ナノテクノロジーニュース

ナノテクノロジーは日進月歩である。その全貌がわかるよう、日々飛びこんでくるニュースを中心に説明する。

アメリカのナノテクノロジー政策

2012-05-01 | 報道/ニュース

アメリカの大統領科学技術諮問委員会(PCAST,8/20参照)は、毎年この時期になると、前年度のナノテクノロジーイニシアティブ(NNI)の活動の評価と、本年度に向かった勧告を作成し、大統領に報告書を提出する。ナノテクノロジーを次世代新技術と見なしていることの表れであろう。NNI(9/2,10/22参照)とは、各省庁にまたがった組織で、約20億ドルの予算の分配を決定している。

http://www.nanowerk.com/news/newsid=25059.php

昨年の大統領にあてた手紙の中では、投資額を増大しつつあるEU、ロシア、韓国や中国を見据え、ナノテク関連予算を増大しないと世界一の座が確保出来なくなると警告していた。今回のレポートでは、NNIが昨年の勧告に従って大きな進歩を成し遂げたと評価している。比較的楽観的で、今回の勧告に従えば、今年度もナノテクノロジーに関して世界的リーダーシップを発揮出来、経済、ハイテク雇用、健康、国家安全、エネルギーなどの面で大きなインパクトを与え得るとしている。

高い評価を受けているのは、研究成果と新しい発見を商品化に結びつけ得たことである。さらに、経済発展につながるようなプランニング、ナノテクノロジーの商品化の実情評価、環境・健康・安全(EHS)に重点を置くよう勧告されている。また、ナノテクノロジー関連の教育も重視されている。

アメリカに比べると、科学行政が省庁縦割りになっている日本では商品化に後れをとっているように思えてならない(8/28-9/2参照)。報告書に掲載されていたデータによると、日本のナノテクノロジーに対する公的資金援助はアメリカの約2分の1でロシア、ドイツとほぼ同じ、私的資金援助はアメリカの80%程度で、ロシア、ドイツより多い。しかしながら、ベンチャー企業への投資はイギリス、ドイツ、フランスより小さくトップ5に入ってない。

日本では基礎研究で見いだされたブレークスルーを速やかに産業化に結びつける体制は大企業に依存していいのかもしれないが、国として取り組む必要がある問題であろう。そうでないと、いつまでも’技術大国’と胸を張っていることが出来なくなりそうである。