マロリーな日日(にちにち)

癒し系ソフト・ボトルメールの作者が、ガツガツ派では見えないゴロゴロ視点で、ビジネスの世界を観察していきます。

いくら稼げば十分か?

2005-03-26 01:26:33 | 閑話
世に、「××円稼ぐ本」というのはかなりある。(amazonで「稼ぐ」を検索すると136件)
一方で、「年収300万円時代を生き抜く~」なんて本も存在するのですが、これもなんだか自分の生活を現状の収入に合わせるようであまり好きになれません。(タイトルはインパクトありますけどね)

大学4年生のとき、たぶん就職活動中のころだった思うのですが、自分はいくら稼げば十分か、ということを考えたことがあります。

私が就職したのは87年で、バブルのさなかだったからでしょうか、社会人になれば妙に稼げるのではないかと根拠レスな自信と期待みたいなものが入り混じっていました。
「ん~、まずは1000万円ぐらいまではサラリーマンで、それ以降は独立して3000~5000万・・・。まてよ、がんばれば億とか!?」
なんて無邪気な時代があったわけですが、暴走する妄想に限りはありません。

「いくら稼げば十分(満足、ハッピー)か?」という問いに、年収で答えを出そうとするからインフレ暴走することに、ふと気づいた私はスマートな解をすぐ出すことができました。

「本屋で気になった本を、値段に関係なく買えるようになれば十分」、というのが当時の私の答えです。

あえて、お金に換算すると、現在では年間に約100冊程度の本を購入してるので、平均単価1500円としても、可処分所得として本代に年15万円もあれば十分ということになります。むむ、われながら安い・・・。ノートパソコン1台にも満たないし。

てなわけで、20代のころからこの問いに対する答えは今でも変えていないので、収入が多少乱高下しようが、心穏やかに生きております。

勝ち組・負け組という不安な響き

2005-03-19 13:41:03 | 閑話
なんだかすっかり一般ワードになりましたね。勝ち組と負け組。
blogWatcherで調べると、昨年2004年1月くらいから盛り上がり、8月でピーク。
今年2005年に入ってまた盛り上がったという状況ですね。

この違和感、どこかで同じようなものを感じたことがあるなぁと思っていたのですが、ついに気がつきました。
80年代後半からのバブルのときに流行った「3高(さんこう)」という言葉。このときと同じ奇妙な印象を受けたわけです。
3高とは、高学歴、高収入、高身長ということで、男性の評価基準として、これらの3要素が最重要要素であったというムーブメントです。
で、このときに感じた違和感とは、当時お年頃だった女性の価値観の乏しさです。というのは、この3高という要素はある種、客観的過ぎる事実で、まさにパソコンのスペック(specification:仕様書、性能)と同じでした。自分の価値観がたった人であれば、他人がどうこういおうが、「私はこれが好き」と胸を張って言い返せるわけですが、おそらく当時の大半の女性が男性に対する価値観を喪失していたのではないか。そういう不安定な、あるいは不安感、強迫観念みたいなものが華やかなバブル社会の裏側で進行していたと思うのです。

そして、勝ち組・負け組の時代です。
この言葉も多様な個々の価値観は置き去りに、かなりスペック競争に入っています。もともとが経済用語なので、カネとは切っても切れない関係があるのでなおさらです。驚くべき刹那感。すでにパソコンですらスペック競争を終えつつあり、CPUがどうのこうのという人はかなり少なくなってきました。デザインがかっこいいとか、しっくりくるね、という時代に、やはりスペック・・・。
男性に対する価値観の喪失どころか、社会や人生に対する価値観の喪失、自信のなさ、漂う不安感を象徴してならないのです。

もうひとつ気になるのが、勝ち組・負け組ブームの2番目のヤマを支えている人たちです。おそらく昨年のピークはビジネス用語としてのピークで、ビジネスマンが使っていたのでしょう。そして今年のピークは明らかにお年頃の女性・・・。
女性は不安な社会を本能で察知するのかしらん。

PS
まさか、バブルOL時代に「3高」と騒いでいた現オバさまが、15年の時を経て再び「勝ち組・負け組」なんていってないですよね!?
自分の軸、つくらないと(^ ^;

チャングムの唯一の欠点(3/3)

2005-03-11 13:05:52 | biz basic
本テーマの最終回、今日はビジネスパーソンとしてのチャングムの唯一ともいえる要注意点を指摘したいと思います。
それは・・・

【×:仲間と相談しない】
 もしぼくが、チャングムの上司かつメンターであるハンサングンの立場であればまっさきにこの点を指摘したいと思います。

 チャングムは幼いころから身の回りに難題がふりかかると、「ちょっと待ってて、私にいい考えがあるの!」と他の仲間たちを尻目にどこかに走り出してしまう人なのです。アルテミスの空を飛べる靴を履いているかのフットワークのよさ! こうしてチャングムは自身の猛然とした行動力と冴えた機転で何度もピンチを脱していきました。

 しか~し、チャングムも周りの仲間たちも,問題が解決した喜びにこういう問いかけを忘れているのです。
 「もっと良いやり方はなかったのか?」
 たしかに、一見、一件落着です。しかし、チャングムが出かけている間、他の仲間はどう感じているでしょうか? チャングムは何をこれからしようとしているのか、それは本当に有効なのか、そもそもいったいいつ戻ってくるのだ・・・などなど不安で不安でたまらないはずです。
 もしチャングムが事前に彼女の計画をほんの少しでも打ち明けてくれれば、仲間たちも安心できますし、場合によってはもっと良い解決策を見つけるかもしれません。

 ですが、そのような反省はなされるどころか、同様のアクションでやはり、できるチャングムは何度も問題を解決してしまったため、やがて周囲にもその様な行動がむしろチャングムらしいなどと当たり前のように受け取られてきます。ま、人間誰しも、成功している人、ましてや自分のピンチを救ってくれた人に対し、「もっと良いやり方はなかったのか?」なんて、おこがましくて尋ねづらいものですが・・・。

 やがて、起こるべき失敗が起きました。
 チャングムは料理コンテストの際に、煮込みの時間が不足することを懸念するハンサングンにこう言い放ち、何のコンセンサスもないまま食材の調達に向かってしまうのです。
 「私に任せてください。いい考えがあります!」
 結果、チャングムチームはコンテストで敗退します。
 チャングムは煮込みの時間を短縮するために、高級な食材の利用とアクとりのテクニックで回避しようと思いついたのですが、コンテストのテーマを完璧に忘れていたのです。庶民でも簡単に入手できる食材や、ふだんは無駄なものとして捨ててしまうような材料を用いての料理コンテストだったわけです。

 もし、チャングムが自身の案を、事前にハンサングンと相談していたらどうだったでしょうか?
 チャングムの解決案は目の前の問題の解決にはなるけれども、そもそもの大前提の中でまったくの見当違い、かつ近視的なものであったことが一瞬でわかり、却下されるべきものでした。

 チャングムのこのような行動パターンは、幼いころ自分の失言で、父が逮捕され、一家離散の中、母が逃亡中に死亡という大きなトラウマが原因しているのかもしれません。しかし、天才チャングムといえど、正対する問題は日々大きく、困難なものとなっています。相談できる仲間と、その習慣を身につけらるよう未来からお祈り申し上げています。

チャングムの唯一の欠点(2/3)

2005-03-03 18:41:14 | biz basic
今日はチャングムの◎、その2です。

【◎:ユーザエクスピリエンス】
 チャングムの最大の◎は、最良のエクスピリエンス(彼女の場合は料理)を相手につねに提供すること、あるいは提供しようと努力しているところだと思います。またこの最良の体験提供に信念を持っているところが、同じビジネスパーソンとして尊敬に値すると感じています。

 チャングムは「水をもってきて」という些細な要求に対しても、現在相手がどのような状況であるか観察し、ヒアリングし、その相手にとって最良の水をもってこようと努力します。暑い夏の日に相手が水といえば、チャングムは相手の額に浮かぶ玉のような汗を見て、一つまみの塩を入れた冷水を大きめのコップに入れて持ってくるでしょう。夜寝る前に疲労困憊した相手からのオーダであれば、60度くらいの白湯を持ってくる人です。

 ユーザエクスピリエンスといえば、今流行の新しい概念のようにも思えますが、そんなことはありません。

 「その相手の状況を時間軸を通して認識できる」ことが一番であり、相手に興味を持ち、観察を行い、この現在の状況に至るまでの相手の過去時間を想像、ヒアリングします。また、これからその相手に起こることをシミュレーションし、相手と自分の立ち振る舞いを決定すればいいのです。
 ちょっと難しくいいすぎかもしれませんね。要は相手をいかに「おもてなし」すればいいか単純に考えるだけです。でもこれがなかなかできない。美しい立ち振る舞いと同様、そういうクセがついているというか、トレーニングや場数を増やしてカラダが自然と獲得するのがエクセレントですね。

 「おもてなし」と聞いて過剰な接待モードに入るというのは言語道断です。チャングムはグルメな明国の使者が実は糖尿病だということを知り、あくまでも質素な食事を供しますが、周りの反対ばかりか、明国の使者その人からも顰蹙を買います。しかし彼女は真のユーザエクスピリエンスを提供すべく、その信念を曲げません。やがて命がけで質素な食事を提供続けた彼女の気持ちは明国の使者の心を打ち、めでたしめでたしとなるわけです。


 リクルート時代にはこういうおもてなしを先輩から徹底的にトレーニングを受けました。お客様が来社されるときを考えましょう。時間的に表玄関がしまるころであれば、裏口の守衛さんにお客様の来訪を事前に告げ、エレベータを降りた後の導線上にわかりやすい案内を張り、事前に好みをヒアリングしたお弁当や飲み物を用意していると・・・。「おーい、永井。今日のBGMと香りはなにを用意した?」と驚くべき突込みが入ることもよくありました。件のミーティングはブレストのためのミーティングでアイデアが気持ちよく出るよう、あるいは煮詰まったときに音楽や香りで気分転換しようね、という下準備だったりするわけです。

 やがて、後輩にこういうトレーニングを施すようになり、お客様が帰るときにノコノコとわれわれの後をついてくる後輩にそっと叱咤します。

「こら!、お前は先に走ってタクシーつかまえてくるの! ぼっとしてないで行動をシミュレートせんかいっ」と。今ではこの後輩も立派にR25という媒体を新規立ち上げし、同じように後輩に指導していると思います。



PS
 おもてなし、という言葉でこの本を思い出しました。
 この本に、品川のホテルパシフィック内の床屋さん「理髪佐藤」のことが書いてあります。
 ぼくはこの床屋さんで過ごす時間と散髪に1万円を支払いますが、惜しいと思ったことは1度もありません。
サービスの天才たち

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