マロリーな日日(にちにち)

癒し系ソフト・ボトルメールの作者が、ガツガツ派では見えないゴロゴロ視点で、ビジネスの世界を観察していきます。

組織の成長と機動力のジレンマ

2005-07-30 03:55:24 | biz basic
法人とはよく言ったもので、カイシャはホント、人格を持って生きていますよね。
個人的に、約40歳の企業と、約60歳の企業に所属してその差を強く実感しました。
とくに、組織の自己成長というものに。

ふつう、学びのある企業であれば、程度の差があれ、自己成長を続けます。
なにか失敗があれば、それを二度と起こさないよう新しいルールが規定され、免疫のごとくその再発を防ごうとします。
たとえば、ある社員Aがある企業Xと新規に取引を始めたいと申し出ます。
上長Bは、業務契約があればOK、なんて口頭で了承し、社員Aは上長の机から承認印を取り出し押したとします。
しかし、企業Xは社員Aの近親者が社長のペーパーカンパニーで、実は、社員Aの発注を、A自身が対処して二重に報酬を受け取っているとか、
あるいは、発注自身が架空のものだったりします。
やがてこの不正は当然のごとくばれ、組織はその不正が二度と起きないよう、システムのカイゼンがなされます。

この例の場合、新規取引にあたっては、事前に登記簿謄本を請求するなど簡易な監査を導入しようとか、
上長Bだけでなく、さらにその上長Cの決裁も必要とするなどのカイゼンがなされます。

こういう何十年にもわたるカイゼンの積み重ねにより、システムは不正やミスというエラーを0に近づけていきます。

その一方で、モラルが高く、過去様々な新規の取り組みで成功を収めてきた社員Cはだんだんとパフォーマンスが落ちてきます。
昔は、数ヶ月で新規商品の開発ができたが、新しいルールの出現により、事前の承認手続きに時間がかかり、現在では同じ仕事をするにも1年もかかってしまうような事態になってきます。なにしろ、仕事のパワーの過半数は内部の調整に当てられたり、なにより自分が全く会社から信頼されていない、詐欺師であるかのような扱いに我慢できなくなってくるわけです。

こういうことは皆さんの身近にも多少は起きているはずなので、実感がわくと思いますがいかがでしょう?

なるほど、それゆえ、歴史があったり、大企業の組織は硬直していくのか!

うん、それも一理。
でもね、トヨタの現場ではカイゼンを何十年も毎日毎日行っているけど、組織の老化が他の企業よりも早いとか硬直しているという話は聞きません。
むしろその逆。
この差はいったい何なのでしょう?

その答えは、コストとスピードの評価軸の存在だと思うのです。
一般の企業組織がその歴史の中で学んだ決済の方法とか、ルールの目的はエラーを0にすることしか考えられていないのです。
トヨタのように、エラーを限りなく0にしながら、その判断スピードをもっと速くするにはどうすればいいのかとか、
20万円の案件に全役員がそろって会議に出席しているのは会議のコストの方が高くなっちゃうよねとか、
そういう面でもカイゼンがなされればすばらしいのに、なぜか一般の組織にはきわめて当たり前の部分のカイゼンがいまだになされないのは不思議です。




新規事業のストライクゾーンと成長のジレンマ

2005-07-23 02:32:43 | 新規事業
新規事業構築のお手伝いをさせていただくことが多い。
私の場合、まっさきに確認させていだくことは次の3つである。
 1.担当者・担当チームの興味、志向、モチベーション
 2.企業文化
 3.会社が期待する新規事業のストライクゾーン

1.2.については別の機会に改めて話すことにして、今日は3.のストライクゾーンについて。

当たり前のことだが、いくつもの企業をお手伝いしていると、各社にはそれぞれ固有の成功イメージを不文律として持っている。
それぞれの企業が持つ、成功や失敗の歴史の中で、新規事業の成功イメージは、暗黙のうちに社員、とくに決裁者である役員の中に漠然とできあがっています。

たとえば、リクルート社の場合、
 ・売上げは数百億以上
 ・3年度単期黒字
 ・利益率は30%はほしい
・・・といったような暗黙のストライクゾーンが存在しますが、別にこれは明文化されたルールでもなんでもありません。
過去、情報誌ビジネスで成功してきた「経験」がこれらの要素を是とするわけです。
当然、このストライクゾーンをはずした提案は、なにか特殊な目標がない限り、役員決裁の場には登場することはありません。

一般的に新規事業の売上げ目標は、現在の事業の10%程度と言われており、それより小さなビジネスは役員にはなかなか魅力的には映りません。でも、それはとてもよくわかりますし、きわめて良識的な判断です。
たとえば、売上げ4000億円の企業が、数年後に年商20億の商売を成功させたところで、嬉しくも何ともありません。
リクルート社は現在売上げ約4080億、従業員約5000人です。もし、この感覚で20億の事業を成功させても、24.5人の雇用しか生まないわけで、数年後にやっと「課」が1つ増えた程度の規模にしかならないというイメージです。

ですので、各企業には多様なストライクゾーンはあるのですが、この事業規模要素だけはだいたい一致しています。


さて、大企業のインターネットビジネスの取り組みに話を向けます。
現在の大企業がインターネットビジネスに成功した例はきわめてまれです。
たとえばソニー。CEOだった出井さんは、これからは「非連続の時代」とか、「インターネットは現代の巨大隕石で、それが落ちてきて、恐竜は滅亡する」と90年代後半には、きわめて慧眼な認識をしていました。
しかし、取り組んだインターネットビジネスのほとんどが実現されず、約200のプロジェクトが企画段階、`あるいはプロトタイプ運用のレベルまでで息絶えたそうです。
企画メンバーにやる気がなかったのか?
企画を評価できなかった上司がバカなのか?
いえいえ、天下のソニーでそういう要素はかなり低いでしょう。
少なくとも200ものプロジェクトがそろいもそろってボツになるという異常事態はありえません。

察するに私は、大企業ソニーが陥った、新規事業ストライクゾーンのジレンマがその最大原因ではなかったのではないかと思うのです。

現在、ソニー(グループ)は売上げ約7兆円(!)、従業員数15万人です。
IT系新規事業スタッフには、7兆円の10%、つまり5000~7000億円規模の無言の目標が課せられたのではないかと思うのです。
この数字を純粋なインターネットビジネスで稼ぎ出すのは、ほとんど不可能というか、あり得ねー状態であることは業界の方々であれば容易に理解できると思います。
かといって、7兆円の大ソニーで10億円のビジネスをチマチマやってどうする、というプレッシャーがかかるのは容易に想像がつきます。
ちなみに、ライブドアと楽天本体の売上げはおのおの、108億、210億円にすぎません。

クリステンセン氏の「イノベーションのジレンマ」と同様、新規事業の判断においても、経営としては合理的な判断をしているのだけれど、正しい選択をすればするほど、未来の可能性をつみ取っているともいえます。

ビジネス環境が激変し、時代が非連続となった今、新規事業の10%ルールの常識を否定する勇気とチャレンジが経営に求められているのではないかと考えています。

VAIO Type-T、唯一の難点

2005-07-15 17:16:52 | good/bad design
仕事柄、ノートパソコンのヘビーユーザでもあり、歴代Apple PowerBook→IBM Thinkpadを経て、ここ数年は、ソニーのVAIOに落ち着いています。
で、現在愛用中のものはソニースタイルオリジナルのType-Tで、最軽量カーボンブラック、最速CPU、最大HDD+メモリときて、英語キーボードという感じで、まさに全部載せ状態。
あまり原価のかからない仕事なので、日常作業PCぐらいはゴージャスに(^ ^;

1ヶ月ほど、このType-Tを使っているのですが、動作は軽快、9:16の横長画面は美しいし、持ち運びも軽く、バッテリも標準で4時間はいけるし、個人的満足度はVAIO最高の評価です。

なので、今日はあえて難点の話を。
それは、電源の差し込み動作。

まず、写真右側のようなコネクタになっているのですが、おわかりのとおり、ケーブルが左を向いているとバッテリにぶつかって入らないのですよ。ま、これはケーブルを上を向けるか、右側に向ければいい話なのですが、たまたま自宅も時々出向くオフィスも左側からケーブルが延びていまして、ちょっと気になった次第。

で、もっと問題なのはケーブルコネクタをVAIOに差し込むとき、右手親指でどうしても緑に輝く電源スイッチを押してしまいがちなことなのです。
VAIOのモニタを閉じているときには全く問題はありません。でも、稼働中のVAIOを携え、作業場をウロウロと変えたり、ミーティングから席に戻ってきて、「さてバッテリも少なくなってきたし、充電でもするか」と右手人差し指でコネクタの穴をまさぐり、グッと力を入れると、ありゃりゃ、電源ボタンを押しちゃってVAIOは休止モードへ・・・

「いやいや、これはまだ私が悪いのだ、両手で丁寧にコネクタを差し込もう」と、今度は左手でVAIOを支えようとすると、左図のようにミュート(消音)ボタンや、ボリュームボタンを長押ししちゃって、これまたキ~ッとなってしまうのです。

今はだいぶ慣れてきたので、そういった誤操作はあまりしなくなりましたし、仮にしたところで致命的な状況ではないので、まぁいいかとも思うですが、Type-Tは、使い込まれた文房具を標榜するそうですから、このあたり、ぜひ考慮いただけると嬉しいですね。

今日の学び
<電源コネクタの力軸(?)に、ボタンを置かない>



【リロード 2005.9.29】
 9/15に発表された、新型のType-Tでは上記が改善されました。
 すばらしい! 音楽プレイヤーよりVAIOの方がフットワークいいですね。
 具体的には、電源ボタンがヒンジの内側に入り音量ボタンとヘッドフォン端子の場所を入れ替え、予期せぬボタン操作をアフォーダンス的に防いでいます。

ヒトがつくりしもの

2005-07-06 16:14:20 | 閑話
北九州訪問の後、本当は家族旅行で四万十川に行く予定だったのですよ。
でも連日の豪雨で、土砂崩れの危険性や、せっかくの清流も台無しかなと思い、急遽キャンセル。

一路、山口県長門市へ。

ソウル出張の前に読んだ、「蟲師 6巻」のおまけページで、作者の漆原さんが棚田を見ると和む、なんて話をされていました。
そういえば、ホンモノの棚田を見たことがない私は、無性に見たくなり・・・という案配。

途中立ち寄った、金子みすゞ記念館香月泰男美術館もかなりレベルが高く満足。


で、棚田です。
たしか「ハウルの動く城」で、いい機械と醜悪な機械があるようなことをハウルがさくっと言っていたような記憶があります。その感覚、すごくよくわかるんですよねぇ。

昔から自分には美しい人工物と、そうじゃないものとの区別がすごく明確にあって、前者の代表として、翼とか、プロペラがありました。実際、そういうメンタリティから大学でも流体力学を専攻することになった次第。

棚田はもちろん機械じゃないわけですが、それはやはり天然の存在ではなく、明らかに人工物です。でも、(少なくても人間の私の目には)ちゃんと周囲の景色や自然ととけ込んでいて、それは人工であるということをまったく意識させない美しい風景そのものなのです。
水をたたえる新緑の時期も、稲穂が実る秋もきっと異なった調和を見せているのでしょうね。
定点観測を決意。

そうそう、棚田のあと、ふと山の頂きから風力発電のプロペラがつきだしている風景に出会いました。オタク永井としては、エヴァンゲリオンにも通じるこの組み合わせ風景にも感動。

こういう美しいインターフェースやハードウェア、サービスを目指して歩き続けたいものです。






蟲師 (6)
漆原 友紀
講談社 (2005/06/23)
おすすめ度の平均: 4.57
4 あんたらの光る酒を飲んでみたくなって…
5 感動っす!!
4 口の堅い人々




北九州は燃えているか?

2005-07-03 23:07:49 | 閑話
ソウル出張の帰りがてら、せっかくなので北九州で文化事業を推進している友人に会いに行った。

ソウル・福岡間のフライト、なんと1時間。こりゃ想像以上に近い。

街中では7/1から解禁になった小倉祇園太鼓を練習する老若男女が打ち鳴らすドンドンという低音があちらこちらから聞こえてきて心地よい。
練習場には小さな子どもたちも多く、親や兄弟、近所のオトナが太鼓をたたく姿をじっと見つめている。
こういう世代間の交流はいいなぁ。こうやって文化が継承されていくのですね。


田舎町ですよ、と友人は謙遜するが、なんのなんの。
ゼンリン、TOTOといった全国区の本社があったり、隠れファンが多いシャボン玉石けんの本社も北九州市。
昨年、シャボン玉石けんの社長・森田さんにインタビューする機会があり、すぐファンに。以来、我が家では液体石けん→固形石けんの回帰と、石けんシャンプー(石けんをパウダー状にしたもの)を利用中。

そうそう、ビッグイベントとしては、2006年3月の新空港開港でしょうか。
しかも、スターフライヤーという新しい航空会社もできちゃった。また、そのデザインもすごい。たぶん旅客航空機では初めてと思われる、黒を基調としたもの。ひゃー、かっこいいー。


焼酎も肴もうまい。
久しぶりに唐辛子のない料理に舌鼓をうつ。


PS
 インチョンからの帰国便、実は危うく乗り過ごしそうになってしまったのです。
 インチョン空港って、てっきり地下鉄のインチョン駅から接続しているものとなぜか思いこんでおりまして・・・。ただのド田舎に到着したときは焦りました。
 みなさんのおみやげは新大久保で購入することにします(^ ^;
 


韓国のへぇ

2005-07-02 23:53:59 | ネタのタネ
オシゴトの話はできないので、韓国について初めて知ったことなど。
ガイドブックとかでノウンな話だったらスイマセン。
また、検証していないので、ガセだったらごめんなさい(^ ^;

・キャンセルできるエレベータ
 おお、やっぱりあるじゃないですか!
 間違って押してしまったフロアのボタンをもう一度押すとキャンセルできます。
 利用したエレベータは全部キャンセル可能でした。

・マンションの壁の企業名
 空港からソウル市内に向かうとき、林立するマンションの壁に、現代、LG、SAMSUNGなどと企業名が記載されていますよね。
 私はてっきり企業広告だと思っていたのですが、これはそのマンションのデベロッパーを示しているそうです。
 サムソンなんて電機メーカと思っていましたが、建設業でも有名だそうで。

・韓国のPSP
 なぜか、韓国語対応はされていないのに発売されています。
 そして驚きはインターネットのフルブラウザがUMDに焼かれ、同梱されています。
 フルブラウザだけ入手しようと思ったのですがダメでした(^ ^;

・世界に1つだけのスターバックス
 ソウルにも、スタバが数多くあるのですが、ここインサドンにあるスタバだけは特別。
 看板のロゴがハングルなのです。
 インサドンは韓国の文化中心地ということで、英字の表記が規制され、ここのスタバだけが世界で唯一、現地言語表記の看板にあいなったそうです。
 そうそう、肝心の値段のほうは日本とほとんど変わらず、がっくし。

・飲み会のシメはビール
 日本では飲み会のシメはラーメン、なんて方が多いと思うのですが、ここ韓国ではビールだそうです。
 辛い料理に甘い酒とくれば、なんとなくビールで口直しなんていう感覚もわかる気がします。
 なるほど、それで韓国のビールはみんな水っぽい(薄味)のね・・・

・カーナビ
 日本でカーナビといえば専用の機器をイメージしますがが、韓国は違うようです。
 もちろん専用機もあるそうですが、走行中横の車をのぞくと、PDAやノートPCを利用したカーナビがよく目につきます。
 で、もっとすごいのがケータイでカーナビ。
 なんでも1日100円ぐらいのサービスを利用すると、ケータイがカーナビに大変身。
 「次の交差点を右に曲がってください」というふうに、音声ガイダンスがされるそうです。
 これ、誰か日本でWINケータイで実現してみたらどうでしょう? 日本では儲からないかなぁ・・・
 
 おっと、今ホテルで見ているショッピング番組でPDAサイズのカーナビ専用機(CASIO製FineDrive)が売られています。
 379,000ウォン。

・エコロジー
 コンビニでの買い物につきものの例のビニール袋。韓国では有料だそうです。
 レジで支払いを済まして、ビニールに入れてくれるのを待っていたら、次のヒトの会計を始まったので、
 焦った私は、商品を素手で抱えて出てきちゃいましたよ。
 ま、エコでいいですね。でも、パン屋の紙袋はちゃんと入れてくれます。