平成28年8月
特許庁
【御意見】
国際機関の略称は、当該略称が著名になった場合にのみ経産大臣の指定を行うべきである。
<理由>
機関等の正式名称全体については、これと同一又は類似のものが無関係の第三者によって登録されれば、問題が生ずる可能性が高いと考えられ、また、正式名称のほとんどが長文であるため、同一又は類似のものを第三者が使用しなければならない必要性は低い。
これに対して、略称は、たとえば、米州開発銀行の六「IDB」及び七「BID」の
ように、各国語に翻訳された場合、一機関について一つの略称には限られず複数に及ぶものもある。また略称は、前示のものの他、たとえば、欧州銀行監督機構の三「EBA」のように、欧文字2~3文字程度のものも多い。
これらを一律に大臣指定により登録できないとすると、商標使用者の商標採択の幅を必要以上に狭める可能性がある。 大臣指定を行うにあたっては、商標使用者の商標採択の幅を不当に制限しないように慎重に指定の要否を検討すべきである。
<理由>
上記問題の他、4条1項2号及び5号については、「類似」概念の考え方が審査基準に明記されておらず、どの程度まで類似と捉えるのかが判然としていない点からしても、商標使用者の商標採択の幅を必要以上に狭める可能性がある。
たとえば、モルドバ共和国の標章につき、印章・記章中の構成文字に「eco」「IGP」、「DOP」が見られるが、これらの印章・記章が大臣指定された場合に、これらの文字で構成される商標、或いはこれらの文字を一部に含む商標が、印章・記章に類似するものとして登録を受けることができないのか、判然としない。
かかる状況においては、商標使用者の選択の幅を必要以上に狭めないよう、大臣指定は謙抑的であるべきである。また、今後、4条1項2号及び5号の「類似」概念については、3号及び6号のように、その「類似」概念の考え方を審査基準で明記すべきである。
(回答)
パリ条約第6条の3(1)(b)では、国際事務局(WIPO)を通じて通知された国
際機関の紋章、旗章その他の記章、略称及び名称(以下、「紋章等」という。)について、商標登録を拒絶又は無効とすることを義務付けております。我が国は、従来から、これら国際機関の紋章等と同一又は類似する商標出願の拒絶等を行ってきております。
他方、パリ条約第6条の3(1)(c)では、国際事務局から通知されてきた国際機関の紋章等について、当該国際機関との関係を公衆に暗示又は誤信させないものについては、拒絶・無効の義務を課していません。
平成26年改正商標法(平成27年4月1日施行)により、パリ条約上の義務や我が国の事業者の商標選択の幅を過度に狭めないようにすること等を考慮して、商標法第4条第1項第3号に、国際機関と関係があると誤認させるおそれのない商標は、本号の対象とならない旨を明定したところです。
以上のとおり、事業者の商標選択の幅を確保し、その上で、パリ条約上の義務をより適切に履行するため、国際事務局からの通知のとおり紋章等を大臣指定し、不登録事由及び無効事由とすることが必要と考えます。さて、標記告示についてあなたのご意見は・・・。