資本を初めとするリソースのグローバルな移動の中で、経営のリスクが高まっているが、リスクを取りながら攻めのリスク管理を行うべし、という特集である。本号の中の別の特集、東芝の西田社長の経営スタイルについての特集も、一緒の文脈の中でとらえるのがよいだろう。
本特集を読みながら、(金融機関はさておき)経営及び業務の日常において「リスク」という言葉を使うものかどうか、すなわち、「これからはリスクを積極的に取っていかないと駄目ですよねえ」というような会話をすることが考えられるかどうか、考えてしまった。結論としては、使う必要はないように思う。
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記事で扱われているのは、次のような環境変化に対して、
- メーンバンク制の終焉と、資本がグローバル資本市場にさらされること
- 国内市場の縮小と、市場のグローバル一体化
- 製品の急速なコモディティ化と、水平分業と規模の経済の威力増大
次のように対応する、ということ。
- 資本市場の視点を経営に組み込む(ALM、ファンド活用)
- 国外に出て行くために確かな情報収集ルートを築いていく
- 半端ではない集中と選択の断行
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そのことを経営の枠組みに一般化すると、次のような状況が生まれているのに対して、
- 財務 - 資本市場の圧力増大
- マーケティング - 世界一斉の立ち上がりと急速な価格低下
- オペーション - 品質問題の影響範囲の拡大
- イノベーション - 特定テーマへの技術集約、または経路の異なる破壊的イノベーションの予期の必要性
- 人材 - 既存人材の陳腐化
次のように対応すべきということになるだろう。
- 財務 - 資産はできるだけ軽くしておく。
- マーケティング - カスタマイズ容易にする。在庫を持たない。
- オペレーション - 工程数を縮め、標準化する。
- イノベーション - 絶え間のない集中と選択のプロセス。常に出口を意識する。買えるものは外から買う。
- 人材 - 人材プールを切ったり貼ったりしやすくしておく。
総括すると、積極的なリスクテーク/管理が必要ということは、ヒト/モノ/カネを機動的に動かすことができ、市場対応スピードを極限まで早くできるような、「軽い経営」がますます求められる、ということを意味することになるだろう。