが落合博満だ。
そんな落合監督が2013年のオフからGMというカタチでドラゴンズに還ってきた。
井端の騒動をはじめ、契約更改での主力選手の年俸大幅カットは就任早々話題になったが、
その際、落合GMは山本昌の年俸カットの理由を 「50歳まで投げるための措置」 と説明。
井端の去就の陰にあって、このことも温情措置のように扱われ、
けっこうメディアに取り上げられて話題となった。
この査定に対し、山本昌は契約更改後の記者会見で、
穏やかな表情を浮かべながら前向きに発言していたの憶えている。
両者の本音までは分からないが、おそらくこの言葉で、
山本昌が次のシーズンに向けて気持ちにささやかでもユトリが持てたであろうことは想像に難くない。
こういったタイミングにも巡り合せを感じる。



山本昌がここまで長いこと現役を続けていられる裏には、
身体と技術に対する鍛錬はもちろんのこと、
本人がインタビューで照れ隠しのように言っていた ”しつこさ” も、
言い換えれば ”努力” と捉えることも出来るだろうし、
昨年引退した同僚の山崎武司が某雑誌で語っているような、
「無類の負けず嫌い」 という性格も大いに一役買っているかもしれない。
また、様々なメディアによって取り上げられているそんな山本昌のここまでの野球人生を眺めていると、
やはり本人の力だけでは成し得ないようないくつもの ”運” の積み重ねも場面場面で見えてくる。

その運は、出会い、と表現してもいいだろう。
アメリカで指導を受けたアイク生原さんとの出会いや、要所で絡むコーチや指揮官。
ドラゴンズというチームカラーも無関係ではないかもしれない。
そんな様々な出会いを要所で引き寄せるのも、山本昌の運と才能だ。


野球選手の選手寿命も昔に比べれば随分と伸びたようにも思える。
それでも長くやれる選手は限られている。
丈夫な身体と巧みな技術。
これらも山本昌のいう ”しつこさ” の賜物だろうか。

山本昌のような個性豊かな選手を長く見続けることが出来るのも野球ファンにとってはうれしいこと。
山本昌をモデルにはしづらいし、今後、山本昌に続くような選手が出てくるかは分からないけれど、
山本昌の言う ”しつこさ” を ”努力” と置き換えるならば、
そんな情熱に満ちたベテラン選手らは多くの球団に存在している。
そんなしつこさを引き継ぐような選手がこの後、どれくらい出てくるだろうか楽しみである。

そういえば、ドラゴンズにも、そんな可能性を秘めた選手が何人か控えている。
和田一浩、小笠原道大。
そして岩瀬仁紀がどこまで投げ続けられるかも、期待を持って見ていたい。




粘りと守りで競り勝つ野球は、最後、どう結実するか。

2014-09-05 23:58:21 | 2014年シーズン

さすがに今季の澤村はヒーローインタビューでも声を張らない。
それだけ自身のおかれた状況が見れている証拠だろうか。

恋女房・小林誠司との相性も3つ目(勝ち星)ともなると板についてきた。
不思議なもので、3つの負けと、勝ち負けのつかなかった登板は、
どれも阿部か實松がマスクをかぶった試合。
投げやすさがあるのか、勝ち星がついているのはすべて小林と組んだ3試合である。

もちろんこのバッテリーだって、この先いくつもの負けを経験して行くことになる。
しかし今季に限っては、最後までこの組み合わせにこだわって起用して欲しい。
澤村にしても、、今季7回の先発登板で、これだけ偏った結果が出ているということが、
気になっていないはずはない。
やはり、小林と勝っているという事実は、否応にも頭に残っているだろう。

高いレベルのプロの世界だからこそ、ちょっとしたメンタルの揺れ動きが大きな差となって結果に現れる。
短い戦いでは、流れや相性も重要な要素とよく言われる。
ここからの最終決戦までの戦い、そういったことに頼ってでも澤村には今の状態を維持してもらいたい。



5安打無失点のまま7回で降板した澤村だったが、この試合でもヒット数はカープが上回った。
結局、カープは3試合ともヒット数ではジャイアンツに勝ったものの、試合に勝つことは出来なかった。

ジャイアンツは1戦目、2戦目とロサリオに打ち込まれ、結果、3戦トータルで11打数7安打3四球、
うち本塁打が2本と痛い目にあわされた。先週のベイスターズ・グリエルとかぶるが、
そのグリエルを3戦目にどうにか抑えることが出来たように、ロサリオも3戦目でどうにか澤村が抑え込んだ。


カープはこの3連戦、総じて守備や走塁でミスが目立った。
競った展開でのミスは命取りと言われるが、リーグ戦も競ったカタチでここまで来ると、
それはもう一試合の中だけの話では済まなくなる。
奪われるのはペナントの行方そのものになりかねない。

ここにきて勝敗が一方的になってしまうのが両チームの経験値なのだろうか。
それは、このジャイアンツ対カープ3連戦の裏で行われていた、
甲子園でのタイガース対ベイスターズ戦にも同じようなことが言える。

一戦目、久保の好投で1点リードのまま9回を迎えるが、
守護神・三上で逆転サヨナラ負け。
勝ち越し点となった最後のホームでのクロスプレイは、
完全にアウトのタイミングだったにもかかわらず、
キャッチャー・黒羽根のタッチミスで判定はセーフ。

二戦目は山口の完投で岩田に競り勝った。
アウェイでありながら一戦目、二戦目と、
間違いなくベイスターズのほうが主導権を握ってゲームを進めていた。
そんな流れで迎えた三戦目。
ベテラン三浦大輔の粘りのピッチングで6回表まで1点リードしていたベイスターズだったが、
その裏の守りでセンター桑原のイージーミスなどからまたもや逆転。
内野安打や送りバント、敬遠の四球などを絡めて、
きっちりとした野球をやったタイガースがこの試合もモノにし、
3連戦を2勝1敗で勝ち越した。

ベイスターズは3連戦3連勝の可能性が充分にあったところを、
ミスなどが絡んで守りきれず、結果、痛い負け越しとなった。
地の利もあったかも知れないが、結局はタイガースの粘り勝ち。
ベイスターズが守りきれず、攻めきれず、という図式。
こちらの3連戦もミスが命取りになった。

もちろん、まだまだペナントの行方はこの先も右往左往しそうである。
今季ここまで、粘りと守りで接戦をモノにしながら首位を守ってきたジャイアンツ。
くしくも、今季初のマジックが点灯した3連戦でも、その粘りと守りが勝敗を決し、
マジックの対象となったベイスターズが、甲子園でジャイアンツとは逆の展開で3連戦を負け越した。

決め手のない中で、粘りと守りで接戦をモノにしてきた野球は、最後、どう結実するだろうか。


さらりと井端弘和は言ってのける。

2014-09-04 23:43:19 | 2014年シーズン

まさに、原監督の読みどおり、勝負は5回のワンチャンスだった。

前日の試合後、原監督に 「どうしても村田のところで…」 と、
数日前とまったく同じ言い回しで名指しされた村田修一だったが、
その村田がこの試合、7番に座った。
3番坂本、4番阿部、5番亀井。
やはりこのクリーンナップが現状ではベストの布陣に思える。
6番ロペス、7番村田、8番片岡。
こちらも現状では、この並びがいちばんいいのだろう。

その村田とロペスでつくった5回のチャンス。
ここを勝負どころとみたと、試合後に原監督は語っているが、
そのチャンスに、5回までロサリオの本塁打1点のみで抑えていた小山をあきらめ、代打に井端を送った。

「井端なら前に飛ばしてくれるだろうと、ロペスにギャンブルスタートさせた」。
のちに川相ヘッドコーチが明かしたように、井端の内野ゴロはベンチでは規定路線だった。
もちろん井端も自らコメントしているとおり、
「ゴロを打てば三塁ランナーが帰ってきてくれると思ったので、とにかくバットに当てることだけ考えた」 と、
自分に求められている仕事はあたりまえのように理解している。

おそらくカープベンチもそれを警戒した上での指示だったろうし、
野手陣もそれに備えてのシュミレーションは出来ていただろうし、
前田健太もそれを踏まえた上での内角へのシュートだったはずだ。

そんなそれぞれの思惑が、あからまさに見えていた中での、あのボテボテのセカンドゴロである。

「相手より1点、多く獲れば勝てるので、どうやって獲るかだけは、ずっと考えてやっているつもりです」。
ヒーローインタビューのお立ち台で、井端は淡々とそう応えた。
いつもどおりの静かなトーンに、自信とプライドが滲み出ていた。


前日に続き、この試合でもヒット数でジャイアンツを上回っていたカープだったが、
とくに後半、あと一本というところで凡打、併殺と打ちあぐねた。
一方、そのジャイアンツ投手陣は5回を投げた先発の小山が3安打1失点だったのに対し、
その後を受け次いだ中継ぎ陣、香月、山口、西村、マシソン、それぞれが1イニングを投げきり、
皆、揃って2安打ずつ打たれるという締まらない展開。
失点は西村が1点失っただけで、あとは皆、とりあえず無失点。マシソンにもセーブがついた。
しかし原監督は、「結果は勝ったんでしょうけど、本当に勝ったのかどうか…」 と、
首をかしげながら6、7、8、9回の救援陣の不甲斐なさに不満顔。
打者と違い、投手がちょっとしたキッカケで急に良くなるというのも考えずらいので、
今季は最後までこんな調子で押し切るしかないのだろ。
もしかしたらベンチはもうとっくにその思いで腹をくくっているのかもしれない。
皆、大きな故障なくマウンドに上がり続けていることを考えれば、それだけでも大仕事だ。


4日のスポーツ報知の記事に、井端の逆転打に絡めて、
ヨシノブと井端のロッカールームでのこぼれ話が添えられていた。
先日、ヨシノブが抹消されたときに二人が交わしたロッカールームでの短いやりとりだ。
ヨシノブが笑いながら 「さみしくて死ぬなよ」 と声をかけると、
井端が 「そうだな、死んじゃうかもな」 と応じたという、
仲の良いベテラン同級生ならではのエピソード。
今季のヨシノブが醸し出すリラックスした雰囲気は、井端加入の賜物だと感じる。

ヒーローインタビューの最後にインタビュアーが、
これから優勝に向けて何が選手たちにとって大事になってくるかと尋ねると、
「一戦一戦、戦ったあとに『疲れた、全部出し切った』と言えるような試合をして行けばいいんじゃないかと思う」 と、
井端は応えている。
前述の、自信とプライドを覗かせたあの言葉といい、そんなことを井端はさらりと言ってのける。

帰ってきたぞ、亀井と長野が帰ってきたぞ。

2014-09-03 23:33:47 | 2014年シーズン

真ん中に立つ坂本の腕を、亀井と長野が両脇から掲げて観客の声援に応えた。
坂本の嬉しそう笑顔がとても印象的だった。
お立ち台に並ぶこの三人の姿は、今季ヒーローインタビューで並んだ数ある組み合わせの中でも、
かなり上位にランクしたくなるほどの嬉しい並びではないか。
ファンの嬉しい気持ちも合わせて、坂本の笑顔が代弁してくれた。

亀井と長野がいっしょに帰ってきた。
彼らのコメントや、ベンチの扱いから察するに、
本来ならまだプレイするには時期尚早なのかもしれないが、
チーム状況がそれを許容できる状態にない。
そして何よりも、ペナント自体がもう、そうも言っていられない時期にさしかかっている。
とはいえ、今度ぶり返してしまったら、佳境を迎えるここからの大事な時期を、
すべて棒に振ってしまう危険もはらんでいる。
チームにとって欠かせない二人。再発しないようにと、ベンチも気を使いながらの起用だろう。
最後まで無事に乗り切ってくれることを、ファントしては願うばかり。

ただ、二人がいっしょに帰ってきたということには、実質的な効果以上のものを感じる。
いっ気に二人が復帰したという弾みが、チームに倍以上の勢いを与えてくれたのではないだろうか。
そんな期待を抱いてしまう。
野手の故障者が続出し、とくに外野手に集中した。
原監督が最後の砦と表現した隠善を一軍に上げるなど、
そんな間も首位から落ちることなく、まさにチーム力で粘り抜いた。
二人が同時の戻ってきたことで、さあここから、という気にならないはずはない。
タイガースとカープの順位が入れ替わり、現時点での首位決戦となったカープ3連戦。
その初戦に合わせたかのように戻った二人が、そのゲームで活躍してチームを勝利に導いた。
流れとしては、この上ない。


いい兆しが一方に出てくると、そうでない部分がより、クローズアップされる。
勝っても原監督の表情が晴れない理由、
「ちょっと打たれすぎ」 と苦笑いを浮かべながら言った中継ぎ投手陣への不満が、まさにそれだ。

9対4と試合には勝ったジャイアンツだが、ヒット数はジャイアンツの12に対し、カープが16と上回っている。
ゲーム全体を見渡すと、普通なら6回に4連打を浴びた江柄子の低調ぶりにもっと目がいってもおかしくはない。
だが今のジャイアンツ中継ぎ陣は、出てくる投手のほとんどが任されたイニングをスッキリ抑えているわけではない。
だからこの日のように、とくに良くなかった江柄子がフューチャーされることもなく、全体的にモヤっとした空気が残る。
そのあらわれが、原監督のインタビューでの表情だろう。

一ヵ月半ぶりに勝ち星のついた杉内の試合後のコメントに、
長らく一線で実績を残している投手の巧妙さを感じた。
原監督がたたえたように、勝ち星に恵まれなかった間も、
常に粘りの投球で試合をつくっていた。
「高めに抜ける球が多く、球威で押すことができなかった。
逆転は絶対にさせない、今日のベストを出し、粘り強く投げようという気持ちだけでした」。
本調子でなくても、その中で出来るベストを出し尽くす。
さりげない言葉だが、今日のベストを出し、というくだりに、
先発投手の役割を充分に知った男だからこそ言える冷静さが出ていて、
くしくも同じ18番を背負っていた桑田真澄を髣髴させる。





開幕当初の華のある打線は戻ってくるか。

2014-09-01 23:08:03 | 2014年シーズン

あやうくモスコーソをメッセンジャーかナープソンにしてしまうところだった。
モスコーソとは今季初対戦。
ジャイアンツにとっては厄介な投手が現れた。
このあとベイスターズ戦も多く残しているジャイアンツ。
今季、痛い目にあっている久保康友。さらにモスコーソまで加わるとなると、
今回のカード同様、ベイスターズ戦はこの後もかなり手こずることになりそうだ。

30日の試合は前日に続いてまたグリエルに打たれまくった。
翌31日は、前日も初回に本塁打されているブランコに、また初回から2ランを浴びた。
この3連戦、グリエルには本塁打1本を含む13打数7安打と5割以上打たれている。
ブランコには本塁打2本を含む12打数4安打。
2試合続けて先制本塁打を放ったブランコは、今季、ジャイアンツ戦でよく打つ。
トータルで39打数15安打3本塁打、打率.385はセリーグ対戦チームの中では一番の好相性。
セリーグで最もブランコに打たれているチームがジャイアンツだ。

といっても、ジャイアンツ戦になるとよく打つ打者、いい投球をする投手はけっこう存在する。
これはある意味、宿命みたいなものだから仕方がない。
そういうバッターを抑え、そういうピッチャーを打ってこそのリーグ覇者だろう。


3戦目の、久保裕也の先発は少し驚いた。
あの3連続押し出し四球から間隔が空いていた久保。
先発のマウンドに立つのは09年の8月以来、5年ぶりとのこと。
8月前半のイースタンリーグで、西村健太朗が一度、先発で試されているので、
西村先発の可能性は先日からちょこちょこ取り上げていたが、久保の先発は意表をつかれた。

初回、久保は、左足をゆったりと大きく上げる、ノーワインドアップで投げていた。
久しぶりの先発に、球威を意識してのことらしいが、制球が定まらないと判断するや、
すべての投球をセットポジションに変えた。
これが功を奏し、それ以降はキレが戻ってコースに球がいきだした。

これで久保はまた中継ぎに戻るだろう。
あるいは連戦続きの9月に、もう一度くらいは先発のマウンドに上がるかもしれない。
仮にまた機会が巡ってきたとしても、この日の投球をベースにすれば充分に期待はできる。

村田に、なかなか5番の派手さが戻らない。
まったくダメな状態なら、逆に思い切った手をベンチも打てるだろうが、
そこまで酷いというわけでもないから、余計に中途半端な立場に納まって見える。
原監督が嘆くとおり、村田のところでのつながりの悪さばかりが目立ってしまう。
それでも、攻守にわたり、村田の存在は大きい。
昨シーズンの夏場のような盛り返しも期待薄となれば、
戻ってくる選手との兼ね合いで、打順の入れ替えもまた検討の余地だろうか。

ここにきてロペスの集中力が目を引く。
昨シーズンの調子とは言いがたいが、スタメン出場が増えてきた影響か、
要所で結果が出るようになってきた。
ロペスの調子次第で、打線の雰囲気はガラリと変わる気がする。
開幕当初、打ちまくっていたロペスの打率が下降するのに呼応して、
チームの成績も横すべりになっていった。
故障者の復帰と、ロペスの復調で、開幕当初の華のある打線がシーズン大詰めで戻ってくるだろうか。



ところで、ベイスターズの林昌範が、海外FA資格を取得した。
このブログを始めたころ、林はまだジャイアンツにいた。
左のエースになれる逸材だと、高い能力に惚れ込んで、よく彼を取り上げた。
なかなか勝ちに恵まれなかった。
故障、トレード、北海道で終わってしまうのではないかと、さびしい思いで見ていたときもあった。
昨日、中継の中で、林が海外FA資格を取得したとアナウンサーが話していた。
ベイスターズのピンチの場面、マウンドには林がいた。
ジャイアンツのチャンスの芽を摘んで、林がこぶしを握り雄たけびを上げた。
よくぞここまで来たものだと、少し胸が熱くなって林に拍手を送った。
もっともっと上を目指し頑張って欲しい。
応援しているよ林くん。