ブログ、巨人軍。

頑張れ、ジャイアンツ!
頑張れ、日本のプロ野球!

ペナント開幕。若き3本柱への高まる思い~宮國涼丞、菅野智之、沢村拓一。

2013-03-30 04:40:09 | 2013年シーズン

2013年のペナントレースが開幕した。
年々、年間を通しての選手の稼働期間が長くなっているので、
シーズンスタートもあっという間と感じる。

以前、解説者の川藤幸三氏が、
自分らの頃と比べると今の選手は一年中野球をやっていて休む暇もないと同情していたが、
本当に一体いつ休むのかというくらい一年中野球漬けの選手も少なくないだろう。

とくに昨年のジャイアンツは、
ペナント優勝からクライマックス、日本シリーズ、アジアカップと続き、WBC代表の選出が多かったため、
それに引っ張られるように他の選手らも海外自主トレから物凄い速いペースで仕上げていた。
野球ファンはオフが短いほうがずっと選手の動向を追っていられるので楽しみも多いが、選手は大変だろう。


オープン戦終盤での宮國、菅野の投球は、開幕してからの期待をより膨らませる内容だった。
宮國に関してはプロでまだ6勝しかしていない3年目の投手とは思えない落ち着きがどの試合でも見られ、
調子のあまりよくない状態でも、どうにかしのげるピッチングも披露して期待が高まる一方だった。
菅野も期待通り、背番号19を背負いルーキーイヤーに20勝した上原を想起させる投げっぷりで夢は膨らむ。

ただこの二人は誰が見ても評価が高いだけに、
本人らがいろいろな意味で飛ばしすぎてケガをしてしまうことが心配。
それだけは本当に注意してもらいたい。
昨年より一回り身体が大きくなったとはいえ、手足が長い分、まだ細く見える宮國。
ゴロを捕りにいくときなど、踏ん張る瞬間、足首をグキッっといきそうで、見ていて怖いときがある。
走って、走って、もう少し下半身がドッシリすると安心して見ていられる。

ケガをして投げていなかったわけではないから1年間のブランクといっても、
さほど影響はないだろうと菅野に関して評論家の誰かが言っていたが、
たしかに制球、スピード、投球術など見ていると、さほど心配することもなさそうだ。
肉体的、技術的な面ではプロ入り後、キャンプ、紅白戦、オープン戦を経て、
開幕してからも徐々に実戦を重ねてゆく事で身体が思い出してゆく勝負勘のようなものもあるだろう。
ただやはり、評判の高さと期待の高さ、自分のおかれている立場など、精神面で無理をしすぎないよう、
責任感が強そうなだけに注意して欲しい。そういった面で追い込みすぎることもケガに繫がりかねない。
今季は期待の半分くらいでいい。半分くらいで充分だから、とにかくケガだけは注意して欲しい。

沢村にとって、今季は非常に重要な年になるのではないか。
新人賞を獲った一昨年の成績が11勝11敗。
そして昨年が10勝10敗。
2年続けて二桁勝ったものの、負け数も2年続けて勝ち星と並び、貯金なし。
後ろから歳の近い宮國、ルーキー菅野が近づいている。
その近さは、もうすでに手の届くほどの近さ、真後ろに並んでいるといっていいだろう。
オープニングを飾る宮國。実力は折り紙つきの菅野。
いつでも先発に回れそうな高木京もいる。
昨年のポストシーズンでいいところを見せた沢村だが、球の力は今さら説明するまでもない。
それでも2年間を通して、絶対的な信頼を築けたかといえば、必ずしもそうとはいえない。
球の力強さは3人の中でも屈指だろう。
宮國が憧れる沢村のスピードボール。
このオフ、原監督の”沢村抑え候補”発言に「自分はあくまで先発一本でいきたい」と言い切った彼の決意と自負。
先にあげた二人と並走するのではなく、彼が先頭で二人を引っ張っていく、
そんな状況にでもなれば、ひと昔前の槙原、斉藤、桑田の右の3本柱に匹敵する”右の新・3本柱”が完成することも夢ではない。

開幕第一戦。宮國に勝ちは付かなかった。
オープニングの緊張からか、解説の江川らがしきりに口にしていた ”硬さ” ”らしくなさ”
阿部の構えたミットとは別のコースにボールがゆくこともしばしばだった。
それでも、不調の中、7回途中まで投げて3失点は先発の役割はどうにか果たしたといえるだろうし、
見方を変えれば、あんな状態でも大崩れせずにどうにかゲームをつくれるという、
ローテーションピッチャーとしての大事な条件をクリアしていることへの証明にもなった。

そして更に、負けが付かなかった、これが重要だろう。
エースになりうる投手の必須アイテム”運の強さ”
シーズンはこの試合から、昨日始まったばかり。
宮國の今季、柱としてのローテの道は、ここからスタートである。
なにも問題はない。


どうにも合点がいかない、小笠原の状態。

2013-03-25 01:45:23 | 2013年シーズン

小笠原の開幕2軍が決った。
ケガが明けて1軍に合流後の数試合、結果が出なかった。
プロ17年目にして初の開幕2軍スタートらしい。

そんなことより、小笠原は大丈夫なのか。

あの時から、小笠原はまるで別人のようにボールが飛ばなくなった。
2011年、統一球、2000本安打。
順調な滑り出しではなかった2011年。
小笠原だけでなく、多くのホームランバッターが統一球に手こずった。
開幕直後から、小笠原は2000本安打を目の前にしてヒットさえ生まれなかった。
統一球のせいなのか、2000本安打へのプレッシャーからなのか。
ようやく2000本安打を達成してもさほど調子は上がらず、
挙句の果てにケガが重なり2011年のシーズンはプロ2年目の年以来のホームラン一桁(98年1本、11年5本)、
打率も.242に落ち込んだ。

ただ、次の年になれば、元の小笠原に戻るだろうと、多くの人が思ったに違いない。
わたくし、執筆人も、その一人だ。
ところが、次の年、2012年、昨シーズンは、2011年を下回る、
小笠原にとってはプロ生活で最低の成績となるシーズンになった。
もちろん、ケガなどもあって、なかなか復調の波に乗れなかったこともある。
今季も、ケガが直ったかと思った矢先、折れたバットで指を切り、また十数針縫うケガを負った。
2011年から今季にかけて、ケガに祟られているのは確かだ。
飛ばないボールでフォームを崩した、と解説する評論家もいた。
統一球以前の、小笠原独特の大きな振りから脱却できず、新球に適応できなかった見る解説者もいる。


2000本安打を控えた2011年、開幕当初から小笠原はイマイチだった気がする。
当時、ラミレスもなかなか調子が上がらなかったから、
統一球の影響はかなり大きいという見方がおおかたの論評だった。
しかしそれ以降、ケガが重なったにしても、小笠原のバッティングはやはりどこかおかしい。
年齢も、当然、野球選手としては晩年で、全盛期と比べればピークは過ぎているのかもしれない。
しかし、彼の技術と精神力をもってして、たとえば昨年引退したタイガースの金本であったり、
いまだ現役のドラゴンズ・山崎武司、山本昌であったり、
今回のWBCに選ばれたファイターズ稲葉にしても、皆、小笠原より年上である。
この辺りまで来れば一歳、二歳の歳の差など比較にはならないだろうけれど、
それまでの成績はもとより、野球選手としての力量からしても、
小笠原だけが突然、急に老け込んで衰退してゆくなんて、やはり釈然としない。
そう、小笠原の低迷は、あまりにも突然すぎるし、彼のレベルからすると、あまりにも長すぎる。
だから、不安が募る。


確か昨年だったと思うが、原監督が何かのインタビューで、
「今の強いジャイアンツを築いたのは、間違いなく小笠原とラミレスの力」と語っていたことがある。
その通りだと思う。
何年か前、このブログでも、何度か小笠原とラミレスを称える記事を書いた。
彼らの存在が、ジャイアンツを変えたと言っても、決して大げさではない。
当時、よくラミレスが、小笠原に対し、敬意の言葉を述べていたことを思い出す。
今の、強いジャイアンツを築いてくれた大きな礎、とも言える。
原監督をして「巨人軍の宝」と言わしめる生え抜きの高橋由伸とはまた違う意味で、
小笠原もジャイアンツの至宝である。
FAで移籍してきた過去の大物選手らとは成績にしても貢献度にしても比較にならないくらいの存在感である。

とはいっても、結果がすべての世界。
打たないことにはどうにもならない。

それにしても、どうにも合点がいかない小笠原の状態。
何か、おかしい。何が、おかしいのか。
実は、どこかに重大な故障を隠しているのではないか、と、深読みさえしてしまう。
このまま終息してしまうというパターンも、
野球界ではよくある流れだが、小笠原に限って、そうあって欲しくない。
強く、そう思う。
どうにか修復できないものか。
このままでは、どうも腑に落ちない。



ジャイアンツ、充実の投手陣をバランス良く配置できるか。

2013-03-24 23:01:44 | 2013年シーズン

ジャイアンツの開幕ローテーションが決ったようだ。
29日からの広島との開幕3連戦。
開幕投手はオープン戦で結果を残し続けている宮國。
第2戦はホールトン。そして3戦目にはルーキーの菅野が大方の予想だ。
そのあとの4月2日からのDeNA戦に入り、
内海、沢村、杉内の表のローテーション3枚が投入されるとの見方である。
個人的な願望で言えば、オープン戦最終戦の今日、楽天戦で打たれたホールトンより、
高木京がローテーションに入り、右3枚、左3枚が理想的。
まあ、ホールトンも実力者だから始まればキッチリと仕事をするだろうが。


救援陣の争いは熾烈なままオープン戦を終えた。開幕時には7人の救援投手が登録予定らしい。
先発転向で注目だった高木京についてはリリーフに戻ることが確定。
WBCカナダ代表から戻ってきたマシソンが安定した投球を続け、
外国人枠の関係でどうやらマシソンと新外国人アコスタのいずれかが2軍スタートになるのではとの予測から、
オープニングはアコスタの2軍スタートが濃厚。
そうなると山口、守護神の西村、高木京、マシソンの4人は当確。
昨季中継ぎで8勝を上げた福田も間違いなさそうだったが、ここ2試合打たれているので当確とまではいかないか。
こうなると残り3枠を福田、小山、香月、笠原、今村、江柄子、一岡あたりでで争うことになる。

小山はオープン戦数試合に先発し、どうにか踏みとどまっていたが、
最後の試合で結果を残せず先発枠から脱落、とりあえずリリーフにまわるが、
長身から投げ下ろすストレートと落差のあるフォークは健在で、首脳陣はおそらく先発で使いたいだろうから、
谷間か、あるいは先発ローテーションのうちの誰かにアクシデントがあった場合、
一番手候補として小山が上がってくるはずだ。

今季の笠原は、ようやく、一味違う。球の威力、ノビが明らかに違う。
そして変化球も昨年までより、決るようになった。
投球フォームや球の質などから、今季オリックスに移籍した東野を髣髴する。
やはり笠原も本来は先発タイプの投手だろうから、小山と谷間を争うことになるのだろう。
ただ小山もそうだが、試合によってまだムラが目立つ。とくに笠原はイニングでムラが出る。
チェンジアップ、カーブ、ストレートともいいところに決るイニングと、
まったく決らなくなるイニングがひと試合の中で突然訪れる。
しかしそれでも今季は成長の度合いが違う。
中継ぎよりは、小山同様、やはり先発で投げさせたいタイプだ。

オープン戦で短いイニングを投げる江柄子を何度か見たが、
ストレートにキレがあった。もう少しスピードが増せばかなり面白い存在になるだろう。
彼は先発でも中継ぎでもどちらでもいけそうな感じがする。
中継ぎと捉えると、先にあげた小山、笠原より、
江柄子のほうが連投がきいてタフな感じがするからタイプかもしれない。
しかし江柄子も試合によってけっこうムラがある。
今季の小山、笠原の成長と比べると、江柄子の場合は球筋の良さ以上にムラのほうが目立った気がする。
昨年、ファームでセーブ王に輝いた一岡もそう。彼もオープン戦、ムラが目立った。
140キロ台後半の速球を武器に、落差のあるフォークは腕が振れているときはかなり有効なのだが、
カウントによって精度に差が出る。
オープン戦で登板した際、解説者もその辺りを指摘していた。


一岡、江柄子、田原誠の2年目同期の争いの中にあって、
同じく同期の高木京は昨年の実績が証明するようにアタマひとつ以上、抜け出している。
リリーフに戻ることが決ってからも2試合、先発で投げているが、2試合とも無失点。
四死球の多かったことを反省して、本人はまだまだ先発は無理と自虐的に述べているが、
先日先発したオープン戦で解説を勤めていた水谷氏は高木京を絶賛。
リリーフにしておくのはもったいない、先発なら二桁は必ず勝てる、と太鼓判を押した。
たしかに先にあげた1軍生き残りのかかった投手らと高木京には大きな違いを感じる。
それは悪いなりにもどうにかゲームを作れるという修正力だろうか。
一方、先日のライオンズとのオープン戦で途中からマウンドに上がった江柄子は、
まったくコントロールに修正がきかず、高めに浮いたストレートを連打され、失点を重ねた。
宮國、菅野の二人の優れた点のひとつにも、この修正力が上げられるだろうか。

今季、オリックスから移籍してきた10年目の香月。
あまり見ていないからなんとも言えないが、安定感のありそうな投手だ。
中継ぎとしての実績は申し分ないらしいから、シーズン中のどこかのタイミングで必ず上がってくるのだろう。

そして楽しみな存在といえるのが、2年目の今村だ。
オープン戦で結果を残し続けた。
熾烈な開幕1軍メンバーに滑り込むのは難しいだろうが、
オープン戦最後まで結果を残し続けたのはきっと次に繫がる。
派手な活躍ではないが、18歳(もう19歳になったにか)らしからぬ投球術で昨年、
ファームでノーヒットノーランをやってのけたのも伊達ではない。
落差の大きい変化球は緩急があって完成度も高い。
身体がまだ十分ではないから速球の速度はまだまだ上がるだろう。
何度かオープン戦で投げるのを見ているが、投げるたびに力をつけているような成長を感じる。
こういうのはとても大事で、短い期間でグングン力をつけて伸びるタイプは一流選手になる要素を秘めている。
若いうちから出てくる選手は短い期間にどんどん成長してどんどん上へ昇ってゆく。
まだそこまでいっているかはわからないが、可能性は充分にある。
技巧派に磨きがかかれば同期の松本竜とともに楽しみな存在になる。

安定感の出てきた先発タイプの小山、笠原を、上が詰まっているからリリーフにまわすというのも、
ある意味、難しい判断だろう。
とはいえ、オープン戦の結果に関んしては、江柄子、一岡らに比べれば、明らかに先の二人のほうが結果を残している。
タイプ別にバランスを考えると、似たタイプばかり連ねても、ということもある。
そうなると2年目組の田原誠も存在感を発揮する。

先発、中継ぎと、シーズンを通してずっと安定した布陣でいられることなど、そうはない。
ケガ人、不調、そんな穴を埋める層の厚さがチームの力。
ケガから復帰した久保、越智。待ったなしの野間口、小野、辻内。
手術明けで育成から上を狙う星野の存在も気になる。
その育成には今季キャンプで川口投手総合コーチが絶賛した土田という投手もいる。
昨日、ファームで松本竜、今村と同期の育成・森も力強いピッチングでファーム初勝利をあげた。

個々の実力は例年以上に抱負だろう。
ただそれだけに、どうバランスを敷くかが難しい。
どんな布陣で今季、開幕を迎えるか。
投手陣の配置のバランスを、今季、注目して見て行きたい。


13WBC~あの場面こそ”侍”が見たかった。

2013-03-20 19:22:32 | WBC/五輪

勝てない相手ではなかった気がするし、
打てない投手ではなかった気もする。
世界を勝ち上がってきた強豪チームとの対戦だから、
東京ドームでのオランダ戦のように余裕の試合運びとは当然いかないにしても、
少しチグハグな、ギコチナイ、なんとなく硬さが目だった侍ジャパンだった。

表情も、動きも、皆、見ていて硬く感じた。
もちろんそれは相手のプエルトリコにも言えることなのかもしれない。
敗戦後のインタビュー記事の中に東尾投手総合コーチのこんなコメントがあった。
試合開始のメンバー表の交換をホームベース上で行う主審を交えた監督同士のやり取りに、
ルール説明なども加わって3分以上の時間がかかり、
その間、ピッチャーはキャッチャー相手に投げることが許されておらず、
マウンド横に立つ前田健太はあの寒さの中でしきりに身体を動かし、
野手陣とキャッチボールをしてしのいでいた、というのである。

そう、決勝ラウンドの会場となったAT&Tパーク、
米サンフランシスコは夜には10℃以下に冷え込む寒さ。
それまでは気温30℃以上のアリゾナで強化試合を含む合宿に望んでいた日本チーム。
文字通り身体が硬くなるのも無理はない。
東尾投手総合コーチが言うように、選手のコンディショニングが難しかった、は正直な感想だろう。
それがすべてではないし、言い訳になるようなことではないが、
短い期間で長距離を移動しなければならない国際試合の難しさだろう。
それにしてもこの気温差、分かっていただろうに。
なぜアリゾナで強化合宿だったのだろう。
どうせ強化試合を組むのならサンフランシスコのチームというわけにはいかなかったのか。
アリゾナが暖かく、サンフランシスコが寒いから、合宿はアリゾナで、ということなのだろうか。
誰が決めたスケジュールなのだろう。気になる。

試合後、すぐさま、あちこちで敗因の検証が行われており、
その多くは8回裏の例のダブルスチール失敗を取り上げていて、
2塁ランナーの井端、1塁ランナーの内川、ベンチの采配と、ミスの所在を探っている。
翌日の新聞でもこの場面を取り上げる記事が多く、
その中で紙面に多く躍っていた”グリーン・ライト”という言葉。
ベンチが盗塁を各自の判断に任せ「行けたら行っていい」という“グリーンライト”というサイン。

試合の前半から、おそらく日本は”ワンチャンス”だろう、と思って見ていた。
結果的には、相手のプエルトリコのセンターを守る選手が二度もプレゼントをくれて、
しかもバッターは4番の阿部という絶好の機会がツーチャンスはあったのだが、
この日、阿部は3度のチャンスでことごとく打てなかった。
4番が打てなければ勝てない。4番が打てなければ仕方ない。
そんな言い方をよくするがまさにその通りの結果に終わったわけである。

チャンスで打てなかった阿部にしても、
ダブルスチールのグリーンライトで”ミス扱い”の矢面に立たされた内川や井端にしても、
緊張感の中でどうにかしようとする闘争本能の中から起こる結果である。
ミスをより多くしたほうが負け、は、どのスポーツにもいえること。
ただ、あの場面、そういうどちらともつかないようなあいまいな指示ともとれるサインを出したのは、
まぎれもなくベンチである。
8回裏3点差で、相手にもらったミスから1点追い上げ、
さらにヒットが続いて押せ押せの場面。
ワンアウトランナー1、2塁でバッターは4番打者の場面。
負けたら終わりのトーナメント準決勝、なかなか点の取れない国際試合の大詰めでのあの場面。
1次ラウンドの台湾戦でのやはり大詰め、待ったなしの局面での鳥谷の盗塁。
あの成功はその後の日本チームの勢いの源流になったことは間違いないだろう。
しかし、あの状況とは、明らかにおかれた状況が違う。
データに基づいた行為、であることをその試合後、
鳥谷と1塁ベース上で会話を交わしていた緒方走塁コーチが明かしている。
橋上戦略コーチは、プエルトリコ戦での8回裏のあの場面を次のように振り返った。

「投手はロメロ。投げ始めから捕手に球が届くまで1・8~1・9秒というデータがあった。
三盗の目安は1・6秒。100%走れる。まず1球見て、タイムもモーションも確認できた」
 ――結果は失敗だった。
 「強化試合のときに重盗の注意事項を確認した。一塁走者は、スタートが遅れたら付いていかない。
二塁走者はスタートの偽装をしない。それが徹底できなかった」

こういった国際試合が開催される場合、
野球でよく言われるのが代表チームの選手選定と召集の時期についてだ。
サッカーと違い、国際試合がそう頻繁に行われるわけではないし、
プロによる国際試合自体、歴史が浅いから、適切な段取り自体が確立されていないままでいる。
いくらプロの集団とはいえ、団体競技である。
不慣れなチームで、さらに高度な戦略をこなさなければならないとなれば、
やはりそれなりの心構えと準備が必要であることは以前から言われていることだ。

大会前、何かのスポーツニュース番組で、江本猛氏が今大会を分析しながら、
優勝候補筆頭は日本に決っている、2連覇しているのだ、
日本のレベルは世界でもトップレベル、と力説していた。
別に異存はない。
そう、日本野球は世界のトップレベル。
でも、その世界のトップレベルの数チームが勝ち上がり闘うのが世界大会の決勝ラウンド。
そう、だから勝敗は、紙一重、なのだ。
ミスを多くしたほうが負ける、ミスの少ないほうが勝つ、と、よく言う所以であろう。

あの8回裏の場面、もしもあのダブルスチールが決っていたら、
あの台湾戦のときのように、その後に大きなドラマが待っていたかもしれない。
それもよく言う”たら・れば”であるからあまり意味のない考察ではある。
ただ、見る側の感想として、あの場面、国際大会、WBC準決勝、3対1、プエルトリコのリード、
8回裏の大詰め、日本が1点とって、なおもワンアウト1,2塁のチャンスでバッターは4番阿部。
そこはやはり、そこまで打ちあぐねていた阿部であったとしても、イチかバチかの大勝負ではなしに、
もっと、どっしりと構えて、さあ来い!勝負!といった名場面をお膳立てして欲しかった。
その結果がダメであっても、誰もが納得のいく、勝負の醍醐味を味わえるような、
そんな大きな場面だったような気がする。
なかなか打てずに点が取れていないから何か策を興ずるのはベンチとしては当然の采配であろうが、
あそこは、あの局面は、ドッシリと落ち着き払った4番打者、が見たかった。
投手対打者、一対一の大勝負に酔いたかった。そんな演出を期待していた。


慌てふためくことなく、静かに、そっと刀を抜くように…、
”侍”と称するならば、まさにあのシーンこそが、それにふさわしい場面ではなかった。

「刀を置く」とコメントした阿部の言葉が象徴的だった。

成功していれば、データに基づいた頭脳的戦略、今回のこの結果であれば、やはりあの場面、
少々、山師的な采配ととられても仕方ないか。


そして、何度か書いた投手のコントロールについて。
それまで安定した投球を保ち続けていた能見が、
最後の最後にコントロールが甘くなった。
回をまたいで制球がやや定まらなくなった能見。
高めにいった速球をヒットされ、
次の打者へは高めに浮いた変化球をドンピッシャリでレフトスタンドまで持っていかれた。
主審によるストライクゾーンのバラつきはもう国際大会では仕方のないこと。
ただ甘い球は甘い球。高めにいけば力のある外国人選手は軽々とスタンドまで運ぶ。
持ち味である攻守にわたる緻密さ。これを欠いては優位な立場を築けないだろう。

代表監督の選定やコーチ陣、代表選手の候補絞りなど、さまざまな意見が言われた今大会。
メジャー組がひとりも参加しないことを不安視する意見も多かったが、それには少し異論がある。
確かにイチローの存在は大きいだろう。
ただ前大会、そのイチローをもってしても後半の後半までまったく機能せず、
苦しむ彼の姿は苦戦続きの前大会の象徴とも言えた。
それが国際大会なのだろうということを我々はイチローの苦悩の表情から実感した。
ダルビッシュ、松坂、中島、川崎など、存在感のある選手の不在は残念であることに違いはないが、
だからといってそれら選手より国内組みの選手らの力が劣っているのかといえば、
決してそんなことはないと言いたい。
あたかも国内選手のトップレベルから順にメジャーへ行くような風評があるように感じるが、
当然、そうではないことは言うまでもない。
年齢やタイミング、契約や価値観など、選手の立場や志向は当然、さまざまである。
国内組みだけでも、前回、前々回に劣らない力は充分にあるはずだ。

ただ、戦前、稲葉がインタビューで語っていた前回までのチーム内におけるイチローの存在感と、
彼の野球に対するモチベーション。
そのイチローが敬う王・前々監督。
「原監督は野球界でも数少ない尊敬すべき人」とイチローが敬意を表する原・前監督の野球に対する真摯な態度。
CS放送で解説をしていた仁志氏が指摘した前回までいた川崎のようなムードメーカーの不在。
各選手のチームに対する忠誠。
もちろん、今大会の選手たちだって結束は固かったろうし、まとまりもあったはずだと想像する。
山本監督をはじめとする首脳陣にだけ問題があったとは言わない。

帰国後の共同記者会見で例の場面なども含め「まったく悔いはない」と清清しく語る山本監督。
とはいってもこれだけの大きな大会である。何の検証もなしに潔く終結という訳にもいかない。
いずれにしても、代表チーム、国際大会は難しく、気をつかって準備を進めてゆく必要がある、それは間違いない。

やや、ふわっとしたまま終わってしまった準決勝。やられた感も薄い。
決勝戦を闘えなかったのは見ている側としても残念だった。


13WBC~4強出揃い、いよいよ決戦。

2013-03-18 00:21:26 | WBC/五輪

準決勝進出4強が出揃い、日本の相手はプエルトリコに決った。
中南米諸国の他国代表にたがわず、プエルトリコもメジャー、マイナーの選手らで構成され、
アメリカ代表を破って勝ち上がってきた強豪国であることにかわりない。

日本、プエルトリコ、ドミニカ共和国、
オランダ。過去にないこの4強。
前会、前々会のときも書いたことだが、
もっといろいろな国と予選から闘えると楽しみも増すし、
大会の幅も広がると指摘してきた。
さまざまな事情があるから簡単ではないことはわかっているが、
見る側からすると、せっかく普段、闘う機会のない国が参加し合っているのに、
決勝ラウンドまで進まないと交われない国がけっこうあって、闘う相手はいつも同じ。
韓国、キューバ、アメリカ、前大会など、何度韓国とやるのかというくらい、
これも書いた言葉だが、世界大会というよりは、なんだか日本対韓国の対抗戦の雰囲気だった。
地域を勝ち上がって進んでゆくのは不自然なことではないが、
組み合わせはあいかわらずアメリカ主体でややガッカリな部分も否めない。
しかし今回、決勝まで進んで、ようやくドミニカ、プエルトリコなどとの対戦が実現する。
もちろんドミニカとはプエルトリコに勝たない限り対戦はないのだが、楽しみは広がる。

プエルトリコとの準決勝戦を控え、日本の主将・阿部のコメント、「力では勝てない選手がそろっている」。
時間が時間だけに生で観戦出来ないのが残念でならないが、凄いことになるか、凄いことになって欲しい、
そんなワクワクするような試合展開を期待したい。

とにかく、3連覇云々よりも、勝ち負けよりも、この2カ国との対戦を純粋に楽しみたい。
オランダに失礼だが、どうにかプエルトリコに勝って、ドミニカとやりたい。
プエルトリコもそうだが、なんか、ドミニカって、さらに凄そうだ。

寺内と藤村、さらに脇谷~失策が多い理由。

2013-03-17 18:23:20 | 2013年シーズン

先日、藤村が二軍に落ちた。
ケガから復帰の脇谷は打撃が好調だ。
寺内はここまでのオープン戦、
とくに目立った活躍はないようだが、
相変わらずの存在感は発揮している。
年間を通し、必ずどこかのポイントで大きな働きを見せるベテラン古城の存在は、
彼ら三人とはやや一線を画している感があるので、
先にあげた三人との比較は、若干、意味合いが違ってくるだろう。

セカンド争いが激化している今季のジャイアンツ。
ここまで有力候補の三人も三者三様の持ち味を出し、
甲乙つけがたい、あるいは決め手に欠ける、そんなしのぎ合いが続く中で、
藤村が二軍に落ちた今、実質的なセカンドレギュラー争いは脇谷と寺内の一騎打ちになったといっていい。

そんな中、紅白戦、オープン戦と見たきた中で、三人に共通している点がある。
失策の多さである。

セカンドの藤村、脇谷。
坂本が不在でショートを守ることの多い寺内。
先だってまで1軍に帯同していたルーキーの大累も含め、
簡単なゴロを引っ切り無しに弾く。
ここではひとまず大累は置いておくが、
ここまで三人のエラーする場面を何度も目にしている。

今季、脇谷はケガからの復帰という例年とは異なった状況にあるが、
とくに藤村と寺内のふたりが昨年のオフからある人物の存在を揃って口にするようになった。
川相ヘッドコーチだ。

昨年の二軍監督から今季、一軍のヘッドコーチに就任した川相昌弘。
執筆人も川相のヘッド就任は今季の目玉のひとつにあげたいほど、本当に楽しみな人事といえる。
川相昌弘といえば、犠打の世界記録を持つ、堅実な守備とシュアなバッティングが光る、
ジャイアンツの一時代を担った名選手のひとりであることは間違いない。

第一次原政権のとき、川相引退と共に1軍の守備コーチ就任か何かへの就任が決りかけていたようだったが、
原監督の電撃解任とともに、川相のポジションは2軍コーチに鞍替えされ、
これに不信感を持った川相は一転、引退を覆し、ドラゴンズへの移籍という驚きの事態へと発展した。

それから数年、ようやくジャイアンツへ戻ってきた川相氏。
2軍監督という配置は彼の選手時代の特徴を考えればこのうえない適所といえただろう。
その川相2軍監督が今季から1軍のヘッドに就任となれば、いの一番に期待のかかるのが、
昨シーズン、失敗の目立った犠打の成功率を上げることと、守備力の強化であることは言うまでもなしだ。
そこで名前の挙がるのが藤村であり、寺内、さらにはドラ2ルーキーの大累といえよう。

とくに藤村への首脳陣の期待の大きさは、彼への評価の厳しさからも伺える。
原監督は大田同様、ことごとく藤村の名前をあげて鼓舞し続ける。
盗塁王を獲った走力と身体の能力の高さ、その若さと勢いで、
坂本のように一気にレギュラーを獲って欲しい選手の一人であったに違いない。
だからこそ求めるものも高くなる。
それにしても今ひとつ突き出ない藤村のもどかしさは、
大田へのもどかしさにも通ずるところだ。


「寺内、まるで井端!2の2&好守で二塁争いリード」。
数日前のスポーツ報知の記事である。
セカンドで先発出場した寺内は攻守にわたって活躍。
試合後、原監督から「寺内が非常に存在感を見せている。特に攻撃で、いいものを出している。
(二塁の定位置へ)一歩抜けているんじゃないかな」と高い評価を受けた。
ここまで、坂本不在でショートを守ることの多かった寺内だが、
この日、守っていたのがセカンド、というのがミソである。
昨年は自己最多の103試合に出場。
チームの日本一に貢献したが、V旅行は辞退。
「1年間ずっと活躍していたわけでない。自分にはやることがたくさんある」。
11月のアジアシリーズ終了直後から力強い打球を打つことを心がけ、筋力トレーニングを継続。
川相ヘッド就任が決った直後にも、川相ヘッドのもと、バント技術を磨いてレギュラー奪取を口にしていた。


紅白戦からオープン戦にかけて、脇谷同様、打撃は非常に好調な寺内。
オープン戦での打率も脇谷には少し劣るものの打率.300をキープしている。
今日のロッテとのオープン戦までの成績でいえば、
この試合1ホーマーを含む2安打で脇谷が.348の高打率。
寺内は今日、ヒットこそ出ていないが打率.304を維持している。

しかし、この日ショートを守った寺内、ショートゴロを捌き、
そのままセカンドベースを踏んで1塁へ送球、
何の問題もなく6.6.3のダブルプレイ完成の場面だったが、
ゴロを捕球してセカンド脇谷へトスの場面で、
捕球からトスの流れでボールをファンブル。
慌てて拾いそのまま自分でベースを踏んで1塁へ送球、
ダブルプレイは完成したもののランナーの足が速ければちょっと危ないプレイだった。

紅白戦からショート・寺内のエラーはとても目についた。
セカンドではなく、ショートとはいえ、1試合の中で2度のエラー。
さらにエラー直後に危なっかしいプレイを立て続けにした試合もあったように記憶している。
藤村もオープン戦、危なっかしいプレイが続いた。
捕球し損ねたり後逸したり、昨年よりぎこちないプレイを目立った。
昨日のファームでの開幕戦をCS放送で見たが、
前半の回でなんでもないセカンドごろを弾き、エラーで走者を許した。
その回、もう一度、セカンドゴロを捌いたが、
解説の篠塚氏が「なんかおっかなびっくりオドオドとボールを捕りにいっている」と指摘するほど、
ぎこちない捕球の仕方だった。
脇谷にしても、やはり紅白戦からオープン戦にかけて、
何度かセカンドでボールを後逸している場面を目にした。

普段、セカンド、サードを守ることの多い寺内。
ショートはやや不慣れとはいえ、もともと好守が大きな持ち味である。
昨年から守備力も課題の一つだった藤村。脇谷も元々、とくに守備力が高い選手というわけでもない。
それにしてもこの内野の三人、そろって今季、オープン戦のここまで、エラーが異常に目立つ。
なぜだろう。


川相ヘッドの就任で、とくに彼ら内野手の守備力アップには期待がかかる。
今キャンプで、川相ヘッドから直接、守備の指導を受けた藤村の感想で、
藤村がとても高度でためになったといったニュアンスのコメントをしていたのを思い出した。
昨年のオフに坂本がヤクルトの宮本に弟子入りし、守備力を磨いた際、
坂本が藤村にも宮本から学んだ「意識の高さ」を注入、という記事も同時に思い出す。

好守の宮本。守備への意識の高さは今さら言うまでもない。
川相ヘッドも然りである。
さらに川相ヘッドは一昨年までドラゴンズで井端、荒木の高度な二遊間を目の当たりにしてきた。
ちなみに荒木は藤村の高校(熊本工業)の先輩で、
このオフの自主トレでは藤村が荒木に合同トレを申し込んで弟子入りした。
この一年、二年で、藤村は守備の超一流といわれる人たちから助言を受け、プレイそのものも学んだ。
寺内も昨年、坂本同様、ヤクルト宮本塾で守備力を意識した自主トレを行っている。


守備の達人から直接学んでいるにもかかわらずこの状況はどう理解すればいいか。
多少の試行錯誤の形跡ならば、わざわざ取り上げはしないが、尋常じゃなく目につく失策の数。
藤村が言うように、やはり達人の極意はかなり”高度”なのか。
坂本が口にするように、やはり達人の意識はかなり”高み”なのか。

とはいえ、一昨年、坂本が宮本塾後、すぐに効果が現れていたかといえば、そういうことなわけで、
ただ公式戦が始まるにつれ、坂本の守備が確実に安定していったのも事実である。
藤村、寺内も、今、取り組んでいるものがまだ自分のモノになっていないだけで、
それを今の段階でとやかく言うのは勇み足なのかもしれない。

いずれにしても、間近で高度な野球を直接、体感できるのは幸運なことだ。
すべての若手選手がそうとは限らない。
どうにかモノにしてレベルの高い競争を見せて欲しい。


13WBC~やはり、勝機は投手の緻密なコントロールにある。

2013-03-16 23:59:59 | WBC/五輪

日本チームが二次予選を一位で通過しアメリカでの準決勝進出を果たした。
前回のブログでふれた二次予選2勝目をかけたオランダ戦における投手のコントロールについて、
一位通過を決めたオランダとの一戦でも、やはり、
投手のコントロールが勝敗の行方を左右する大きな決め手となった局面が試合後半の随所で見られたので、
また取り上げてみたい。

日本は先発の大隣が初回にホームランを浴びて1点を失ったものの、
その後のリリーバーが後半まできっちりとオランダ打線を抑えていた。
4回の沢村はヒット一本。5回の田中は無安打2三振。6回の今村は1四球の1三振。
3投手とも球を低めの集め、ノビのある速球でオランダ打線を封じ込めた。
審判が際どいコースでを取ってくれなくても、辛抱強く、丁寧にコースを攻めた。
阿部の1イニング2ホーマーなどを含む打線の繫がりで、日本が2回に8点を奪い、
中盤までは完全に日本のペースで試合は続いていた。
しかし、7回からマウンドに上がったリリーバーの投球が流れを変えてしまった。
それがコントロールの甘さだった。
前回、コールド勝ちしたオランダ相手に、この試合も前半で7点もの差をつけ、
2回以降、やや攻撃に雑味が出ていたのが徐々に守りのリズムを狂わせていったのではないかと解説者は指摘した。

もちろん、なめていたわけではないだろう。
強力なオランダ打線である。前の試合同様 、打線に勢いがついたらやはり怖い。
それがわかっていたからだろうか、それまでの試合であまり投げる機会がなかったからか、
森福も山口もマウンドに上がった時点で顔を少しこわばって見えた。
その結果、コントロールが定まらず、両投手とも四球がからんで連打を浴び、ともに2失点。
打たれた球はみな高く甘かった。
その後の涌井も失点こそしなかったものの2本のヒットを打たれ、これも球が高かった。

結局、9回を締めた牧田もふたつ三振を奪って抑えたとはいえヒットを2本浴びた。
牧田の場合は内野安打ともう一本は打ったほうがうまかったのかもしれない。

後半、8対5と3点差まで詰め寄られ、その裏、長野の2点タイムリーで再び5点差をつけたが、
この後のアメリカでの戦いを考えると、相手投手のレベルは当然、上がってくる。
オランダ戦のような大量得点はまず考えにくい。
その前の台湾戦やキューバとの戦いのようにギリギリの展開か、
あるいは追いかける流れも当然、想定内だろう。
そうなると、やはり日本の野球の真髄、守りの野球。
粘り強い、辛抱強い、丁寧な野球。
これを貫かなくては勝機は見えてこない。

とにかく、投手が丁寧に、粘り強く、低め低めにボールを集める。
当たり前だが獲った点数以上の得点を与えない、これに尽きる。

この大会、安定している前田健太。
ストレートもキレ、変化球もギリギリのコースに決っている。
田中は決勝まで行けば先発で投げるだろう。
徐々に本来の投球に戻りつつあるのか。
いずれにしても、力だけで抑えられるような相手ではないから、
先発ピッチャーの調子しだいで早め早めの交代が必要になってくるのだろう。
能見、杉内をどの段階で投入するかもカギになる。


13WBC~丁寧なコントロールが勝敗を分ける。

2013-03-11 01:23:46 | WBC/五輪

思いもよらず一方的な試合となった日本対オランダの一戦だが、
まかり間違えば真逆の展開もありえた、
そんな恐ろしさを垣間見た試合だった。

台湾戦から際立つ鳥谷の活躍。
台湾戦の9回ツーアウトからのスチールにはじまり、
この日1番に座った鳥谷の一発で打線は完全に活気づいた。
国際試合でこんなに打った日本チームを見たのは初めてかもしれない。

その一方でオランダ打線を完全に封じた前田健太の丁寧なピッチングは快投そのものだった。
変化球、ストレートともに良くコントロールされてまったく打たれる隙がなかった。
どんなに豪快な打線であっても丁寧なコントロールと緩急でコースをつけば、
そうは打たれないというお手本のような投球だった。

かたやオランダチームの投手陣は前田健太とは対照的に、皆コントロールがあまかった。
ストレートは高く、変化球も真ん中に集まった。面白いようにボールは外野へ飛んでいった。

しかし前田健太の後を受けマウンドに上がった内海はストレートこそまあまあ走っていたもののコントロールがあまかった。
そうなるとオランダ打線を抑え込むのは難しい。打ち合いになれば分が悪くなるのは判りきっている。
一歩間違えれば逆に16点取られる可能性も充分にあった。

プールCやプールDの試合をCS放送で見たが、
ドミニカやプエルトリコのパワーとスピードはメジャーのスピードそのものだ。
雑な野球をすれば一気にもっていかれるだろう。
しかし、前田健太がオランダ戦で投げたように、
根気強く丁寧な投球を続けてゆけば、そうは打たれまい。
オランダチームと同じようにはいかないまでも、ある程度の青写真はオランダチームが証明してくれた。
その逆も内海が身をもって示してくれたといっていいだろう。

相手のミスを見逃さない野球。
相手に隙を見せない緻密な野球。
他国を上回る根気強い丁寧な野球が、強豪を押さえ込む重要なカギになる。



13WBC~スピードの台湾、パワーのオランダ。

2013-03-06 01:55:09 | WBC/五輪

2次予選進出が決まっている日本とキューバが今日、対決する。
プールBでは韓国が1次予選で敗退、台湾とオランダが共に進出を果たした。

ニュース映像のダイジェストで見た限りでも、今大会の台湾は強い。
投手力、守備力、ともにレベルの高さを感じた。
投げていた投手はスピード、コントロールともにキレがあり、
野手の動きもスピード感に溢れていた。
日本ハムの陽岱鋼が攻守にわたり活躍している。

一方、オランダはヤクルトのバレンティンを4番に据え、
その他の選手もメジャー揃いらしい。
1次予選の試合を、やはりニュース映像のダイジェストで見ていたが、
打撃は長打や短打がうまく絡んで得点能力の高さが目立った。
試合運びやビジュアルでも、もはや南米の強豪国となんら変わりはない。

スピードの台湾、パワーのオランダ。
台湾戦は如何に得点をあげられるか、
オランダ戦は如何に失点を防げるか、
このあたりがカギになるだろうか。
その前に、得点力も守備力もかなりハイレベルなキューバとの闘いがまず先決だが。

前回、日本に完全に押さえ込まれたキューバだったから、
今回はかなり気合が入っているはずだ。
調子が云々、調整がどうだなどと言ってはいられない。
海外組みがいようがいまいがそんなこと闘いに入ったら関係ない。
韓国の敗戦をやはりメジャー組がいないだの、
今回は兵役の免除がないだのと解説する向きもあるようだが、
そんなもの”技と技” ”力と力” ”スピードとスピード”のスポーツの闘いに何の関係もない。
そんなものスポーツの闘いの本質からすれば別の次元の話であって、
対戦相手からすれば言い訳にしかならない話しであり、
スポーツを純粋に楽しむ見る側からすればそんなものどうでもいい話である。

まあともかく、今日のキューバ戦も含め、
2次予選はどの国にとってもかなりハードルの高い、ハイレベルな闘いになりそうだ。


13WBC~力強く、堂々と、大胆に、プロの誇りを持って。

2013-03-03 19:07:07 | WBC/五輪

WBC1次予選がスタートした。
日本の初戦はブラジル。
日本は8回に1点ビハインドから逆転し、勝利を収めた。

3連覇、3連覇と始まる前からマスコミなどは煽るが、
そう簡単にはいくまい。
海外組みは今回、すべて代表を辞退し外れているが、
代表に選ばれた国内選手たちも決して彼らに引けを取らない日本のトップ選手たちであることに違いはない。

それでも、過去2大会、日本に世界一の座を奪われたまま、
黙っているほど世界は甘くないだろう。
まるでお家芸のように語る向きもあるが、
今回の初戦、ブラジルにしても、オランダなどの比較的野球に後進的なイメージの国にしても、
もうすでにほとんどの国でメジャー経験者や、1A、2A、3Aに所属する選手たちが軒並み顔をそろえ、
野球の質に違いこそあれ、どの国も以前ほどの大差はない。
グループAでは、中国がやはり目劣りする感は否めないが、
前々大会、前大会と、回を追うごとにレベルアップしている。
緻密な野球や、辛抱強い野球をする上では、日本が各国に比べてややリードしているかもしれないが、
パワーやスピード、あるいは個々の身体能力やテクニックなど、それぞれの国の持ち味を総合的に比較すれば、
今やどこの野球がダントツとはいえない、世界のレベルは均等化しつつあると言えよう。
その証拠がメジャー各球団の目が世界に向けられ、
今や一流メジャーの多くが世界各国に散らばっていることからも分かる。

そんな中で、執拗に3連覇、3連覇などと煽り立てるのは選手たちを無駄に追い込むだけだ。
壮行試合を含め、初戦のブラジル戦のように、なんとなく重たい試合になるのは当然の流れだ。
過去の二大会やオリンピックでの試合内容を思い返せば、
勝ち負けいずれも紙一重の試合は決して少なくなかったはずである。

もともと世界大会はどんなスポーツでも力が入るものだろうが、
なぜか野球などは妙に重たい雰囲気に常に支配されていて、
それは柔道などにも言えることだが、「勝たなければいけない」といった国全体の自負なのか、
あるいはマスコミの能のない先入観なのか、いつでも硬さばかりが選手たちから目についてしまう。

サッカーと違って、そうそう野球が世界と戦う機会はない。
だからこそ、闘う選手たち、闘うチームは、持っている技術を遺憾なく、大胆に、堂々と、ひけらかして欲しい。
プロなのだから。

先日、ニュースのスポーツコーナーで、
工藤公康氏が山本浩二・日本代表監督にインタビューする中で、
工藤氏が阿部の不調を取り上げ、
「打順を下げて、もう少し楽な場所で打たせてあげたほうがいいのではないか」と質問を向けると、
「なんで?」と山本監督は繰り返した。
工藤氏いわく、何役もこなす阿部は相当なプレッシャーであろうから、ということだったが、
山本監督は「なんで?」と強い口調で言うと、
「彼はプロ。何度も何度も大きなプレッシャーと緊張の中で闘い抜いてきたプロ。
こんなことで押しつぶされるような選手ではない」と苦笑いを浮かべながら諭すような口調で言った。

その通りである。
もちろん、短期決戦であるから、
調子の良い悪いを見極めて体制を組み替えてゆくのは監督・コーチらの重要な仕事であろうが、
そう、彼らは百戦錬磨のプロである。そのプロの中から選ばれた先鋭である。
当然、人間だから緊張もするだろうし硬くもなるだろうし、調子の上下もある。
それでも、多くのプレッシャーの中で生き抜いているプロである。
だから、勝とうが負けようが、堂々と、強い決意と強い表情で闘って欲しい。
緊張感の中で闘い抜く、そんなプロフェッショナルな試合が見たいのだ。

今日、Bグループで韓国がオランダに敗れた。
韓国はWBCで日本以外のチームに敗れたのは初めてらしい。
オランダも必ず世界大会に顔を出すヨーロッパ・ナンバーワンのチームである。
メジャー経験者がいるのかいないのかは分からないが、マイナーで活躍する選手は多いようだ。
昨年だか、何かの大会でキューバを破って優勝したと試合放送中に解説者が言っていた。

世界は、強い。



宮國、菅野、三本柱に劣らない、太くて長い二本の柱。

2013-03-02 17:27:49 | 2013年シーズン

2月23日の土曜日からオープン戦がスタートした。
23日のカープ戦に登板したのが3年目、宮國椋丞。
そして翌24日の楽天戦にはルーキー菅野智之が登板した。

まず、今季最初のオープン戦で先発を飾った宮國。
本人いわく、上と下のバランスが悪く、あまり良い出来ではなかったと全体的にまだまだであることを強調したが、
3回1安打無失点はまずまずの内容といえる。
原監督も「いい感じで、調整はできているのではないでしょうか」と納得の様子。

たしかに球がバラつき球数も多かった。
3回で2四球、いずれの回も共に走者を背負うカタチとなった。
それでも球の質や威力は間違いなく昨年以上に見えた。
相変わらずスライダー、カーブのキレは良く、本人がコメントするほどコントロールが悪かったようにも見えない。
悪いなりにも大崩れしない、もともとの制球の良さに昨季の自信が上積みされて、
投手としての格がワンランク上がった気がする。
また、先月の25日にはキャンプ最多となる210球を投げ込み、課題の体力面も万全の備え。
新球のカットボールにも挑戦するなど、将来を見据えた準備も怠らない。

なによりも、身体が一回り大きくなったことで、すべての面において安定感が増したように見える。
昨年、彼の動きを見ていて、何かとケガが心配になるような、あのほっそりとした姿はもうない。
昨日のオープン戦で147キロを計測していたが、常にそのスピードが保てるようになり、
あのキレのあるもともとのストレートに重みが増したなら、
宮國が意識する沢村の、あの速球にも決して引けを取らないだろう。



そしてもうひとり、ルーキーの菅野智之も楽天とのオープン戦で新人とは思えない質の高い投球を見せつけた。
大学のときに投げていた150キロ中盤から後半のストレートに今後及ぶのかは分からないが、
オープン戦の段階で常に140キロ中盤から後半が計測されていたので充分に期待はできる。

菅野の魅力はそれだけにとどまらない。
多彩な変化球のひとつひとつに質の高さを感じる。
マウンド捌き、投球における”間”、オープン戦で解説していた堀内氏もその能力の高さに驚きを隠さなかった。
とくに1塁ランナーに昨年のパリーグ盗塁王・聖沢を置いた投球では、
快速ランナーを意識した投球術で聖沢を1塁に釘付けにした。
堀内氏が分析したように聖沢があえて走らなかったのかもしれないが、それにしても俊足ランナーを塁に出し、
慌てて投球が乱れるどころか、状況にあった組み立てが冷静にできるあたり、
ルーキーという枠では括れない落ち着き。

内海にしても杉内にしても、今が一番、あぶらの乗った時期ともいえるし、
まだまだ若手に抜かれるような年齢ではない。
沢村に関しては宮國と同じくまだ3年目、菅野とは一つ違いだ。
この3人、とくに先の二人を追い抜くのは容易ではないが、
宮國、菅野、あるいは沢村も含めて、彼らの可能性は内海、杉内をもしのぐ大きさを予感させる。

彼らの背番号が示すように、
今季、宮國にはローテーションの中心を担うような絶対的なエースのポジションを、
菅野には上原以来のルーキーイヤーでの快投を期待したい。
そしてその後の、ジャイアンツを支える太くて長い柱に成長して欲しい。


原監督は昨日、WBC組の3本柱を開幕3連戦には登板させないことを公式に発表した。
順当ならば内海、杉内、沢村(あるいはここにホールトン)が開幕カードで投げていたはず。
この3枠を、宮國、菅野、ホールトン、高木京、小山あたりで争うことになる。
両投手とも、もう何試合かオープン戦で登板することになるのだろう。
その結果を踏まえて、開幕カード、開幕3連戦での先発が決まる。