サントリーの特集記事。サントリーは「未上場同族企業」であり、「株式市場」によるガバナンスは働いていないが、「顧客原理主義」によるガバナンスが働いているという趣旨でまとめられている。
サントリーでは、その一風変わったヒット飲料に見られるように(DAKARAとかなっちゃんとか)一見定石に反した活動が見られる。「真冬にビールのキャンペーンを行う」、「日記調査による、まだ顧客自身が気づいておらず明示的には表明されない、隠れた顧客心理を発掘するマーケット調査を重視する」・・・等。
顧客が表明しているニーズに対しては既にサービスが提供されているものであり、従って、常に顧客ニーズの裏、顧客心理の先読みをする必要があるのだと思われる。それというのも、同じ消費財であっても「シャンプー」や「洗剤」や「化粧品」と違って、「飲料」は機能を持たない。持たないわけではないがほとんどマージナルなものであって、顧客満足は専ら感覚的なもの、心理的なものである。
つまり、サントリーは「顧客心理のR&D」会社だ。そのようなR&D会社の経営とガバナンスが、「株式市場の声を重視する」ことに焦点を置かないことは容易に理解することができる。「市場の需要予測」だとか「技術開発動向」だとか「商品開発のパイプライン」だとか、投資家が普通投資にあたって依拠する情報によっては、飲料の将来の売行きを予測することが難しいからだ。つまり合理的な投資判断になじみにくく、従って投資家にはついてきてもらうしかない。(もっとも、安定的にヒット商品を開発し、既存飲料ブランドを維持することができるような、物流インフラ、マーケティングインフラの整備に対して投資をする、ということはありうるが、サントリーはそこで勝負しようとはしていない。)
また、「顧客心理のR&D会社」としての組織文化や評価・処遇のポリシーを持っていると理解できる。電通に似ているかもしれない。
| Trackback ( 0 )
|