都市と楽しみ

都市計画と経済学を京都で考えています。論文や講演も。楽しみは食べ歩き、テニス、庭園、絵画作成・鑑賞、オーディオと自転車

首都水没 (土屋信行):東京を囲む河川と水害の歴史と提言、首都のリスク提唱は貴重

2014-11-29 05:02:49 | 都市計画
 卒業論文は「河川流域の総合管理に関する研究 岩木川流域をモデルにして」であった。当時卒論指導者の岡本さん(もと京都府技官)は「小規模」、「独立」、「分散」、「ネットワーク」の河川管理概念が出された。また、「治水」、「利水」、「環境(アメニティ)」を学んだ。これが縁で、「池田駅前せせらぎモール」のコンセプト・基本設計が初めて具体化したプロジェクトとなり、ウォーターフロントの研究の端緒となった。
 
本書ではさらに肥沃な土の養分確保という利水と洪水という治水のトレード・オフの歴史を明確にしている。また、上流と下流、右岸と左岸の遊水機能(論所堤、控堤)を考察し、その後の「河道内流下方式」(いわゆる高水方式で洪水を河川から素早く海に流す)への転換として荒川放水路と江戸川放水路の開削を描いている。

 自治体でばらばらな避難指示が問題となっているため、洪水は流域で守る、対処するという広域での管理を提唱し、アメリカのFEMA相当の設立を提言しているが卓見だ。

 関東の河川と洪水の歴史が面白く読めた。知見は:
・洪水に対する備えがお祭り(共同体)と水神信仰
・崩れない堤防は土で安息角を持つ富士山型:スーパー堤防
・地下水の組み放題は「共有地の悲劇」で流域の水なのに所有権で保護されるのはおかしい、日本だけ
・津波石、神社仏閣の立地、地名が災害の歴史を示す

 大ぶろしきだが、真面目な著作、楽しめる

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