ナノテクノロジーニュース

ナノテクノロジーは日進月歩である。その全貌がわかるよう、日々飛びこんでくるニュースを中心に説明する。

ナノテクノロジーと触媒

2011-10-12 | 日記
触媒は多くの化学反応に広く用いられている。2010年に鈴木章・根岸英一両教授がニッケルやパラジウムの触媒作用に関する研究でノーベル化学賞を受賞したことは記憶に新しい。自動車の排気ガスに含まれる一酸化炭素を酸化させるため白金が触媒として用いられていることはよく知られている。

触媒に使われる材料は化学反応を起こすだけでそれ自身には変化が起こらない。たとえばA分子とB分子とが結合するとしよう。反応によって生じた分子ABでの電子配置が反応前の電子配置と異なっている。A分子とB分子とをただ近接させても反応は起こらない。触媒材料の電子が電子配置の変換に介入して反応を容易にしているのであろう。その詳細な機構は量子力学(8/24参照)の範疇の問題であるが、最近のコンピューターの発達によって研究の進展が見られる。触媒材料として作用し得るのは、複雑な電子構造をもった材料である。レアアースのような原子番号の大きい原子がつくるレアアース金属はその典型例である。

ナノ粒子の触媒作用に対する大きな貢献が期待される。触媒作用に寄与するのは材料の表面である。粒子の大きさが小さくなると、重量当りの表面積が大きくなる。それだけではない。ナノ粒子の電子構造やその触媒作用の研究は新しい。まったく新しい形の触媒が実現する可能性もあろう。窒素を加えたカーボンナノチューブは燃料電池に用いる白金触媒の代わりをするかもしれないという研究もある。

Nanowerkのデータベースによると、触媒を製品として扱っている会社は2社ある。QuantumSphere社とHeadwaters社である。前者は、窒素と水素とからアンモニアを作る触媒を製作している。この反応には従来鉄が触媒として用いられているが、ナノ粒子にすることによって従来の数百倍の効率が得られるとしている。後者の内容はホームページではよく理解出来ない。それ以外にも、ナノ触媒は多くの製品にすでに取り入れられている。