長生き日記

長生きを強く目指すのでなく良い加減に楽しむ日記

368  沖縄の短歌

2016-12-22 21:20:18 | 日記
『あやめもわかぬ』国吉茂子第三歌集 ながらみ書房2016年11月刊 国吉さんとはまだお話したことがなく、この歌集でご様子をはじめて知った。きっちりとして端正な歌が並び作歌歴が長い方だとわかる。病気で失語症になった御夫君との生活、わかれ、離れて暮らすお子さんやお孫さんの家族詠、ご自身の心を求める歌などが並んで感心させられた。しかし、何といってもふるさと・地元としての沖縄の題材に圧倒されるのは、先日僕が行ってきたからだろうか。歌集を読んでからゆっくりと旅すればよかったかと少し残念、次回の旅行はそうしよう。しかし、歴史のあるそれらの事物、風俗を理解するには相当長い時間が必要だろう、しょせん、異邦人として旅をするのか、それもまた良きかな。もちろん、沖縄の短歌、としてくくってしまっては申し訳ない作品の集まりである。

深ぶかとかうべを垂れて路の辺の一本すすき哲学をする
世界同時雇用不安に立ち向かふ夢ではいまもハローワーク職員
やまひだれまだれがんだれ寂しさを吸引してゐるあかひらく空
砂浜の白き砂より夏生れて海は海色の儒艮遊ばす
迸るいのちのかたち赤赤と梯梧は初夏の空覆ひ咲く
「犯罪現場(クライムシーン)」米軍も認めたヘリ墜落、普天間基地そのものが罪
コトバとして発するまでの脳のしくみ思ひみざりき夫病むまでは
工工四(くんくんしー)は琉球音楽の楽譜なり唐の世の名残りひく工六四(くるるんしー)
落鷹(ウティダカ)の鋭きこえのささりつつわが裡の秋深まるばかり
ヤンバルクイナがヤンバルクマヒマヒ捕食する山原(ヤンバル)の森といふ密室で
月桃の花に吸ひつくクロセセリ黒挵もまたこの香が好きで
日米合意に見え隠れする沖縄軽視復帰に燃えゐし祖国とはなに
新潟産杵つき餅が東京の娘より届きぬ都市の暮れかな