マロリーな日日(にちにち)

癒し系ソフト・ボトルメールの作者が、ガツガツ派では見えないゴロゴロ視点で、ビジネスの世界を観察していきます。

二人の恩人

2007-03-10 16:48:55 | ソニーとリクルート
 恩人と呼ぶほど接点があるわけではないけれど、ぼくのリクルートとソニーのサラリーマン生活において、この二人にはやはり感謝の念があります。
 リクルートの創業者である江副さんと、ソニー在籍時代のCEO、出井さんです。
 その二人が、たまたま同時期に新書を出されたので、その短い紹介。

リクルートのDNA―起業家精神とは何か

角川書店

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「リクルートのDNA」
 大学卒業から丸々15年間、リクルートに在籍していたぼくにとっては、あまりのも知りすぎる話というか、文字通りDNAと化してしまって面白くないと同時に、恐ろしさを感じました。あのときリクルートに入社していなければ、ぼくは性格部分も含め、今とは大きく違う人生を歩んでいたのではないかと確信しました。

 とまれ、創業者である江副さんがDNAと題した文章を残すのはきわめて大事な仕事だと思います。現場での行動規範を定めるのはこのようなDNAですから、DNAの構築や変遷の歴史は必ず記述する人が必要です。現役の人は忙しくてそれどころではないでしょうから、江副さんやOB、あるいは経営学の先生といった人たちの役割かもしれません。ぼくがリクルートを辞めるときに書いた遺書も、ベテラン管理職には暗黙知になってしまった振る舞いを、若手に形式知として伝えたいという思いがあったからです。

 87年入社のぼくは、その年、1度だけトイレで一緒になったこと以外、江副さんとの直接な面識はありません。すでに江副さんを見たことがない役員も誕生しています。企業DNAの歴史的記述者、生証人が必要になるほど、リクルートも齢を重ねたということです。



迷いと決断

新潮社

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「迷いと決断」
 昨年末、この本を店頭で見つけてまず驚いたのは、「わっ、出井さんが新書かよっ」ということでした。ふつう、出井さんほどの大御所ならこういう、私の履歴書みたいな内容は格調高い(?)単行本で出したいところ。それを、700円の新書ですから、多くの人、とくに若い人に読んでもらいたかったのか、あるいは新潮社の編集者のクドキがうまいのか、はたまた新書のステータスがあがってきたのか、とにかく、そんなどうでもいいことが気になって、「出井さん、偉いなぁ」なんて妙に感心してこの本をレジに持っていたのでした。

 元ソニーといっても、ぼくが所属していたのはソニーのソフトウェア開発の専業子会社で、ソニー本社の所属ではありません。その辺境の一社員がなぜ、出井さんと接点を持ち得たかというと、ソニーユニバーシティという出井さんが作った社内教育機関のおかげです。ぼくが在籍していた頃は、ソニーの新任役員や関連会社の役員になる方々のエグゼクティブ向けレギュラーカリキュラムと、唯一公募選考のコースと2つありました。ソニーグループ16万人を対象とした選抜で、最年長の僕を含む14名が、まぁ一万倍超の競争率で選ばれ、日常業務ではあまり出会えないラインの実力派VIPから直接講義を受けたり、10年後のソニーの製品・サービスを出井さんに直接プレゼンする機会に向けてメンターとしてのサポートを受けていたりしていました。

 一般のエレベータでは入ることができない、ソニー本社の役員会議室で初めて目の前で見る出井さんは、ぼくのこれまでの勝手な印象からは小柄に映りました。

 さて、この本を読んでまず感じたのは、CEOの出井さんであっても、自由にソニーをいじることができなかったんだなぁということでした。例えば、本の中では次のようなことが記してありました。
 ・ソニー生命の売却
 ・ホールディングカンパニーの設立
 ・役員の報酬開示

ソニーという組織は、CEOにとっても怪物なのだと認識を新たにした次第です。
出井さんがソニーを去ってから自ら会社を立ち上げますが、それは必然のことだったのでしょう。

蕎麦さかい

2007-03-03 23:36:13 | ヒト
年明けにリクルート同期のUくん(現GE)とランチをした際に、酒井さんの話になった。
酒井さんというのは、リクルートの元役員。直接の上司・部下の関係にはなったことがないものの、最後まできっちり責任をとるリーダーぶりは、端からでも自然とうかがいしれるものがありました。

2002年に「経営の提言」という社内論文コンテストで優秀賞をとったときのコメントに酒井さんだけがただ一人、「永井、これは遺言のつもりじゃないだろうな、一緒にリクルートを盛りあげようぜ」と、論文の善し悪しについてではなく、ぼくがリクルートを辞めようと思っていたことをズバリ見抜いて、そんなありがたいメッセージを残してくれました。

リクルートを去るにあたり、ぼくはその論文をまさに「遺言」と思って書いていただけに、酒井さんの直感には最後までびっくりさせられたのです。

で、その酒井さんがリクルートの役員を退任され、何をはじめたかというと・・・蕎麦屋、なんです。
50代で、リクルートの役員経験者だったら、ふつう、どこか別の会社の経営者になっちゃいますよね。
でも、酒井さんは蕎麦屋なんです。
酒井さんがかねてより趣味は蕎麦打ちで、しかもプロ級の腕前というのは聞いていました。
しかし、こりゃまたえらく大胆な進路。
余生に十分な資産形成があるとはいえ、なかなかできない選択ですよ。

お店は世田谷の自宅。営業は金・土・日の昼または夜。1日1客だけの贅沢な営業。
やっと今日、予約がとれて、4,000円ランチに舌鼓。
まず前菜や蕎麦以外の料理が旨いのに驚きました。
蕎麦は旨い、でも、他は・・・と思っていました、スイマセン、酒井さん(^ ^;
そして、最後は蕎麦を2種。つなぎの配分、素材、太さを変えたアレンジで心憎い演出。
蕎麦好きの方ならうすうす感じていると思いますが、手間暇がかかって、なおかつ材料が新鮮、かつ高価という蕎麦は事業的にペイするのはきわめて困難というか、まじめに作るほど割の合わない商売。
だからこそ、商売100%ではなく、半分趣味もはいちゃっている酒井さんの店でこそ本物の蕎麦が楽しめるというわけです。

蕎麦さかいの難点は、ぼくのようなぺーぺーのリクルートOBにとって、あの酒井さんに君づけで呼ばれちゃったり、あの酒井さんがせっせと仕事をしているときにだらりんと酒をのんでいたりと、ちょっと恐縮、申し訳ない気持ちになることです。
ま、うちの奥さんは旨い、旨いと純粋に満喫していましたが。

みなさんも機会があれば、旨い蕎麦懐石と、新しいライフスタイルを体験してみてください。

蕎麦さかい
http://soba-sakai.com/