ナノテクノロジーニュース

ナノテクノロジーは日進月歩である。その全貌がわかるよう、日々飛びこんでくるニュースを中心に説明する。

カーボンナノチューブセンサーで果物の成熟度を

2012-05-17 | 報道/ニュース

以前にカーボンナノチューブがセンサーとして利用できることを述べたことがある(10/31参照)。カーボンナノチューブが分子と相互作用するとその電気抵抗が変化することを利用する。カーボンナノチューブをそのまま利用することもあるが、カーボンナノチューブに金属原子を付加することもある。カーボンナノチューブと反応しやすい二酸化窒素、アンモニア、水素などをかなり高感度で検出できることが示されている(たとえばD R Kaufmann Angwantdte Chemie International Ed 47(2008) 6550参照)。

マサチューセッツ工科大学の研究グループは、カーボンナノチューブを用いてエチレンをppm(100万分の一)以上の感度で検出できることを示した。エチレンは安定な化合物でその検出があまり容易でない。新しく開発されたセンサーは比較的簡単な構造で、酸化シリコン支持台に2本の金電極を付着しその上に特殊な銅化合物と結合させたカーボンナノチューブの塊を載せる。エチレンが銅化合物と結合すると、銅とカーボンナノチューブとの間の結合が弱められ、カーボンナノチューブの電気伝導度が変化する。これを検出することによってにエチレンの吸着量を決定することができる。
http://www.chemistryviews.org/details/ezine/2050701/How_to_Tell_if_Fruit_is_Ripe.html

エチレンは植物のホルモンとして作用する物質で、実の成熟度や発芽などをコントロールする。果物の実が熟するのは、エチレンが特殊なレセプターと結合することから始まる。したがって、実から発せられるエチレンの量を測定するとその成熟度が分かるという。また、バナナなどは実が青いうちに収穫して輸送する。輸送中は窒素中に封入して成熟を抑える。成熟させる必要があるときエチレンを封入するが、その際エチレンの量をコントロールする必要がある。この目的のためにも開発されたセンサーが役立つであろうという。

特定の化合物を選別して検出可能なセンサーとして興味深い。