ナノテクノロジーニュース

ナノテクノロジーは日進月歩である。その全貌がわかるよう、日々飛びこんでくるニュースを中心に説明する。

ナノ粒子が持つ特異な性質は役に立つ

2011-10-06 | 日記
以前に炭素原子から作られるナノ粒子が高い強度を持つことを述べた(9/8参照)。この性質を利用した製品に、カーボンナノチューブ強化プラスチックスがある(9/23参照)。また、半導体ナノ粒子すなわち量子ドットの禁止帯のエネルギー幅は粒子が小さくなるほど大きくなることも述べた(9/27参照)。このことはずいぶん前から明らかにされていたが、最近10年ほどの間に次のような事実が明らかになった。

サイズの大きいシリコンに、禁止帯のエネルギー幅より大きいエネルギーをもつ光が入ってくるとしよう。この光によって1対の電子・正孔がつくられる。それに必要なエネルギーは禁止帯のエネルギー幅であるが、余分のエネルギーは結果として熱になってしまう。電子や正孔がシリコン原子と衝突して振動させてしまうからである。量子ドットが光を吸収するとき、2対の電子・正孔を作る確率が非常に高い。3対の電子・正孔を作ることもある。この場合、熱エネルギーに消費されるエネルギーは小さくなる。この性質は、禁止帯の幅が大きくなることとともに太陽光発電の効率を高める。

先日来、シリコン結晶にpn接合を作る説明をした(10/2-10/4参照)。現在用いられている太陽光発電パネルには、通常シリコン結晶ではなく、価格が安いアモルファスシリコンが用いられている。アモルファスとは非晶質のことで、結晶のように秩序を保っていない状態をいう。アモルファスシリコンでは、伝導体と禁止帯ならびに禁止帯と価電子帯の境界が波打っていると考えればよい。シリコンにはこのほかポーラスシリコンと呼ばれるものがよく用いられている。これはナノサイズの空洞を持つアモルファスシリコンである。ポーラスシリコンの1種にナノシリコンがある。これは、ナノサイズのシリコン結晶を含むアモルファスシリコンと考えてよい。

先日述べた(10/3参照)UNI-SOLAR社が発売しているのは、ナノシリコンを使った薄いpn接合の膜を薄いステンレススチールの上に付着させたもので、効率が高いこととフレキシブルなことが売りである。シリコンのナノ結晶を含むため、上に述べたように発電効率が上がる。そのほか空乏層を厚くしてその両端のn型およびp型層を薄くするなどの工夫がなされている。現在市販されている太陽光発電パネルの効率が最高15パーセントであるのに対して、20%の効率が得られると言われている。