ナノテクノロジーニュース

ナノテクノロジーは日進月歩である。その全貌がわかるよう、日々飛びこんでくるニュースを中心に説明する。

化合物半導体を用いた太陽光発電パネル

2011-10-26 | 日記

太陽光発電パネルにシリコンを用いるとき、その欠点は禁止帯の幅が小さいことである。このため熱として消費されるエネルギーが大きい(10/5参照)。禁止帯の幅が大きい化合物半導体を用いると、もっと高いエネルギー効率を得ることが出来そうである。

酸化チタンは半導体で、その禁止帯幅は3.2電子ボルトである。このエネルギーは、ちょうど青い光に対応する(9/27参照)。したがって、酸化チタンをシリコンの代わりに用いると、青い光より長い波長の光を吸収しない。これを補うため、色素が用いられる。酸化チタンに付着した色素が光を吸収すると、酸化チタンに電子と正孔が生じる。図の様に酸化チタン膜を透明電極に付着させておくと、光を吸収して酸化チタン内に生じた電子は透明電極に移動する。電解液を挟んで対向電極を設置しておくと、酸化チタンの正孔が持つ正電荷は、陰イオン、図ではヨウ素に移る。この場合生じたヨウ素原子は他のヨウ素原子の結合してヨウ素分子になる。通常ヨウ素分子ともう一つのヨウ素イオンの結合体が生じ、これが対向電極に運ばれ、3個の電子結合して3個のヨウ素イオンとなる。

上に述べた方法は20年ほど前に提案されたものである。その欠点は、酸化チタン膜が微結晶の集まりであることである。そのため微結晶の境界から隣の微結晶へ電子や正孔が移りにくい。酸化チタン膜の代わりに酸化チタンナノワイヤーを用いることが最近提案された。ナノワイヤーは単結晶であるからその中では電子や正孔が動きやすい。このような手法を用いると、理論的にはシリコンの場合の上限32%を超えることができるはずであるが、現在のところ約3%程度の効率しか得られていない。

ドイツのQ-Cells社がシリコンを用いた平板型の太陽光発電パネルで19.5%の効率を得た、と報じられている。当分は、現在するシリコン太陽光発電パネルの優位は揺るがないであろう。ナノ粒子の取り扱い方が進歩するにつれて、化合物半導体太陽光発電パネルに置き換わるとも考えられる。