ナノテクノロジーニュース

ナノテクノロジーは日進月歩である。その全貌がわかるよう、日々飛びこんでくるニュースを中心に説明する。

カーボンナノチューブの強さは鉄の100倍だ

2011-10-31 | 日記

グラフェンの記事(9/13参照)に続いて、英紙ガーディアンに「カーボンナノチューブ:小さな材料が半導体チップを変える」という記事が載っていたので紹介しておこう。

以前に(9/23参照)、カーボンナノチューブなど炭素原子よりなるナノ粒子では原子間の結合が強く、したがって極めて硬いということを説明した。ガーディアンの記事によると、カーボンナノチューブの強さを重さで割った値が鉄の117倍という。現存する材料の中では最も硬いものとなる。しかも、その精製技術の進歩によって長さ10センチメーターのものまで精製できるという。直径が1ナノメーター程度のものが作れるから、長さと直径の比が1000万倍にもなる。このようなものをより合わせでひもにすると、おそろしく強いものができるであろう。直径の異なるものや、壁が二重、三重と多重のものまで生成することができる。

カーボンナノチューブの価格が問題であるが、この10年間に1グラム当たり1000ドルから50ドルに低下しているとのことである。

カーボンナノチューブの利用範囲は広い。以前(9/23参照)述べたように、その強さを生かした製品が最も普及している。カーボンナノチューブの電気伝導度は高い。半導体チップの素子の大きさが小さくなるにつれて(8/18参照)、素子間の連結に細い銅線を使うことが必要になるが、必ずしも品質が保証されない。銅線の代わりにカーボンなのチューブを用いることが模索されている。また、カーボンナノチューブを用いたトランジスタも試作されている。また、カーボンナノチューブに分子などの付着するとその電気的性質や機械的性質が変化する。このこと利用して高感度センサーの作成も模索されている。

夢はさらに広がる。万能細胞を用いた再生治療の足場材としての利用や宇宙ステーションへのエレベーターの建設という話もある。もう少し現実的なものとして、その表面積が広いことを利用した電池の性能改善や大容量蓄電池を目指した研究も多い。さらにナノチューブの筒の中に燃料電池用の水素を保存しようとする試みもある。

カーボンナノチューブの健康に対する障害も看過出来ないようである。カーボンナノチューブが細胞の中に入り込み細胞を破壊するという研究やネズミに対してアスベストと同様の毒性を与えるという研究がある。製品化してしまうと問題はなさそうであるが、製造過程に携わる人々は注意をする必要がある。これは、現在でも多く用いられている毒性物質、例えば蛍光灯の中の水銀、スマートホンの中の重金属と同様に取り扱われるべきであろうとしている。