金属や半導体の最も外側の電子が集団的にその位置をずらすと、残った正電荷に引き戻される。これによって発生する振動をプラズマ振動というが、プラズマ振動は金属や半導体の中を移動するのでプラズモンと呼ばれている(11/17,12/21,1/23参照)。ナノ粒子では、粒子が小さいためプラズマ振動の際電子が粒子の外へはみ出す。そのため振動数が粒子の形や大きさによって異なる。振動数を可視光や赤外線の振動数(波長/光速)と同程度にすることが出来、いろいろな新しい展開が注目されている。
スペインとイギリスの研究者たちは、一層のグラフェンナノディスク(1/18参照)を周期的に並べたものが赤外線を完全に吸収し、赤外線のもつエネルギーをプラズマ振動のエネルギーに変換してしまうことを明らかにした。今のところコンピューターシミュレーションの段階であるが、最近のコンピュータの性能が高くシミュレーションの精度も高い。グラフェンナノディスクに赤外線領域のプラズマ振動を誘起するためには、電荷を与えるかまたは不純物を添加する必要がある。また、電荷の大きさによってプラズマ振動の振動数、したがって吸収される赤外線の波長が異なるという。これまで赤外線領域の検出器やセンサーの感度があまり大きくなかったので、実現すればその貢献度は高いだろう。また、プラズマ振動エネルギーを電気エネルギーに変換する道が開ければ、太陽光発電効率を上昇させるのに貢献するであろう。
http://physicsworld.com/cws/article/news/48464
もうひとつの話題もコンピュータシミュレーションである。プラズマ振動の際電子が粒子の外へはみ出すので、粒子が他の物質と接触しているとその物質に負の電荷を与え、互いに引っ張り合うはずである。ヤモリの足のように天井にくっつくことも可能になるだろう。イギリスの研究グループは、金ナノ粒子を薄膜の表面に並べたものを想定し、これを他の絶縁体の上に乗せて、これにプラズマ振動と共鳴する波長の赤外線を照射し、薄膜と絶縁体との間に働く力を計算した。その結果、薄膜の重力に打ち勝つ引力が生じることが明らかになった。この結果をどのように実用化されるかは今後の問題であるが、このようにいろいろな新しい可能性が開けてくることは大変興味深い。
http://physicsworld.com/cws/article/news/48394
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