マロリーな日日(にちにち)

癒し系ソフト・ボトルメールの作者が、ガツガツ派では見えないゴロゴロ視点で、ビジネスの世界を観察していきます。

リクルートを語った書籍のダントツ

2007-04-22 01:04:21 | ソニーとリクルート
暗い奴は暗く生きろ―リクルートの風土で語られた言葉

新風舎

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さすがです、イクさん!
ぼくは、出版直後の1月にこの本を書店で見つけ、「あー、イクさんのリクルート時代のエッセーをまとめたんだぁ」とか、「もっとウリに走ったタイトル、オビにすればいいのに」とか、「レイアウトにゆとりがあって良いけど、イクさんを知らない一般のビジネスマンには1,680円は高く映るかなぁ」とか勝手なことを思いつつ、机に積んでおいたままでした。
やがて奥さんから、あの本面白いね、などと先に読まれたうえに、イクさんって素敵じゃない、などとビジネス本には全く興味がない山口県人妻の発言にただならぬ予感がし、その後、あっという間に読了・・・。

実はぼくもリクルート本を出版しちゃおうかなぁんて思っていた時期がありまして、リクルート社関連の現在流通している書籍はほぼすべて持っていて、読みました。
これ、リクルートの風土など全体像を描いたものの中でダントツのナンバーワンです。
秀作。リクルートOBが読んでも、新発見のなんと多いこと! イクさんはこれまで語られたリクルートの常識を、自分の頭で一歩、思考を進めているが故に、薄っぺらいキーワードだけが並んだ類書とは雲泥の差。さすが、もと新聞記者。考えるとはこういうことだったのかと、個人的には小林秀雄より、インパクトを受けたりして。

この本はまた読み返すだろうなぁ、自分の棺桶にいれてもいいか、という本を、みなさんは何冊お持ちか?
しかして、「暗い奴は暗く生きろ」はぼくにとってそういう本だったのです。

世はティップス中心の断片化したビジネススキルの紹介本が目立つが、この本はそういうものとは一線を画している。ビジネス書のようでもあり、人生の指南書でもあるようなそんな印象。

読後の興奮が収まらず、仕事で悩んでいる年上の友人に、これ読んで元気出してください、と思わずプレゼント。(イクさんを知らない、リクルート社には興味がないという人でも訴求する内容です)
また、イクさんにも本の感動のお礼にと、「暗い奴~」の中で、イクさんがお探しの古書の存在を知り、日本の古本屋(http://www.kosho.or.jp/)で入手、お送りする。
そしてすごく喜ばれ、ぼくも嬉しかった。

本書はすでに2版を迎えるそうで、ちょっと目立った誤字(^ ^;もとれることと思います。保存版としてまた購入させていただきます。

ぼくがリクルートに入社したときの最終面接がイクさんだった話や、出版元の新風社の素敵なお店の話などはまたの機会に。

たったひとつではない冴えたやり方

2007-04-01 11:37:37 | 新規事業
未来を変える80人 僕らが出会った社会起業家

日経BP社

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「80日間世界一周」ならぬ、80人で世界一周という企画からいいじゃないですか。
環境や貧困、情報格差といった社会的な問題に対し、事業的にも成功している取り組みには、勇気とやる気をもらえます。
社会起業家(ソーシャルアントレプレナー)、社会企業(ソーシャルカンパニー)というネーミングもいいですね。
IT長者より、こっちでしょ。

もともとぼくがこういうビジネスに共感をもつようになる原体験は、リクルート社での経験です。
21世紀ではあまりありがたみを感じない情報誌ですが、前世紀では就職、住宅購入などクローズドな世界を情報的にオープンにし、自由化をもたらしたという画期的な社会企業だったのです。創業以来、リクルート社は情報メディアというずば抜けて強いビジネスモデルに自身を拘束されていますが、ソーシャルというキーワードで新規事業を模索するのもいいかもしれませんね。

さて、個人的な志向からいうと胡散臭い団体が多々混じっていそうな環境ど真ん中問題(ぼくにはそれを見分ける能力がないので)より、既存のビジネスの延長というか、発想の転換というか、新規事業的に次の事例が参考になりました。

フォーメーション・カーペット社(ネパール)
 工場の隣に学校を作る。というか、元々教育普及を目的にしていたが、ストレートなやり方では何度も挫折し、ならば、ちゃんと採算がとれる企業をつくって、そのお金で学校を作ろうとした。
 →女性と子どもを不当労働から解放
 →ネパールのカーペット工場の14歳以下の労働者50%(97年)→5%(99年)に。

プルキ協会(バングラディシュ)
 工場内に保育所をつくるよう促し、その保育所の運営、職員や母親への指導を行う。
 従業員が集中して働けるので生産性up、子どもの健康、教育に有益。
 これって、日本より進んでいると思いませんか?

グラミン銀行(バングラディシュ)
 もう、2006年のノーベル平和賞でおなじみですね。
 貧困層向け、無担保低額の教育つき融資。
 行員には従来の銀行と同等の給与が支払われているとのこと。すごいねぇ。
 この次はグラミンテレコム(国内シェア2位)。
 村人が融資をもとに、ケータイを購入。そのケータイで貸しケータイ業をはじめ、生計をたてられるという流れ。

セフケム社(ドイツ)
 塩素溶剤の販売業→塩素溶剤による洗浄サービス業に業態転換。
 塩素の使用量は1/10に、売り上げup、顧客満足。

ドミニ・ソーシャルインデックス社(アメリカ)
 社会的な姿勢の高い企業のみを対象にした投資ファンド。たばこ、武器、ポルノ、アルコール、ギャンブル、原子力関係の企業は排除。市場平均より10%高いパフォーマンスも実現しているのがすごいですな。
 募金はちょっと、という人もこれなら気持ちよくお金を提供できそうですね。

ジャイメ・レルネル氏(ブラジル、元クリチバ市長)
 当時33歳。どんな街だって2年あれば変えることができる、お金がないときこそ頭を使わなくちゃ、という方針で、費用のかかる地下鉄建設よりバスに注力。バス会社には乗客数ではなく、路線距離に応じて助成金を出したため、郊外にもちゃんとバスが開通。地下鉄建設の1/200の予算で公共交通を確立。
 再選後、スラムの住人に「ゴミを食品に交換します」というキャンペーンで、河川の汚染が止まり、地元漁民の収入は3倍、農家は無料の堆肥を手に入れ、街はきれいになったという次第。
  いやはや、妙な組織なんて作らなくても、天下りや談合を抑止する冴えたやり方はあると思うのですが、いかがでしょう。

IDEAAS社(ブラジル)
 電気のない地域では、灯油やろうそくで毎月10ドル相当の支出が必要。ならば、月10ドルで電気を導入できればいいんじゃないということで、ソーラーパネルのレンタル事業を開始。電力会社が見放した過疎の村での収穫高が4倍に増え、都会に出ていた若者が戻ってきて農業を再開し始める。
 日本にいるとなかなかこういうことには気がつかないですね。旅は発想を鍛える。

・・・などなど。事業の運営的に?な事例もありますが、まぁ、その謎を考えるのも一興でしょう。
新規事業に興味のある方に推薦です。