この事件は、青山学院大学を運営する学校法人が校名に「青山学院」の名称を使用することは、不正競争防止法違反であると使用差止めを求めた。判決では、まず不正競争防止法上の「営業」とは、広く経済的対価を得ることを目的とする事業を指すものであり、私立学校の経営もこれに含まれる。よって、学校の名称も営業表示にあたるというもの。
次いで、「青山学院」の名称は、事業者自身の営業上の努力によって、自己の営業の本来の需要者や営業地域の枠を超えて自己を表示するものとして広く知られた著名な営業表示であると認定した。で、類似性は「取引の実情の下において、取引先又は需要者が表示の外観・称呼又は観念に基づく印象や連想などから表示を全体的に類似のものと受け取る基準があるか」によって判断される。
このケースは、「青山」の部分が人名又は地名としてありふれた名称であり、「学院」の部分が学校の異称であって、学校等において多く用いられている普通名称であることから、それぞれの部分からは営業主体の識別表示としての呼称・観念は生じない。しかし、「青山学院」全体としては識別表示としての呼称・観念が生じるもので著名性を有するものであるから、強い自他識別力が有するものと認められた。結局は、「青山学院」の名称の使用差止めを認めたのである。
ちなみに、東北学院、関東学院、関西学院、九州学院、常総学院、宮城学院、帝塚山学院なども、「単に地名により表された地域に所在する学校という意味を超えて、特定の経営主体により設置運営されている特定の学校を示す固有名称として社会的に認識されている」として、営業表示としての著名性を認めている。したがって、「呉青山学院中学校」の名称を使用する被告の行為は不正競争に当たるということで~す。