スピノザは「あらゆる限定は否定である」といった。
ちょっと分かりづらい。どういう意味だろう。
限定とは範囲を決めることである。
つまり、あっち側とこっち側の境界線を決め、こっち側の限界を決めることである。
また、決めることであるから、そこには選択が含まれている。
例えば(いい例かわからないが)、一夫一婦制であるという前提で話を進めよう。
そこで、私がこの女性を妻にすると決めたとしよう。そうすると、私はほかの女性を妻にできなくなる。
私は、世界中の女性の誰とでも結婚できる可能性があったのに(実際は無理だけど)、この女性だと決めた時点で、私は他の女性との結婚を否定したわけである。
だから、「限定は否定」になる。
言葉は、限定の最たるものである。
これは「犬」だと言った時点で、この生物は猫と区別され、猫であることが否定される。
故に、この命題から「あらゆる言葉は否定である」と導き出せる。