ブログ、巨人軍。

頑張れ、ジャイアンツ!
頑張れ、日本のプロ野球!

CSを回顧する.1~投打に拠りどころのなかった4試合。

2014-10-26 10:17:49 | 2014年シーズン

あれよあれよという間の4連敗だった。
なんだか切ない幕切れで途方に暮れた。
まったく予期できなかった敗戦ではないけれど、
こんなに足早にシーズンが終わってしまうと、
心の準備がぜんぜん出来ていなかったことを思い知る。
テレビの前で、しばらく呆気にとられたまま座りつくしていた。

いろいろなとこころで敗戦の原因や、
勝敗を分けたポイントなどが検証されている。
1戦目の満塁で片岡に替えた代打セペダは、
決断した側にとっても、観ている側にとっても、
あとに尾を引く大きなポイントになった。
2戦目で澤村が当ててしまった上本への頭部死球も然り。
さらに菅野、大竹、高橋由伸の不在なども一つの要因ではあるだろう。

ただ、4つの負けを思い起こすと、負けた原因を探るまでもなく、
勝てる要因が元々少なかったことを改めて突きつけられるようで、
振り返るのもしんどい。
単に、シーズン通しての個々の成績がそのまましっかりとゲームに反映された、
ただそれだけの、明解なシリーズだったと片づけてしまうのがいちばん手っ取り早いだろうか。

ファイナルステージが始まる前に、原監督は ”慎ましやか打線” と形容したが、
投打にタイトルフォルダーが揃う勇猛なタイガースに対し、
慎ましやかな状態で挑まなければならないジャイアンツに、
果たしてどれだけ勝機があったかと考えると、
打のキーマンがその慎ましやかな象徴の阿部と村田、
投手のキーマンを内海と宣言した時点で、
厳しい戦いを意識した原監督の覚悟が窺い知れる。
”慎ましやか” の ”慎” が、阿部慎之助の ”慎” とかかっているのが、
洒落がきいているのかどうなのか、今となってはそれも空しい。
原監督にとっては、最後まで覚悟のシーズンだったということか。


勝てば儲けものは本来、下から上がってきたチームの思いだろうが、
そもそもジャイアンツのペナント優勝自体にも、
そんな儲けもの的要素がなかったと言えば、勿論、そうとも言い切れない。
今シーズンの個々の成績を見比べると、
ぶっちぎりでタイガースが優勝していてもおかしくない内容なのに、
ジャイアンツがチーム力でそれを凌駕してしまった。

長いペナントレースでの戦いだったから、どうにか乗り切れたのかもしれないが、
短期決戦の上に、さらにいくつかのプラスマイナス要素が乗っかって、
それはもう結果を振り返るまでもなく、
4連勝は明らかにタイガースが強かったという結果の表れだろう。

両チームの、シーズン通しての個々の力の上に、
ジャイアンツは菅野、大竹、高橋由伸とさらにマイナスが加わり、
タイガースは福留と西岡が最後の最後で完全にプラスに転換した。
こう見ると、今シーズンのセントラルリーグは、
開幕カードでのこの福留と西岡の大事故が、
ペナントの行方をある意味左右したと言ってもいいのかもしれない。

その福留と西岡が最後に活躍してCSファイナルの勝利に貢献した。
逆にジャイアンツは4戦目の9回最後の攻撃で、
セペダ、坂本の焼け石のような2連続本塁打のあと、
アンダーソンがヒットで出塁するも、
阿部と村田が凡退してCSファイナルステージに幕を下ろした。
この幕引きも今季を象徴する終わり方だったように思える。

タイガースの強さばかりが目立ったCSファイナルステージだったが、
CS4連敗はジャイアンツの問題であることも疑いようはない。
では一体、この4連敗は何に、何処に端を発していたのだろうか。


レギュラーシーズンを終え、CSファイナルまでの8日間、
ジャイアンツの調整具合を報じるスポーツ紙などの記事からは、
やけに ”非公開練習” という文字が目についた。
短期決戦前にはよくあることなのでさほど気になる記事ではなかったけれど、
見出しは ”報道陣シャットアウト” ”極秘メニュー”
”異例のカーテン” と日増しに緊張感を増し、
最終的には ”厳戒態勢” とまで書かれ出した。
記者がどこまで正確に表現しているかは別にして、
記事を読む限りチーム全体的がピリピリしたムードであったことは間違いなさそうだ。

ジャイアンツは今回、CSへ向けての調整をジャイアンツ球場と東京ドームで行った。
リーグ戦終了からCSまで期間が空く場合、
例年ならその時間は宮崎のフェニックスリーグで実戦練習に費やすのが恒例だ。
しかし、今回はそうでなかった。
東京ドームでBCリーグ選抜と練習試合は行っているものの、
どちらかといえばこの8日間は文字通り ”調整” の時間に企てられた。
それを最も象徴しているのが、報道陣をシャットアウトして行ったという、
原監督による阿部の極秘指導ではなかったか。

要するに、阿部はここにきてまで修正に時間を充てなければならない状態にあり、
それは坂本や村田にしても同じような事態にあったことは言うに及ばない。
さらに、長野を筆頭に故障を抱える選手がいたことも影響していただろう。
実戦で試合勘を維持させることよりも、どうにか一旦、チーム状態をリセットさせ、
少しでも個々の状態を引き上げたいという、
今季のチームがずっと抱え続けた苦悩に最後まで引きずられていた。
これが今年のチームの最大の ”弱味” であることは言うまでもない。
普段どおりの戦い方、ここまでやってきた戦い方、
そういった優勝チームならではの余裕や落ち着きなど一切持たぬまま、
今季のチームはそんな状態でCSファイナルに向かっていかなければならなかった。


ペナント優勝が決まってからも、選手の口から出る言葉に強さはなかった。
まさか優勝できるとは、といったコメントが聞かれるほど、
優勝の手ごたえを実感していた選手は少なかったかもしれない。
リーグ優勝を掴んだにも拘らず、阿部は反省ばかりを口にし、
その表情には悲壮感すら漂っていた。
どうちらかといえば、そういった選手のほうが多かったようにも見えた。

そんな中、CSを控えて言葉の内容に強さがあったのが、
くしくも今季から新戦力となったふたり、井端と片岡だった。
井端はリーグ優勝のときも 「はじめから日本一しか頭にない」 と断言。
CSに向けても、精神的に優位に立って戦うべきと説き、
首位チームであることを意識して強気で立ち向かう姿勢を敢えて言葉した。

レギュラーシーズン最後に来てトップバッターを任されるなど、
調子が上向きだった片岡はその勢いのままに、
「サッと3連勝して日本シリーズに備えたい」 と、
CSファイナルに向けた自信を強い言葉で言い表した。

短期決戦で発揮される勝負強さこそ片岡の真骨頂と、
そんな期待の高い片岡だったはずだ。
1戦目のあの場面は、このときのための片岡獲得だったのかと、
そんな唸るような絶妙なタイミングで片岡に打順が廻ってきた。

左の代打の切り札が不在ということもあっただろう。
シリーズを通してセペダを乗せたいベンチの思惑も解らないではない。
ただ、片岡の足なら、仮に内野ゴロを打ってもセペダよりはゲッツーの可能性は低い。
と、そんな話ではない。
あの場面での片岡は、計ったかのような見事なタイミングだった。

2戦目に片岡がスタメンから外れたのは岩田との相性で理解できるうえ、
逆に相性のいい井端が本塁打を放つなど、入れ替えはうまく機能したように見えた。
ただ3戦目、明らかに足の具合が良くない長野1番も、
メッセンジャーに相性がよく、シーズン最後にトップバッターで調子に乗った片岡1番なら、
こちらも比較的メッセンジャーに相性がいい亀井2番との並びで流れ的にどうだったろうか。

長野は1戦目でゴメスのライト前ヒットを捕球しホームへ返球する際、
ややファンブル気味にグラブの中でボールを握りそこねた。
ワンテンポずれた送球動作の遅れをカバーするように、
しっかり握れてないままホームへ返球し、
送球は高く浮いてホームからも大きく逸れた。
いいボールが返っていてもタイミング的には厳しかったろうから、
このプレイ自体に何ら問題はなかったかもしれないが、
このモタツキ加減は明らかに故障の影響に見えたし、その後も何戦目かで、
やはり同じようにファンブル気味の捕球をして送球の乱れるシーンがあった。
4戦目でレフト線の安打を放った際、
足を引きずるように一塁から二塁へ向かっていた長野の走塁を見ると、
この試合、7番に据えたのは最善だったろうし、それすらも痛々しく見えた。

7番に据わった4戦目こそ2本ヒットが出た長野だったが(4打数2安打)、
トップバッターに座った初戦から3戦目の成績は、
1戦目が4打数1安打(3三振)、
2試合目が4打数無安打、
3試合目も4打数無安打1四球(3三振)。
3戦目の左中間の大飛球ファインプレイも、
プレイへの喝采以上に故障箇所を悪化させていないかとヒヤヒヤした。

故障を抱えていたり、不調の中にいても、
主力選手を信頼する原監督の選手起用も理解は出来るが、
それが裏目に出たりすると、何のために抱えている控え選手なのかと、
ついそこに目がいってしまう。

無駄な ”たら・れば” ではあるけれど、
短期決戦で最も有用なはずの片岡をまったく活かしきれなかったことが、
結果的にこのシリーズを虚しいままで終わらせてしまった象徴ように思えて仕方がない。
4戦目ではその片岡を起用するタイミングすら計れない展開にしてしまった。


ロー・スコアの接戦に持ち込み、ワンチャンスで勝利する勝ち方が、
今季ジャイアンツの象徴のように言われたが、
裏を返せばそれだけ貧打に喘いだシーズンだったということである。
そう、今季は貧打だった。
さほど万全でもなかった投手力もどうにか総体的な力で踏ん張れてはいたが、
勝ち頭が二枚欠けたうえ、勝利の方程式も結局、
簡単には修復出来ない状態にまで壊れていた。
今季、選手とベンチを支えていた ”チーム力” も、
CSでは片鱗すら示せずに終わった。

そもそも、そのチーム力にしても、
チームの中のどこかしら(誰かしら)が拠りどころにならないと力には繫がらない。
長いレギュラーシーズンでは要所で持ち回りも利いたろうが、
短い短期決戦ではそうもいかない。
現状でそんな拠りどころがいなければ探し出すか作り出す以外にない。
探すまでもなく、片岡はそんなときに最も期待できるピースだったはずだが、
原監督は新たな拠りどころを作り出すことを選択し、
セペダを指名した。
投打に拠りどころがないジャイアンツの中にあって片岡は、
小粒ながらも拠りどころになりうる可能性は高かったはずである。
だが原監督は自軍の現状を見極めて、
大きな拠りどころを作るほうに賭けたのだ。

試合を観に行っていた方々のブログなどを見ていると、
現場にいた人たちでしか知りえないような球場のリアルな雰囲気を知ることが出来る。
さすがに4戦目辺りになると、
ジャイアンツファンからもかなり厳しい野次が選手らに浴びせられていたらしい。



クライマックスシリーズがある以上、
それもプロ野球のひとつの楽しみとして捉えたい気持ちはある。
2位、3位のチームが1位のチームを破って日本シリーズに勝ち上がるという番狂わせも、
このシステムの中ではそれが大きな醍醐味であることも理解はできる。
しかし、今季のパリーグがそうであったように、
3位のチームが2位のチームを打ち砕くまではいいが、
やはり1位のチームは負けてはダメだ。
どんなにもつれても勝たなければいけない。
メジャーリーグのように30チームが2リーグの中でさらにひしめくような、
そんな中でのポストシーズンならまだしも、
日本のプロ野球は12チームが2リーグに分かれての戦いである。
クライマックスがある以上、この戦いは仕方がないし、
そうであれば下位チームが1位のチームを喰うのも面白味なのかもしれないけれど、
それでもやはりペナント優勝チームが負けてはダメだ。

何歩か引いて言うならば、
下位チームが勝ち抜けて讃えられることに勿論、異論はない。
勝負である以上、1位のチームが敗れることもあるだろう。
だからと言って、ペナントを1位で優勝したチームが、
あんなにあっさり負けてしまってはダメである。
敗退するなら、せめてもつれたうえで苦汁をなめて欲しい。

何よりつらいのは選手らであることなど承知の上だが、
あんなにあっさり負けてしまっては、
身も蓋もない。

と、これくらい言わないことには、要は気が収まらないのである。





ジャイアンツ懸案の和製大砲育成。今ドラフトは大きなチャンス。

2014-10-12 23:15:47 | シーズンオフ。

いよいよCSファイナルステージがはじまる。
いよいよと言えば、今年もドラフトが間近に迫った。
今年は不作と言われるが、
目玉選手の故障や不調が相次いでいることで、
より不作が強調されているのかもしれない。

そんな中で今回、もっとも注目されているのが早大の有原航平投手。
ジャイアンツは早くからこの有原を1位指名の最有力候補と公言していたが、
なにもそれはジャイアンツに限ったことではない。
ジャイアンツ以外にも多くの球団が有原1位最有力を早々に打ち出していた。
今年はこの早大・有原が際立っている。

何球団が重複するかと話題になる一方で、
その有原を回避する動きもここに来て出始めている。
有力候補が少ない中での抽選は、クジを外した時のリスクが大きい。
さらに有原がこの秋のリーグ戦を右肘の違和感から回避していることも、
そのムードに拍車をかけたようだ。
ただ、最近の報道では、それも大事には至っていないらしいので、
有原に1位指名が重複することは間違いなさそうである。

この有原の故障報道が象徴するように、
今回のドラフトは注目選手に故障者がいたり、
あるいは不調が長引いて評価を下げているなど、
問題を抱えている選手が多いのも特徴的といえよう。

ファンにとってもドラフトは毎年恒例の楽しみ。
この時期になると、ファンも独自の目線で、
誰がいい、誰が欲しいと好みの選手を見つけ出す。
お目当ての選手を贔屓チームが指名するかどうか、
今年はどんな選手を指名するのか、
誰がどこのチームに指名されるか、
このワクワク感も野球好きにはたまらない。


どの球団が誰を1位で指名するかといった記事も、
すでに各スポーツ紙は独自の予想を立てて見出しを打っている。
そんな中、ジャイアンツが1位指名すると予想されているのは、
早大・有原航平、
盛岡大付高・松本裕樹、
智弁学園・岡本和真の3選手。
この3人がスポーツ紙などでもっとも多く名前が上がっていたように思う。

先に挙げた有原は速球派の投手。
松本は投打に甲子園で活躍したが、
ジャイアンツは投手としてマークしているという見方が一般的のようだ。
そして智弁の岡本は右の長距離砲で、
松本同様、この夏の甲子園を沸かせたひとりである。

有原は1位指名で重複が必至。
松本、岡本も、一本釣りを狙って1位指名する球団はあるだろう。
少なくとも、ハズレ1位で消えるのは間違いない。
さて、そうなるとどうか。
この3選手以外の指名もあるだろうか。
即戦力不足といっても、大学生には名前の通った投手は何人か存在する。
スポーツ紙などで名前が上がる社会人、BCリーグの選手もけっして少なくはない。
調子さえ落としていなければ有力選手はそれなりにいるといった見方もある。

高校生も済美の安楽智大投手が右肘の故障で心配されているが、
彼はこの故障さえなければ有原と重複指名を二分する今回の目玉選手だったろう。
あるいは将来性を見越し、彼の1位指名に出る球団も少なくないかもしれない。
安楽くんは先日、記者の囲み取材で既に肘が万全であることをアピールしており、
これが各球団の判断にどう影響するか。

また今回、高校生の注目選手の何人かはプロへの志望届を提出せず、
大学や社会人に進むといったケースも傾向として多いようだ。
それでも選抜優勝投手の前橋育英・高橋光成など、
話題に上がる選手がいないわけではない。

野球ファンもそれぞれだろうが、どちらかといえば即戦力といわれる大学生や社会人の選手より、
将来性を買われて指名される高校生のほうが物語性があってファンも期待感は大きい。
もちろん一年目から一軍で即戦力として活躍する高卒選手だっているわけだから、
将来性という枠だけで語ることは出来ない。

球団が現在のチーム状況を考えて、どこをどう補強するか。
指名選手をトータルで見れば、各球団のヴジョンも見えてくるだろう。
それを度外視してでも獲りにゆく有望選手というのは何年かの割合で登場するが、
しいて言うならば、それが今回は早大の有原ということになるのかもしれない。


今季のジャイアンツを象徴する百数通りに及んだ打線の組み替えは、
4番打者の度重なる入れ替えと合わせて様々な物議があった。
7月の記事()で書いたように、数年後、
ジャイアンツには生え抜きの長距離打者が不在になる可能性もある。
何もジャイアンツだけに限った話ではないが、
パリーグに比べ、セリーグは若手の和製大砲が現実として少ない。

セリーグは今季、ようやくベイスターズの筒香嘉智が頭角を現した。
スワローズの山田哲人は長距離バッターのイメージではないが、
今季はセリーグ本塁打部門3位の29本塁打を記録した。
この成績は日本人選手ではセリーグトップで、6位筒香の22本を上回っている。
セリーグの若手の主力選手の中では、
どうにかこのふたりが、スラッガーといえる数字を残した。

シーズン後半にきて、ジャイアンツでは大田泰示が久しぶりに躍動した。
これが大きな足がかりになるかどうかは、現段階では何とも言えないだろう。
いずれにしても、村田修一を脅かすような日本人選手の右の大砲が、
今のところジャイアンツに存在していないのが現実である。
大田がそこに納まってくれれば安泰ではあっても、
大田がまだホップであることは原監督でなくても察しがつく。
来季になれば、多少は判断できるかもしれないが、
ここまでの道筋を振り返れば、まだ未知数という判断が賢明か。
それでも後半の大田の活躍が来季への大きな期待にはなったことは確かだ。

先日、当ブログで切望したように()、
これで大田がサードに復活できれば言うことはないのだが、
そこまで言うと未知数も度を越えてしまう。
そこで打ってつけと言えるのが、先に挙げたドラフト1位指名候補、
智弁学園の岡本和真くんだ。
彼が右のスラッガーであることは、
この夏の甲子園でのバッティングで証明されている。
木のバットでも打撃に遜色はないという意見が、
多くのスカウトによる評価である。

岡本くんの本来の守備位置はファーストでも、期待のもてるエピソードがある。
夏の甲子園のテレビ中継の中で、実況アナウンサーが紹介していた話だが、
智弁学園の監督は、彼がプロに進む上で守備位置がファーストでは苦労するだろうと、
早い段階からサードの練習にも取り組ませていたらしい。
プロに入ってすぐは無理でも、ファームで鍛えれば可能性は少なくない。

また、大田が右バッターであることを考えれば、
盛岡大付高の松本裕樹くんも面白い。
彼は右ピッチャーだが、打撃は左打ち。
投手としての評価は今ドラフト全体でも上位クラス。
打者としての評判もなかなかのものがある。
この夏の甲子園での打撃も、リストの柔らかいバッティングは目を引いた。
長打もあるから、仮に投手で開花できなくても、
若いぶん、すぐに野手転向が利きそうだ。

セパを通して、今、ホームランバッターと言われる選手をざっと見渡すと、
高校からプロの世界に入った選手のほうが目立って見える。
日ハム・中田翔、オリックス・T-岡田、西武・中村剛也、
DeNA・筒香、ヤクルト・山田、
ホームランバッターかどうかは別にしても、チーム内で本塁打を多く放っている打者で言えば、
日ハム・陽岱鋼、西武・浅村、ヤクルト・雄平、広島・丸らもそうだ。

こう見ると、高校生の長距離打者の原石がさらに貴重であることが解る。
高校時代、長距離打者と言われても、
プロに入れば多くの選手が中距離打者の扱いになる。
高校時代から明らかにパワーヒッターという選手は、
何れにしても貴重であり、
また、そうそう現れるものでもない。

そういった意味でも、智弁学園の岡本和真くんは間違いなく可能性を秘めている。
今回のドラフトは、ジャイアンツが久しぶりに高校生の長距離打者を1位で指名できる、
いい巡り合せの年ではないだろうか。

ただ執筆人的には、安楽くんがとても気になる。




奥村展征、故障中。

2014-10-11 23:08:55 | ファーム

ここ数週間、ずっと気になっていたことがようやく判明した。
奥村はやはり故障していたのだ。

イースタンリーグ、9月17日のベイスターズ戦以降、
ファームの最終戦まで試合にまったく出場しておらず、
今週から始まった宮崎でのフェニックスリーグのメンバーからも外れていた。

17日のベイスターズ戦は一打席のみでベンチに下がっているから、
あるいはその時に何かアクシデントがあったのかと想像していたが、
どうやらそうではなかったらしい。

奥村の故障を知ったのは、彼の日々の動向を記録しているファンのツイッターにて。
彼の熱心なファンがジャイアンツ球場での練習風景などを写真つきでツイートしている。
女の子のファンや、彼の友人などのリツイートは、目線が近くて妙にリアル。
奥村と絡む他の選手の近況も知れたりして、かなり面白い。
こんなのあるんだなあと覗いてみたら故障のことに触れているツイートが目に入った。

故障したのは9月23日とある。
守備練習の際、左脚に違和感を覚え、
検査の結果、左大腿二頭筋の肉離れが発覚した。

左のハムストリングスといえば最近では亀井がやっている。
同じ箇所かどうかは分からないが、野球選手の故障でもよく聞く箇所だ。
距離走のスタート時や、急な方向転換、急なストップなど、
瞬間的に強い力で筋肉を収縮させるスポーツの動作などでよく起るらしい。
多くのスポーツがそれに当てはまるが、野球もまさにそうだ。

今回のフェニックスリーグ期間中での復帰は厳しそうだが、
すでに軽いランニングやキャッチボール、
トスバッティングなどの練習は始めているようだから、
順調に回復へ向かっていることは間違いなさそう。

今シーズンはファームで86試合に出場し、245打数52安打、打率.212という数字だった。
開幕から数ヶ月はしっかり結果も伴って、非凡なところを見せていた。
打率もチームでトップクラスの成績を維持していたが、
本人がシーズン途中でコメントしていたように、
体力的には相当、キツかったようだ。
後半の失速と、故障の原因は、やはり疲労によるものだろう。

高卒ルーキーの1年目でファーム86試合出場は、
ここ数年では橋本到、大田泰示、中井大介に次ぐ数字。
一年先輩の辻東倫が2年目で目に見えて成長したように、
奥村にとってもこのキツかったルーキーイヤーが2年目以降の糧になることを願う。
来季、一軍に上がってくる奥村の姿を楽しみに待ちたい。
とにかく、大きなケガじゃなくてよかった。


同期で同じ内野手の和田恋も今季、ファームで78試合出場と奥村同様に健闘した。
それでも長距離スラッガーとしての期待が少なからずあった中での打率.200、本塁打1本は、
プロのレベルに跳ね返された感は否めない。

辻東倫も長打力を兼ね備えていると言われた割に1年目は本塁打なし。
2年目で攻守に飛躍を見せても本塁打は3本に留まっている。
いくら高校時代にスラッガーと呼ばれても、一、二年で結果が出るほど、
プロの世界はあまくはないだろう。
ただ、今季、4年目で突然開花したスワローズの山田哲人の例があるように、
まだまだ彼らにも可能性は充分ある。
才能の芽が息吹くかどうかは誰にも分からない。




2014年シーズンの宮國椋丞に胸を撫で下ろす。

2014-10-07 23:25:47 | 2014年シーズン

宮國はストレートが走っていた。
前半は逆球も多く、アマい球もけっこうあったけれど、
そんなこと気にせずに、腕を振っていたように見えた。
ファームでは、そんなことばかり気にしながら投げてたようなシーズンだったはずが、
なんということでしょう。


それにしても、ナイスピッチングだった。
制球がどうのなんて細かいことは、この際どうでもよい。
とにかくいい球がいっていた。
とにかくストレートがキレていた。
とにかく、勝った。
最後の最後で今季初勝利を挙げた。
それだけで今回は充分ではないか。

前田健太のボーク、カープの力み、引き分けでも2位、地元での最終戦、
本来ならそんなことを振り返って綴りたいが、
それどころではなくなってしまった。
シーズン後半に大田が躍動してファンを喜ばせたように、
宮國の最終戦好投もジャイアンツファンにはビッグ・サプライズである。


ゲームが始まる前、ついつい不安なイメージが頭をつく。
今の宮國に菊池、丸、エルドレッド、ロサリオらが抑えられるのか。
初回から捕まってしまうのではないか。
どうにか初回をうまく乗り切ってくれないか。

今季初登板だった4月のベイスターズ戦では初回に2ランを浴びた。
2度目の登板となった8月のベイスターズ戦でも初回から連打を喰らい、
3イニング連続で得点を許した。
そういえば、イースタンリーグ最終戦でも初回に4失点、敗戦投手になっている。
とにかく初回、いいテンポで乗り切って欲しい。
優勝前よりよっぽど力が入る。

ところが、そんな心配をよそに、宮國は初回をスンナリ10球で終わらせた。
先頭の梵を初球シュートゴロに仕留めると、菊池、丸も危なげなく打ち取った。
梵を1球で仕留められたのは助かったろう。

二回には連打と死球で満塁とされ、会沢の犠牲フライで1点を先制されたが、
次の前田健太をしっかり抑え、そこで止めることが出来た。
結果的に失点はその1点のみだった。

前半、アマい球もそこそこあった中で、カープの硬さに助けられたことは否定できない。
とくに4番のエルドレッド以降にその傾向が顕著だった気がする。
最初の打席でエルドレッドにはスライダーをセンター前へ運ばれたが、あれは明らかなボール球。
エルドレッドの腕の長さだから届いたようなもので、当たってもあの打球が精一杯のバッティング。
松山のライト前にしてもけっして鋭い当たりではなく、阿部のグラブの少し先を抜けていったゴロ。
打ち取った2打席目のファーストゴロと当たりは変わらない。
ロサリオは二回にスローカーブで見逃しの三振に倒れた後、
最後までタイミングが合わせ辛そうに見えた。

その辺りをうまく衝いていたのが、丸との勝負ではなかったか。
三回と五回、丸の前で二度、菊池が2ベースで出塁するが、
このとき二度とも丸を四球で歩かせた。
ストライクは取りにいってたので、ハナから勝負を避けていたわけではない。
二度とも丁寧にコースをついた結果の四球である。
しかも丸に対しては他の打者よりもスライダーがコースにきまっていた。

三回の丸への投球は6球のうち5球がスライダーかフォーク。
外と低めを丁寧についた。
唯一投げたストレートは、最後、四球となった内角へのボール球。
五回は投じた5球すべてが変化球。
外のスライダーにフォークは一貫して内角低めのボールゾーン。
フォークのボール球に丸はほとんど乗ってこなかった。

こうして2打席とも勝負にはいってたものの、
丸には決して無理をしないという姿勢がバッテリーから、とくに小林のリードから窺える。
すなわちそれは、4番・エルドレッドとの勝負を意味する。
そしてその思惑どおり、宮國・小林バッテリーは丸を歩かせたあとのエルドレッドを、
2打席連続で三振に切ってとる。

小林はエルドレッドに対して自信を持って攻めていると解説の前田氏は指摘する。
たしかに、内角へのストレートを要求する小林のミットの構えには力強さがあった。
ここに投げてくれという、宮國に対する強いメッセージ。

5回のエルドレッドとの対決の際、二死一、三塁で、
初球のストレートが力んでワンバウンドになった。
2球目のスライダーもワンバウンド気味に外へ逸れた。
すかさずマウンドへ歩み寄った小林は二言三言、宮國に声をかけ、
鼓舞するように、あるいは勝負を促すように、腰の辺りを二度、ポンポンと叩いた。
絶対に打ち取れるという小林の要求に応えるように、
宮國は腕を振って渾身のストレートをエルドレッドの膝元へ投げ込んだ。

そんな大胆さが、いい方向に転がった。
思い切って内角へ投げ込む宮國に、久しぶりの躍動感を見た。
この試合の前の登板、9月28日のイースタン最終戦の投球とは明らかな違いだ。
そのときの宮國は、ここまで試行錯誤している宮國の姿そのものだった。
おそらく、多くのファンが感じている最近の宮國のあの感じ。
見ていて心配になる、見ていてちょっと辛くなる、そんな投球フォームだった。

28日のファーム最終戦のVTRを見返してみたが、
やはりまだそのときは、あのフォームが色濃い。

昨日は腕の振りだけでなく、軸足の溜め、踏み込んだ左足の幅の大きさ、
上半身が回転するときの力感、なんだかアチコチが良く見えた。
この一週間余りの期間で、宮國に何か変化があったのか。
あるいはこの日、宮國に変化をもたらすような何かが起きたのか。

その日の投球の中でもバラつきがあると、以前、宮國本人が言っていたように、
解説の緒方耕一氏も少し前に似たようなことをファーム戦の中継の中で解説していたことがある。
やはりまだ、ひと試合の中でも、しっくりいったり、いかなかったりが繰り返されている。
28日の投球フォームの感じと、昨日のフォームの違いを比べても、
わずか一週間でこの違いであるから、何かが一週間の間で変わったというよりも、
昨日はいいほうの宮國が出たと考えるほうが自然なのかもしれない。

「最後のチャンス。2試合の悔しさを全部ぶつけようと思った。2軍でやってきたことが出せた」。
スポーツ紙などをチェックしても、本人のコメントはこれくらいしか見当たらない。
ただ、覚悟を持っての登板だったことは窺える。

いずれにしても、昨日のような投球フォームが継続できれば、
ある程度の結果は出せる。
多少、制球に難はあっても、
昨日の力強いフォームの方が躍動感があっていい。
この秋から来春にかけての期間で、
課題の制球とどれだけ折り合いをつけられるだろうか。


持ってる球種をまんべんなく投げていたのも昨日の宮國の印象だ。
スライダー、フォークは回を追うごとに低めにきまった。
ストレートが走っていたから、あの100キロに満たないスローカーブも有効だったろう。
小林の強気なリードが一役買ったのも間違いない。
ただ、前田健太に投げ勝ったのは事実であっても、
硬さの目立ったカープ打線に救われたのは明白。

埋めなければいけないウイークポイントと、まだまだ埋められるノビシロの大きさを確信し、
2014年シーズンの宮國椋丞に、ファンはひとまず胸を撫で下ろす。

それにしても、一軍のグラウンドであんな晴れやかな顔をした宮國を見るのは、
本当に久しぶりだ。





小山雄輝、澤村拓一が、今季Gの集大成を飾る。

2014-10-05 23:24:32 | 2014年シーズン

4日の小山、澤村は、事前に二人によるリレー登板が予告されていた。
打ち込まれない限りは、いずれかが4イニング、あるいは5イニング。
ふたりで一試合をまとめ上げるのが理想のカタチだったろう。
そんな思惑通りの完封リレー。
こんなピッチングを見せられると、右のこの二人に、
左の杉内、内海で充分に戦えるような気になってくる。
明日、スライドになった宮國も、余裕を持って見ることが出来る。


そんな小山は落ち着いたマウンド捌きだった。
その落ち着きは、今シーズン手に入れたいくつもの自信によるものだろう。
菅野が抹消された今、ローテーションの中心に据えても差し支えない安定感。
原監督がもっとも安定していると評価するのも頷ける。

ほぼ思ったとおりのところに制球出来ていると解説の江川卓氏が称えたように、
この日の澤村に逆球のようなコントロールミスは見受けられなかった。
両投手とも優に10勝以上はしていそうな風格である。
CSにしても日本シリーズにしても、結果など蓋が開いてみないことには分からないけれど、
納得のできる投手でローテーションが組まれるのなら、説得力はある。
今のこの両投手なら、ファンも腹をくくって勝負を見守ることが出来る。
結果はどうであれ。
そういうことではないだろうか。


3日の内海は、5回までの内海をこの日の内海としよう。
原監督も 「おきゅうが入ったところもあるし、いい形でCSを迎えられると思う」 と、
鼓舞するだけに留めている。
とやかく言ったところで、柱であることに躊躇などないということだ。

だから良かったとこだけを振り返ろう。
とくに初回の投球は、変化球主体でスライダー、フォークが低めにキマり、
そのあとの安定感を暗示するような内容だった。
どの球種も低めで勝負出来ていた中で、
特にこの日はチェンジアップが右バッターには有効にきまった。
5回に奪った3ツの三振も、すべて右バッターから。
皆、チェンジアップに翻弄されていた。

5回を投げ終え、勝ち投手の権利を得たところで3対0。
このまま勝ち星がつけば8勝8敗で勝敗は五分。
あとは次のイニングに規定投球回数、5回1/3がかかっている。
こうして迎えた6回の守り。
あとはご承知の通り。

ストレート系が少し多くなったところで、変化球がやや高めに浮き出した。
筒香には真ん中低めのシュートを完璧に捉えられた。
下半身がまったくブレず、腰の回転でもっていったような、豪快な一発だった。
内海は、この筒香の本塁打を含め詰めのアマさを悔やんだが、
筒香との勝負に関しては、彼の反応が上回っていたということではないか。
それより重たい感じを残したのは、どちからといえば西村のほうだろう。
球速が出ていても捉えられる。
それが今季の西村。


打線は片岡がこのところ上り調子。
一番に座り、プレイがエネルギッシュになった。
スイングも打球も、俄然、パワフルだ。
ロペスも9月の後半から当たりが出てきた。
ここにきて隙が埋まってきいるように見えるので、ポストシーズンが楽しみ。
なんだかノッてきそうな雰囲気はある。


2日、松本哲也が一軍登録された。
その日のスワローズ戦で途中出場、さっそく内野安打、内野の失策で2打席とも出塁した。
この日も9回に代打で登場、四球を選んでいる。

松本哲也は開幕一軍ながら8月に一度、登録抹消。
その後、すぐに再登録されるが、その日の試合で右手の骨折が判明。
シーズン中の復帰は厳しいとの見方がもっぱらで、
ポストシーズンでの復帰が微妙なラインと報道されていたが、
9月の中ごろから練習を再開。9月19日のファームの試合で実戦復帰を果たしていた。
先日のファーム最終戦ではセンターの頭を越えそうな大飛球を、
バックしながらフェンスいっぱいのところでジャンピングキャッチ。
交流戦などで見せたいくつもの好プレイは記憶に新しい。
まさに、今季の守り勝つ野球を象徴する筆頭だろう。

高橋由伸はどうもポストシーズンは厳しいような報道だから、
松本哲也が間に合ったことで足が心配な長野、亀井の負担が軽減できる。
少し気は早いが、仮にジャイアンツが日本シリーズに出場することになれば、
ゲーム終盤、リードした状態なら、広いパシフィックの何処のドーム球場でも、
松本、橋本、大田の快足外野手トリオは安心感がある。


一年間チームを支えてきた菅野の為にもCSを勝ち抜け、
日本シリーズの場を用意して菅野を待ちたいと澤村はコメントした。
確かに、菅野の功績、離脱はともに大きいだろうが、
澤村への期待だってそれに劣らないくらい大きい。
それは小山に対しても同じことが言えるだろう。
両投手の今季の力投を見てきたファンだって腹をくくっている。
何の迷いもなく、この両投手に命運を託すのだ。

きっと彼らが、今季、ジャイアンツが勝ってきた野球の集大成を飾ってくれる。




宮國椋丞、シーズン最終戦登板の緊急事態。

2014-10-03 23:00:31 | 2014年シーズン

5日の最終戦は宮國らしい。
前田健太と澤村の投げ合いを予想していたが、驚いた。
スポーツ紙によると、4日に小山、澤村のリレーが予定されているとある。
小山、澤村を同じ試合で投げさせてまで宮國に先発させる訳は、
やはり菅野抹消との絡みだろうか。
ここにきて、CS、日本シリーズに向けての、単なる宮國テストとは考えづらい。
仮に菅野がポストシーズンまったく投げられないとしても、
今の宮國にその穴埋めをさせるのは無茶な話。
8月7日、久しぶりの一軍先発でベイスターズに3回4失点KOを喰らったときから、
宮國に大きな変化は感じられない。
9月に入ってからのファームでの成績も、けっして良好とはいえない。

9月に入って宮國がイースタンリーグで先発登板したのは3試合。
いずれも敗戦投手になっているが、シーズン前半の頃のような酷い内容ではなくなっている。
先月の28日のイースタン最終戦に先発登板している宮國を少し見ることが出来たが、
結果は3回を投げ4安打4失点という内容。
球が高く浮いたところを叩かれて初回から3ランを打たれるなど4失点。
その後は持ち直すも、解説の緒方耕一氏は、
最近の登板の中でも悪いほうの部類に入るピッチングと厳しい評価だった。
たしかに制球、投球フォームと、課題が改善されているようには見えない。

球が指に掛かったときは140キロ台後半のいいストレートがいくと緒方氏が指摘したように、
時折、キレのあるストレートがいくのは間違いないのだ。
ただ、何度も書いていることだが、今季、ずっと取り組んでいる脱力フォーム、
どうしても躍動感のなさばかりが目についてしまう。
そんなことはないだろうが、脱力したままボールがいってしまってはいまいかと、
ちょっと心配になってしまう投球が、そこそこ混ざって見える。


入団当初の宮國を見て、勝手にダブらせていた投手がいる。
以前、ジャイアンツに在籍していた河原純一だ。
しなやかなフォームからキレのあるボールを投げる宮國を見たとき、
将来的に河原のようなノビのあるストレートを投げるピッチャーになって欲しいと勝手な思いを抱いた。
ゆったりとしたフォームから、投げる瞬間に ”ピッ” とスナップを利かせる、あのしなるような感じ。

宮國は今、ワインドアップで投げているが、河原は当時、ノーワインドアップだったろうか。
投球フォームが似ているとは言わないが、モーションは共通して、しなやか。
河原も宮國のように手足の長い体型をしていた。

河原はいっとき二段モーションで行き詰ったときがあったような記憶がある。
宮國は逆に現在、やや二段モーション気味なフォームで投げる。
これは以前、イースタン中継の中で前出の緒方氏が 「制球を整えるためらしい」 と解説していた。
個人的には、以前の流れるようなフォームの方が美しくて好みだが、
良くなるのであればこの際どちらでもいい。
いずれにしろ、リリースの瞬間に重点を置いているという意味では、
宮國も目指しているところはそこのはず。

ただ、今の宮國を見ていると、はまった溝はけっして浅くないように見える。
今のジャイアンツで、いちばんの心配のタネである。
どうにかして、いいカタチをつかんで欲しい。
どうか、つかんで欲しい。


絶対に負けられないカープ相手に、宮國がどんな投球をするのか。
もちろん楽しみではあるが、それ以上に心配が上回る。
いい投球をしてくれるに越したことはない。

来週から宮崎でフェニックスリーグが始まる中での宮國登板。
今回一軍は宮崎には入らず、東京で調整するとの報道もある。
わざわざ最後の最後で宮國を登板させる理由を考えると、
やはり狙いはポストシーズンを睨んでとしか思えない。
大竹、さらに菅野までポストシーズンが無理となると、内海、杉内、小山、澤村。
たしかにそうなったら厳しい。
ここにあと一人二人、せめて一人、誰が加わるか。
先日、今村はまあまあの投球を披露したが、セドンは厳しい内容だった。
そう考えると、やはり宮國を試しておく必要はありそうか。
まさかこの大詰めの大詰めで、
キューバの ”秘密兵器” のベールを剥ぐような大胆なことはしないだろう。
どうあろうと、この段階での宮國先発登板は緊急事態であることに変わりない。



宮國がイースタンリーグの最終戦に登板した9月28日の楽天イーグルス戦。
宮國のあとを引き継いだのは越智だった。
越智は1奪三振を含め、1回を三者凡退で締めた。
本人のコメントだが、この日は1球もストレートを投げなかった。
初めて試みた配球で、一度、試してみようと臨んだイニングだった。
「まずまずの結果でした。」 コメントの最後で越智はそう締めくくっている。

復帰し立てのときは、ストレートも140キロ台後半を何度か記録していたが、
一度落ちると戻すのは難しいのだろうか。
その後、なかなか球速は戻らず、今季は四苦八苦していたイメージが強い。
新しいスタイルを模索し、一歩踏み出していただけに残念である。
球団は職員としてのポストを用意していたようだが、越智は現役続行の道を選んだらしい。
当時の活躍と、31歳という年齢、難病を克服しての復活過程、
ファンとしてはもう一年くらい様子を見て欲しいと無条件に思うのだが、プロの世界は厳しい。







攻守にチームを引き締めた能見のピッチング。

2014-10-02 23:54:55 | 2014年シーズン

負けたら3位でCS地元開催を逃すタイガース。
カープは仮にこのゲーム落としても、最後のジャイアンツ戦に2位死守の可能性を残している。
それでも当面の敵であるタイガースを直接地元で倒し、カープはそうそうに2位を決めたかったろう。
タイガースは勝利のみ。
カープも残りの一試合など、ハナから頭になかったはず。
ここまでくればお互い、勝つ以外に何もない。

そんな直接対決、最終決戦で勝敗を決したのは、能見のピッチングだった。
今季、カープにいちばん相性のいい能見を中6日でこの試合に持ってこれたタイガースベンチが、
その時点で先手を取ていた。
勝ちムードを高めるのにもってこいの能見先発が、
試合を優位に進められたいちばんの要因だったのではないか。

一方、カープの先発はルーキーの大瀬良。
ルーキーとはいえ、
シーズン通してローテーションを守ってきたピッチャーだからベンチの期待も理解は出来るが、
やはり硬さの方が目立っていた。
4回5安打3四球3失点は、相手が能見だっただけに何とも言い難い。
85球という球数の多さからも分かるように、制球が悪く、
常にボール先行で2回、3回は先頭打者を四球で歩かせた。
ワイルドピッチ、野手の送球エラーなど、悪い流れは守りのミスを連発させ、極めつけは、
三本間に挟んだ福留をサードの梵が深追いしすぎてタッチ出来ず失点するという痛いプレイまで飛び出した。


かたや能見はランナーを背負っても要所を締めるピッチング。
ストレートの走りもよく、スライダー、チェンジアップがうまく噛み合った。
なにより、マウンドの能見の落ち着きが、タイガース野手陣を攻守にわたり引き締めていた。
チームを盛り上げる、チームをノセる選手というのも必要だろうが、
チーム全体を引き締める、そんな役割を担える選手が存在するかどうかは、それ以上に重要ではないか。
時にはチームに緊張感をもたらし、時にはチームに勇気を与える。

この試合では、能見がピッチングでそれを示していたように見えた。
野手の中心にそういった選手がいるかいないかによって、
チームとしての攻撃力、チームとしての守備力に大きな差を感じる。
ジャイアンツはそこに、阿部が存在する。


やや下降線と言われていたタイガース打線だが、
やはりクリーンナップが強固であることに変わりはない。
ここに来て好調な福留、さらに故障していた今成もCSに間に合いそうな報道もある。
打線はこれまで以上に躍動する可能性を秘めている。

2位、3位の順位を度外視しても、能見をより印象付けれたのはタイガースにとって大きい。
能見、メッセンジャー、さらに岩田もカープ戦では好成績を残しているので、
カープは少しでも精神的優位な状況で1stステージを迎えたい。
何につけ、ジャイアンツとの最終戦を獲らないことには苦しくなる一方だ。


5日の対ジャイアンツ最終戦は前田健太が大方の予想。
ジャイアンツは順番からすると澤村だろうか。
前日登板が予想される小山と入れ替える可能性も考えられるがどうなるか。
澤村は前回のカープ戦、9月17日のマツダスタジアムでは1回に4点を獲られて降板。
それ以降、いまひとつピッチングがしっくりいっていない様子も見受けられる。
現在4勝3敗。負ければまた勝ち負けに差がないままシーズンを終えることになる。
同級生の前田健太に投げ勝ち、ひとつでも多く貯金を増やしてポストシーズンを迎えたいだろう。
負けられないカープを、澤村は返り討つことが出来るか。



反骨心が口をついた原監督、渾身の言葉。

2014-10-01 23:17:53 | 2014年シーズン

今季、原ジャイアンツの戦い方については、いろいろな見方がある。
様々な人が、様々な立場でものを言うから、あたりまえと言えばあたりまえだが、
シーズン中から矢面に立たされた原監督の心中はどうだったろうか。


今年、球団創設80周年を迎えた読売巨人軍。
東京ドームの開幕戦で催された厳粛なセレモニーには、
往年のファンを唸らす豪華な顔ぶれが勢ぞろいし、オープニングゲームに華を添えた。
このような記念すべき年に、優勝を逃すわけにいかないプレッシャーは、
原監督以下、首脳陣、選手らにとっても、かなりの重圧だったろうと想像する。


そんな重圧と共に幕を開けた2014年のペナントレース。
投打に調子の上がらない選手たちを見極め、
攻撃に関しては打順を百数通りも替えるという苦肉の策でシーズンを乗り切った原監督。
とくに、シーズン後半近くまで4番を固定できなかったことに関しては、プロ野球解説者をはじめ、
球団OBや球界のOBなどからも、原采配に対し批判的な意見が向けられた。

「得点力に関しては、80年の歴史の中でもあまり褒められたチームではない」。
そう口にした原監督だったが、この言葉には、巨人軍の歴史を築いた先人達への敬意と、
多少の釈明も含まれているように思う。
シーズン中の原監督の耳にも、先に述べたような批判的な声は届いていただろうし、
縦の世界を強くイメージする野球界だから、
あるいは原監督が直接言及されていた可能性だって充分考えられる。
原監督もシーズン中から、打線をいじることが本意でないと口にしていたから、
自身に対する戒めも少なからずあったかもしれない。

そんな状況を想定した上で、先の原監督のコメントの続きを読み返すとさらに意味深い。
「団結力、あるいはここぞというときの守備力。これは80年の歴史の中で一番強いチームだと思う」 。
ここに、原監督の、今季、自身に向けられていた批判に対する反骨心を垣間見た気がするのだ。

百数通り凝らした打順。8人に及んだ4番打者。
一向に調子の上がらない打線に腹を括った。
一瞬繫がった線を逃さずモノにし、それを守りきる野球に徹した。
強い王道野球が築けなくても、チーム力、団結力で優勝した。
勝たなければならないシーズン。
勝たせなければいけない立場。
勝つための采配に徹しきった原監督には、やり切ったという自負があったに違いない。

8月に入り阿部を4番に固定した。
その後、復調したかに見えた阿部だったが、それも一時的なものだった。
ただ、阿部が動くことなく4番に据わり続けたことで、前後が少しずつ落ち着きはじめた。
そんな流れは先発投手陣にも波及した感じがある。
さらに故障していた亀井が戻ったり、長野が復調し始めたり、
9月の快進撃は、くしくも4番打者が固定された8月のこのときから始まってると言っていい。


どなたかが言うように、打てなくてもはじめから阿部を4番で使い続けていれば、
そこまで打順をいじらずに済んだのではないかという意見もある。
あるいは試行錯誤した上で辿り着いた打線だからこそ、後半にきて実ったという見方も出来る。
それも細かく見れば一概にどちらと言い切れるものではない。

もしかしたら、このチームの経験と団結力、信頼関係があれば、
どんな打順でどんな戦い方をしようと結果的に勝てたシーズンだったのではないかと、
ちょっと乱暴なことを言ってみるのだが、これはまた後日、考えたい。


よく、選手を評して ”ひと回り大きくなった” という言い方をするが、
これは何も選手だけに限ったことではなく、
指揮を執る立場の人間にも当てはまることではないか。
そう考えると、この苦しかったシーズンが及ぼした影響は選手だけに留まらないだろう。
成長という表現はおこがましいにしても、今季、原監督が得た自信というのは計り知れない。
たくましさを得た選手らを称えながら、原監督自らも、
きっと大きな自信を手に入れたたシーズンだったのではないだろうか。