人材マネジメントの枠組みに関するメモ
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日本の人事部・アメリカの人事部―日本企業のコーポレート・ガバナンスと雇用関係
サンフォード・M. ジャコービィ
東洋経済新報社

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人事部がどのような機能を、どのような方法で、どこまで(どの程度の権限の強さをもって)果たしているか、ということが、理論(戦略論、組織論、コーポレートガバナンス論)、歴史(人事管理の歴史)、事例(日米5社ずつ)、アンケート調査、の各側面から扱われている。

これまで日本での人事改革の議論は、人事制度すなわち人事に関わる基準やルールの話ばかりだった。それは人事部が各種の人事権を持つということが自明であったから。人事部が人事に関して方針を出し、人事を行う、ということを前提に、その内容を議論してきたのである。しかし、人事部が全く力を持たないとしたら?現場から「自分達で採用して育成して給料を決めているんだから何も介入してくれるな」と言ってきたとしたら?・・・現に歴史的にはそのような時代もあったのである。そこから出発して、人事部の機能及び権限がどのように確立していったのか?それはどのような歴史的な変遷を経たのか?・・・ということがフォローされている。

興味深いのは、「市場vs.国家」の議論と、「小さな人事部vs.大きな人事部」の議論はパラレルであるということである。現に、政府が規制を強めた時に人事部が大きくなったことがわかる。よく俗説で、経営企画系や財務系の役員と、人事系の役員とは、仲が悪いというようなことを言うが、それが何故か、ということも、本書の議論で説明できるようになる。また、経済政策の議論においてはなかなか登場しない、国家でも法人でも個人でもない「組合」という主体があるが、人事・労務分野においては日米どちらにおいても「労働組合」が決定的に重要な役割を果たしてきて、そのことは経済政策の議論に市場原理を補完する視点を持ち込むものである、ということにも気づかされる。

以上のように、人事制度論よりも上位の視点から、そもそも人事部はいかなる正当性/合理性に基づいて、どのような手段で、人事に関する影響力を行使しているのか/行使してきたのか、ということを論じているのがこの本であり、「成果主義」の議論を不毛と感じた時にはこのような一つ上位の視点に立つことは必須だと思う。翻訳なので少々読みにくいところもあるが、しかしきちんと訳してあるようだし、内容はしっかりとした論文にもなっているものなので、そこらのビジネス書とはレベルが違う。うーん。



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