ナノテクノロジーニュース

ナノテクノロジーは日進月歩である。その全貌がわかるよう、日々飛びこんでくるニュースを中心に説明する。

太陽光で水を分解出来る

2011-10-18 | 日記

昨日述べたように、水素は公害を出さない燃料として理想的であるが、燃料としての水素の価格や効率など色々な問題がありあまり普及していない。しかしながら、水素燃料への要望が強く、水素エネルギーに関する国際学術誌まで定期的に発刊されている現状である。

現在燃料やそれ以外の種々の目的に利用される水素の大部分は、化石燃料から取り出されている。海水を分解して水素を取り出すことができれば、エネルギー源が豊富で、世界中どこにでも分布していることとなる。エネルギー源の争奪がしばしば国家間の紛争を誘発することなどを考えると、これほど理想的なエネルギー源は無い。水を電気分解すると水素が得られるが、これでは問題が解決しない。

太陽光で水を分解する試みは40年ほど前からある。東大の藤島昭名誉教授の先駆的な研究に用いられた手法は、半導体酸化チタンの表面に水分子を吸着させ、これに光を当てて水素と酸素を発生させる手法である。太陽光によって酸化チタンに生じた電子と正孔(9/27参照)が表面に吸着した水に作用して分解させる。ここで酸化チタンは触媒的(10/12参照)な作用をする。この場合、光を当てる必要があるので光触媒と呼ばれる。酸化チタンの禁止帯(9/27参照)の幅が大きく、太陽光エネルギーの数%しか酸化チタンに吸収されないこともあって、あまり高い効率が得られない。その後、色々な改良がなされてきている。

ナノテクノロジーも効率の上昇に貢献しつつある。酸化チタンのナノチューブ(9/8参照)も作られていて、これを用いて1%余の効率が得られたという報告もある。

もし高い効率が得られたならば、太陽光が強い熱帯地方に水素供給施設を建設して、水素を各国に分配出来るようにも思われる。しかしながら、太陽から地球に到達するエネルギーは、現在人類が使用するエネルギーの約1万倍にすぎない(9/5参照)。太陽光による海水の分解だけで地球上の全エネルギーをまかなうことは難しそうである。しかしながら、効率が10%程度に上がれば水素の供給源として利用されるようになるであろう。光触媒についてもナノテクノロジーへの期待が大きい。