マロリーな日日(にちにち)

癒し系ソフト・ボトルメールの作者が、ガツガツ派では見えないゴロゴロ視点で、ビジネスの世界を観察していきます。

チャングムの唯一の欠点(2/3)

2005-03-03 18:41:14 | biz basic
今日はチャングムの◎、その2です。

【◎:ユーザエクスピリエンス】
 チャングムの最大の◎は、最良のエクスピリエンス(彼女の場合は料理)を相手につねに提供すること、あるいは提供しようと努力しているところだと思います。またこの最良の体験提供に信念を持っているところが、同じビジネスパーソンとして尊敬に値すると感じています。

 チャングムは「水をもってきて」という些細な要求に対しても、現在相手がどのような状況であるか観察し、ヒアリングし、その相手にとって最良の水をもってこようと努力します。暑い夏の日に相手が水といえば、チャングムは相手の額に浮かぶ玉のような汗を見て、一つまみの塩を入れた冷水を大きめのコップに入れて持ってくるでしょう。夜寝る前に疲労困憊した相手からのオーダであれば、60度くらいの白湯を持ってくる人です。

 ユーザエクスピリエンスといえば、今流行の新しい概念のようにも思えますが、そんなことはありません。

 「その相手の状況を時間軸を通して認識できる」ことが一番であり、相手に興味を持ち、観察を行い、この現在の状況に至るまでの相手の過去時間を想像、ヒアリングします。また、これからその相手に起こることをシミュレーションし、相手と自分の立ち振る舞いを決定すればいいのです。
 ちょっと難しくいいすぎかもしれませんね。要は相手をいかに「おもてなし」すればいいか単純に考えるだけです。でもこれがなかなかできない。美しい立ち振る舞いと同様、そういうクセがついているというか、トレーニングや場数を増やしてカラダが自然と獲得するのがエクセレントですね。

 「おもてなし」と聞いて過剰な接待モードに入るというのは言語道断です。チャングムはグルメな明国の使者が実は糖尿病だということを知り、あくまでも質素な食事を供しますが、周りの反対ばかりか、明国の使者その人からも顰蹙を買います。しかし彼女は真のユーザエクスピリエンスを提供すべく、その信念を曲げません。やがて命がけで質素な食事を提供続けた彼女の気持ちは明国の使者の心を打ち、めでたしめでたしとなるわけです。


 リクルート時代にはこういうおもてなしを先輩から徹底的にトレーニングを受けました。お客様が来社されるときを考えましょう。時間的に表玄関がしまるころであれば、裏口の守衛さんにお客様の来訪を事前に告げ、エレベータを降りた後の導線上にわかりやすい案内を張り、事前に好みをヒアリングしたお弁当や飲み物を用意していると・・・。「おーい、永井。今日のBGMと香りはなにを用意した?」と驚くべき突込みが入ることもよくありました。件のミーティングはブレストのためのミーティングでアイデアが気持ちよく出るよう、あるいは煮詰まったときに音楽や香りで気分転換しようね、という下準備だったりするわけです。

 やがて、後輩にこういうトレーニングを施すようになり、お客様が帰るときにノコノコとわれわれの後をついてくる後輩にそっと叱咤します。

「こら!、お前は先に走ってタクシーつかまえてくるの! ぼっとしてないで行動をシミュレートせんかいっ」と。今ではこの後輩も立派にR25という媒体を新規立ち上げし、同じように後輩に指導していると思います。



PS
 おもてなし、という言葉でこの本を思い出しました。
 この本に、品川のホテルパシフィック内の床屋さん「理髪佐藤」のことが書いてあります。
 ぼくはこの床屋さんで過ごす時間と散髪に1万円を支払いますが、惜しいと思ったことは1度もありません。
サービスの天才たち

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