金属ナノ粒子を規則的に配列した系は、プラズモンを誘起するため、特定の波長の光を吸収する(11/18,19,3/9参照)。この光吸収はプラズマ振動(11/17参照)との共鳴によって起こるため、吸収係数が大きい。また粒子サイズや配列を変えることによって、吸収波長を変えることが出来る。このため、太陽光発電、癌治療、医療用イメージング、センサーなどへの利用が試みられている。
これまでの研究で、10ナノメートル以上の粒子が共鳴周波数の光を受けてプラズマ振動を誘発することは良く知られていた。10ナノメートルより大きな粒子については、電子の集団的な運動を古典的に取り扱うことが出来るが、それ以下になると量子力学的な配慮が必要となる(半導体粒子が小さくなると禁止帯の幅が増加するのも同様の量子力学的効果である,9/27,28参照)。そういう理由で、小さいナノ粒子のプラズマ振動は論議の的となっていた。粒子が小さくなると実験も難しくなり、様々な結果が得られているという状態であった。
スタンフォード大学の研究グループは、2ナノメートルから20ナノメートル程度の銀ナノ粒子のプラズマ振動を測定することに成功した。これまでの実験では、光の吸収などを直接測定する方法がとられていたが、このグループは、強力な電子顕微鏡でナノ粒子の発光を測定することによって、実験精度を高めた。粒子サイズが小さくなると、共鳴振動数が少し増加するが、大きな粒子同様のプラズマ振動が観測されたことになる。
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100-10,000個の原子からなる粒子を扱うこの研究成果の応用的意義も大きい。吸収する光のエネルギーは粒子の大きさにあまり依存しないから、小さな場所にたくさんの粒子を詰め込むことによって、医療やイメージング効果が増大する。センサーの感度を増加させることも出来るだろう。将来は、1個の電子の移動を観測するのに利用出来るかもしれない。