日経ビジネスに「幸福を露骨に追求する会社」という記事があった。
長野県伊那市で寒天を製造・販売している伊那食品工業だ。
寒天の国内シェア80%、世界シェア15%である。
2008年12月期の売上高は159億円と中堅企業の規模であるが、経常利益率は10%とほかの食品メーカーと比べると高い。
また、自己資本比率は72%で、銀行借り入れもほとんどない。
この会社の社是は「いい会社をつくりましょう」である。
その言葉通り、従業員、取引先、顧客、地域社会など会社を取り巻くすべての人々にとって「いい会社」であることを目指している。
人事制度は終身雇用の年功賃金。
下請けを叩くことはなく、地域社会への継続的な投資も惜しまない。
みんな、このような理念を持った企業を理想に経営しているのだろうが、それを達成するのは難しい。
では、どのようにそれを実現しているのだろうか。
まず、天候に左右されやすい不安定な相場商品であった寒天の供給を安定させる。
チリやモロッコ、メキシコ、オーストラリアなど、原料の海草を調達するために世界を走り回り、それを実現した。
1977年に新聞に次のような広告を出した。
「寒天はもう相場商品ではありません」
次に進めたのは寒天の用途開発である。
寒天を使ったお菓子を作り、メーカーに提案すると同時に、メーカーの声に耳を傾け、物性や粘度が異なる新しい寒天を開発してきた。その過程では、棒状や粉末ではない寒天も生み出している。
このような努力の末、高い理想を実現している。