業績のV字回復へと大改革を遂行した中村邦夫社長が会長に退き、大坪文雄社長の新体制に移行しながらさらに革新を続ける松下電器についての特集。
連結で30万人の従業員を方向転換させ、生産も、流通も、商品開発も、マーケティングも、販売も、全てを変革し、しかも世界市場に向けてその意思を浸透させる、そのことには途轍もないリーダーシップが含まれていると思う。
そのリーダーシップの源泉を考えてみたい。・・・というのは、松下のトップの視点に立とうとしても、想像しにくいというか、ちょっとうまく考えられないのである。もちろん、一介のマネジメントコンサルタントが巨大企業のトップの視点になど立てるわけがないのだが、しかし、その想像のしにくさというのは、ソニーやトヨタやホンダとはまた違ったものなのである。
- ソニーの、(テープレコーダーからウォークマンからCDからプレイステーションまで)大衆向け大型商品の創出を通じた、
- トヨタの、トヨタ生産方式/トヨタウェイのグローバル浸透による、
- ホンダの、(アシモからジェット機まで)本田宗一郎魂によるチャレンジの訴えかけによる、
・・・リーダーシップ発揮というのは想像できるのである。経営トップと一緒になって考えてみるつもりになることはできるのである。しかし、松下の従業員を一丸にさせる、その核になるものは何だろうか?従業員に何を見せて、「こっちだ!」「こういうことだ!」「やろう!」と声をかけるのだろうか?それが想像しにくいのである。「経営の危機を脱するためには創業理念以外のものは全て破壊する」と言ったときに、破壊の先の創造に向けて、道標となる共通のイメージを、どのように従業員は形成したのであろうか?
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そう、「創業理念」。おそらく、経営トップのヴィジョンによるリーダーシップというよりは、松下の従業員には松下幸之助の創業理念が生きており、それが、全従業員をガイドすることによって、従業員は一つの方向に向かうことができるのだろう・・・と考えてみて今度は、その松下幸之助の創業理念とは何か、ということで、はたと行き詰まってしまうのである。松下幸之助の創業理念とはこういうもの、ということを思い浮かべられますか?これが思い浮かばないのである。それがソニーやトヨタやホンダとの違いなのである。
- ソニーの井深さんの、愉快なる町工場でのテープレコーダー開発
- トヨタの豊田喜一郎の、現地現物主義による発明と改善
- ホンダの本田宗一郎の・・・
・・・これらは誰もが思い浮かべることができると思うが、松下幸之助が、先人として仕事をしているイメージを思い浮かべられるだろうか?伝記に出てくる、二股ソケットを発明した、それを自転車に乗って売りにいった、というのがそれにあたるとは思わないですよね?
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松下幸之助の理念を一言で言ったらどのようなことか?松下幸之助の理念を学問的に昇華して世界に普及することをミッションとしたPHP研究所のホームページを開けてみれば、さっと額縁に入った理念の説明が出てきて、わかるのではないだろうか・・・と思っても、実際にアクセスしてみればわかるが、そのようにはなっていない。そういえば、松下政経塾ではどのようなことを教えており、松下政経塾出身の政治家は共通項としてどのような政策を主張しているか・・・・ということだって、イメージできないですよね?
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PHP文庫に入っている松下幸之助の著作集くらいならば5冊くらい持っているので、日曜日、ついにそれを引っ張り出して見てみました。(続く)