ぴよこ日和

いらっしゃいませ。
きたむーです。
お芝居、ライブ、お笑い大好きです。

林クン(実名)

2007年04月19日 | 日記
4月19日(木)

【登場人物】
・林クン(実名)
・レジのお姉ちゃん
・うちのダンナさん
・私

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その日、パソコンで事務作業をしていたうちのダンナさんが言った。
「インクが切れた。換えのインクないの?黒のヤツ」
私は買い置きのインクがあるかどうかを確かめたが、残念ながら黒のインクの買い置きはなかった。
「買いに行く?」
「うん、そうしよう」

二人が出向いた先はべ○ト電器と言う、福岡ではそこそこの家電販売店だ。
プリンターのインクという物は、プリンターの種類によって適合するかしないかが決まっている。
うちのプリンターはE社の物で、適合インクのパッケージには、うさぎの写真が載っている。
小難しい機種の製品番号などを覚えなくても、うさぎの写真さえ載っていれば「これ」と解るこのシステムは、なかなかいい方法だと私は常にそう思っていた。

ベ○ト電器のインクコーナーに行き、あれこれと探してみた。
サッカーボールやチューリップ、イルカの写真のインクはあれど、うさぎの黒だけが置いていない。
「うさぎの黒が欲しいんですけど、ないんですかねぇ?」
レジのお姉ちゃんにそう尋ねてみると
「倉庫の方には在庫があるので取って来ます」と言う返事が返って来た。
とりあえずうさぎの黒はこのレジのお姉ちゃんに任せることにして、私はしばらく前に届いたこの店のDMの事を思い出していた。
確かTDKのDVD-Rメディア10枚入りが580円で売り出しだった筈。
せっかくここまで出向いて来たのだから、買える物は買っておこう。
そう思った私はDVD-Rメディアのコーナーで目当ての物がないかを探した。

「コレかなぁ?」
私が見付けたDVD-Rメディアは、確かにTDKのそれだったが、そこには880円と書いてある。
(あれ?コレじゃなかったのかな)
私はその辺りをフラフラしていた店員を捉まえた。
「こないだDMでこのDVDが安いって書いてあったんですけどね。値段違うんですかね?これだと思うんですが」
「・・・えー、わかりません。レジに訊いて下さい。僕じゃわからないんですよ」
「・・・」
そのやり取りだけで私はソイツが「使えんヤツ」だと言う事を見抜いてしまった。
言うに事欠いて「僕じゃわからない」じゃねーだろ。わかんなきゃ、お前がレジの店員に訊いて来い!
ソイツのあまりの対応にイラッとしたのは言うまでもない。
そして早速その事をうちのダンナさんに御注進しに行った。
「アイツ、使えんよ」
「なんで?」

その時レジのお姉さんがやって来た。
手にはうさぎの黒のインク1個。
「あー、2個欲しかったんですけど・・・」
「えっ、あー・・・あ、林クン!倉庫に行ってうさぎの黒もう1個持って来て」
林クンと呼ばれた店員はさっきの使えんヤツだった。
(ややや、あいつに頼んで大丈夫か?)
不安をよそに林クンは店内をフラーっと移動してどこかへ消えて行ってしまった。

私はそのレジのお姉ちゃんにTDKのDVD-Rメディアの事を尋ね、それがDMのそれである事を確認し、会計を済ませた。
その時林クンがやって来た。
「在庫ないんですけど」
「そんな筈ないよ。わからんかったら○○さんに訊いてみてよ」
レジのお姉ちゃんは私達に向かって「すみません」を連発していた。
「いえいえ、急いでませんからいいですよ」
私が鷹揚な返事をしたのは、『林クン』が何かをやらかしてくれるのを期待したためだ。
そして林クンはやっぱりやってくれた。

再び店内に戻って来た林クンは、私達の前でインクコーナーを虱潰しに探し始めたのだ。
(コ、コイツ・・・一体どこ探しよん?ええーと、そこになかったから倉庫から持って来いって言われたんだよねぇ?)
私はうちのダンナさんの方を見た。
うちのダンナさんが私と同じ事を考えているのは、その顔を見て解った。
二人で笑いを堪えて林クンを見ていると、レジから素っ頓狂な声が響いた。
「林クンっ!そこにあるはずないじゃない!そこにないから倉庫に行って来てって言ったんだよっ」
レジのお姉ちゃんの声で、私達の我慢も限界に来た。
「ほらーやっぱり使えんやったやろ?」
私が小声で言うとうちのダンナさんも「そんな事言っちゃダメだよ」と言いながら笑っている。

「やっぱり在庫なかったです」
そう言いながら林クンが戻って来た。
「うさぎなかったの?うさぎの黒だよ」
レジのお姉ちゃんもすっかり『うさぎ』と言う言い方に馴染んだようで、私はそれがなんだか可笑しく思えた。
しかし今日のところはうさぎの黒は1個しか手に入らないようだと悟った私は、
「今日はとりあえず1個でいいです」と言って会計を済ませた。

するとその時。
「うさぎってこれの事ですか?」
そう言って小走りにやって来たのは林クンだった。
あれからまた倉庫に行って確認してきたようだ。
使えない林クンはやっと「うさぎの黒」が何を指しているのかを悟ったようだ。
レジのお姉ちゃんは、本当に申し訳なさそうに「すみません」を連発し、
私とうちのダンナさんは死にそうになる位に可笑しくて大笑いし、
やっと念願の「うさぎの黒を2個」手に入れたのだった。

「しかし、使えんヤツってのはどこにでもいるねー」
「あんだけ使えんヤツは久々に見たね」
「そこにないっつーから倉庫見て来いっつってんのにね」
「そんなに使えそうにない感じはせんかったけどねー」
「私やったら即クビやね」

私達は林クンを散々こき下ろしながら帰った。
使えんヤツは一生使えん。
林クン(実名)の前途は暗い。
コメント (6)
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