『令和の民俗学』汐留一郎

日本のグランドデザインを考える

『アミューズミュージアム BORO』

2018-04-20 21:29:12 | 日記

網走で「鮭皮のブーツ」を見たので忘れないうちに加筆しておきます。

最初に見た場所は浅草「アミューズミュージアム」の「BORO」という常設展
田中忠三郎(故人)という在野の民俗学者が収集した衣服や衣類の展示を
創設者の大里洋吉氏の力添えのもと2009年に開館しこれまで運営してきました。



2019年3月で閉館になるそうです。


「藁靴」に勝るとも劣らない自然素材で作られた長靴
「三足の鮭皮を材料とし、靴底とつま先、踵、くるぶしがそれぞ一枚の鮭皮で構成され
皮同士は麻糸で絡み縫いされる。地域によってトドやアザラシ革もある」とのこと。

思わず笑みが溢れてしまうのは「靴底には背ビレがあって滑り止めの役割をしている」

現物を見ましたが「ニオイがしてきて夜中に猫に舐められそう」

つまり、昔は沢山あったけど吊るして保管してないから、いつの間にか猫に食われてしまったいうオチ。

職場の青森出身の方にも聞きましたが「海沿いの村では最近まで(といってもかなり昔ですが)けっこうあったそうです」
もっとも生活に根ざした民具ですから当然ですよね。

というわけで、ここからは宣伝
アミューズミュージアム、「BORO」は「布文化と浮世絵の美術館」の常設展であり
いわゆる当時は「こんな物はいらないよね、雑巾にして捨てちゃおう」みたいなボロ布が展示されている。
しかし、織物の技術というのは経験工学であり伝承が途切れると、後世ではなかなか再現不可能なものである。
裏打ちされた平安時代の着物、ポルポト以前のカンボジアのクロマー、インドのサリー
これらが高額で取引されているのを見れば、郷愁と美術的価値と当時の生活を知る上で
素晴らしい資料になる物である。木や石のように残る物でなく
あっという間に失われてしまう性格を持っている。

この美術館は、はっきり言って「マイナーだし、東武伊勢崎線の終点浅草だし。¥1080という入場料だし」と
なかなか躊躇する条件が揃っている。家族でいけば何千円も飛んでしまうし。
まあぶっちゃけて言うと規模の割に入館者は少ないし「大赤字」なんだと思う。

でも是非、見ておきたい美術館だ。
『 お そ ら く このコレクションが再び公開されることは な い だ ろ う 』
そういう運命を持った資料群だ。黒澤の「夢」に使用された衣飾群、民具、じっくり見られるのも
『 今 の う ち だ 』
メディアで取り上げたら最後、人は殺到する。

屋上からの浅草寺の眺めも最高、ホントこんな浅草寺は見た事ない。

ここでしか買えない田中忠三郎の著書
「物には心がある」


彼のはっきりした書きっぷりは、オブラートでくるんだような現代日本人の心に響くはずである。
できれば入館料を払っていただきたいが、ぐるっとパスを利用して尋ねて、この本を買う事も思い出になるだろう。
なんども読み返したい本の一冊である。

網走まで   



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