主要自動車メーカー各社は、2015年には燃料電池を搭載した自動車を量産するよう計画している。燃料となる水素を液体にするには、摂氏零下約250度まで冷却する必要がある。自動車の中で水素をこの温度で保存するのもあまり実用的ではない。現在のところ、水素ガスを詰めた重い高圧タンクを搭載した少数の燃料電池自動車が走り回っている様である。
水素を固体の中に取り込み貯蔵する方法が模索されている。貯蔵材料には、遷移金属などを含む水素貯蔵合金と呼ばれる合金やその他水素化合物を形成する種々の材料が利用されている。材料中に出来るだけ多量の水素を貯蔵することが望ましい。下図に、材料の体積当たり貯蔵する水素量と貯蔵後の材料の重量比との関係を示す。液体水素では重量比が100%になる。橙色、灰色、緑色で示した領域は、それぞれ水素を貯蔵した金属合金、比較的軽い元素との水素化合物および炭化水素で実現出来そうな領域を示す。原子の大きさは原子の種類によってそれほど変わらないので(9/6、9/23参照)、材料の体積当り貯蔵出来る水素の量は貯蔵材料の種類によってあまり変わらない。したがって、高い重量比を得るためには軽い原子で構成される貯蔵材料が好ましい。図の赤い星印は、アメリカのエネルギー省が燃料電池自動車を念頭に設定した努力目標である。
フラーレン、カーボンナノチューブやグラフェン(9/8参照)が最も好ましい貯蔵材料のように考えられるが、現在のところ好ましい結果得られていない。カーボンナノチューブで重量比7%が得られたと報告されている程度である。カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンなどに原子や分子を付着させ機能性を持たせることが出来る。このような機能性を持たせたナノ粒子など種々の材料について試行錯誤の段階である。水素貯蔵材料に水素を充填した燃料電池自動車が走り回るのも、それほど遠い先の話でないかもしれない。
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