夏の読書
2007-08-20 | 本
夏休みに読書感想文の宿題というのはお約束だった。
私は作文という作業が大嫌いで、シャーペンにぎってまんじりと
机の原稿用紙を眺めながら夏休みの終盤を迎えるのが常であった。
しかし、夏になるとなぜか読書熱が高まる。
水滴だらけのグラスに入った麦茶をかたわらに置き、
思いっきり暑苦しい恋愛小説などを読みふけりたくなる。
この季節に読み返したくなる小説のひとつ、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」。
終盤で登場するジョバンニのセリフ、
『僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸のためならば
僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない。』
大学生くらいの頃、宮沢りえがこのフレーズを読んだ新潮文庫のテレビCMがあり、
それを見たときは「銀河鉄道の夜」からの引用だとは気がつかず、
何の本なのか気になってしかたなくなり、新潮社に電話で問い合わせてしまった。
(しかし、私のような迷惑人間が他にも大勢いたらしく、
担当者の方は親切に教えてくださった)
この後のくだり。
カンパネルラ: 「うん、ぼくだってそうだ。」
カンパネルラの眼にはきれいな涙がうかんでいました。
ジョバンニ: 「けれどもほんとうのさいわいは一体なんだろう。」
この会話だけで泣けてきます。
「なつのひかり」 江國香織
江國さんの小説はどこかファンタジックでヒューモラス。
彼女の作品を多く読んでいるわけではないけれど、
白黒はっきりさせたい人には焦れる話が多いかもしれない。
ソフトにタブーな要素を織り交ぜた大人の童話のような小説。
「熱帯安楽椅子」 山田詠美
山田詠美は存在そのものが南国、しかもアジアなそれ。
なので彼女の小説は南国の旅のお供には必須であるわたし。
この小説はバリ島の気怠い熱気と湿度が伝わってきそうで好きである。
いっしょに彼女の「熱ポン」シリーズの一冊も持参すると
詠美ワールドが旅に一興を与えてくれること受け合いだ(?)