人材マネジメントの枠組みに関するメモ
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アニメが「クールジャパン」の象徴となり、ハリウッドもアニメ原作の権利を買ってその事業化に乗り出す中で、その経済価値を日本のアニメ業界、中でもアニメクリエイター達は享受できず、潤うのはハリウッドばかり、日本のアニメ産業は崩壊しかねない、ということに警鐘を鳴らしている記事。

個人請負の職人の地位に甘んじてきたクリエイター達は、連携し、あるいはプロモーターを前面に立て権利を主張し、単価を高めていくことが必要ではないか、といった指摘などが記事の中ではなされている。

しかしそれは最低限のことであって、アニメ産業が、プレイヤー個々にインセンティブを与えて創造性を引き出す、現代産業として成り立つためには、仕事の内容の体系化、組織化、システム化が必要になると考えられる。

以下、気づいたことを3点メモ。

1) アニメの原画自体を価値の高い著作物と見なすべきではないか。例えば、この原画 http://www.youtube.com/watch?v=amnd78RbLwE (音がするので注意!)の原画マンの原画作成技術は、一流作曲家の作曲技術にも匹敵するものではないかと思う。この原画の著作権が原画マンに帰属せず、「映画の著作物」としてアニメ全体として監督に帰属したり、さらにそれがテレビ局に譲渡されたりする、などということはあってはならないと思う。そのためには、この原画自体を中間成果物ではなく成果物として定義するような、成果物としての確定・納品のプロセスが必要だろう。

2) アニメを一枚一枚手で描く製作方法は、続かないと考えるべきではないか。職人芸による品質に価値があるとしても、生産地は後発国に移り、製作単価に強い低下圧力がかかるのは必然ではないか。のみならず、今後は製作過程が自動化されることは目に見えているのではないだろうか。日本のアニメ産業の役割は、アニメの製作過程の自動化とそのソフトウェアビジネス化に移るべきではないだろうか。例えば、人の動きを撮影したビデオから人の動きの輪郭を取り出し、その動きを、拡張表現ソフトによって表現目的に応じた劇的なアニメらしい動きに変える、ということができつつあるという。そしてその晴れの発表機会がカリフォルニアにおける発表であり、その技術を用いた事業化の機会がカリフォルニア/シリコンバレーにこそある、ということこそが最大の問題ではないか。(下記は、 http://www2.shobi-u.ac.jp/pr-office/relaytalk/ninth.html より岩本賢一氏の発言)

「大学にはモーションキャプチャという装置があって、人間の動きをそのままアニメに変えることができるんですが、キャプチャーしたデータそのままだと、死体が動いているように不自然に見えてしまうんです。物理的な人間の動きと、脳が判断する動きは同じでは無いので、誇張を加えることで見た目をより自然に見えるような表現を目指しました。」

「ロサンゼルスのコンベンションセンターで、約200人以上の観衆を前に25分間にわたり発表しました。会場には日本人もいましたが、多くはアメリカ人で、今間先生によると大学教授や学生だけでなく、美術関係の方やアーティスト、コンピュータメーカーの技術者など、いろいろな種類の方が来ていたみたいです。ここでの発表や映像作品が認められた人は、例えばピクサーといった制作会社にヘッドハンティングされる、といったこともあるようです。」

3) 「物語」や「キャラクター」の経済価値が、リスクをとって事業化した者にほとんど帰属することは当然ではないか。つまり、それらの価値を刈り取るためには、やはり世界に出て売らなければならない。「物語」や「世界観」そのものは、それが遠大、深遠、精緻なものであっても物語の骨子自体は著作物ではないし、そもそも物語というものは歴史的起源を持つ公的なものと考えられる。そして、それを特定のデザインに具体化した「キャラクター」は、それ自体の機能や性能を持っているわけではないので、それ自体の価値として値をつけることは難しいだろう。



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