都市と楽しみ

都市計画と経済学を京都で考えています。論文や講演も。楽しみは食べ歩き、テニス、庭園、絵画作成・鑑賞、オーディオと自転車

女人禁制の人類学 相撲・穢れ・ジェンダー(鈴木正宗):慶応大御所は相撲での女性看護師による土俵救助と大峰山の女人禁制を宗教ではなく習俗・禁忌として分析

2024-06-30 02:51:12 | マクロ経済

大作で、資料が多く参考になる。結論はないが、宗教と習俗・禁忌を分析している。知見は:
・修検教団:聖護院・金峯山寺・醍醐寺の緩やかなつながり
・相撲も男女相撲があり明治5年に禁止
・大相撲は伝統を再構築している
・女人結界:里と立ち入れない山の境界(著者見解)、最澄、空海が設定との伝承が明治初めまで信じられていた、
・山林修行(僧侶 虚空蔵求聞持法(真言密教で、虚空蔵菩薩を本尊として修する、記憶力を増大するための修法。求聞持法。))・山林寺院(巨石信仰、水源祭祀)・山岳寺院(比叡山、高野山など)
・役行者は山岳行者、役君小角(えのきみおずぬ)は葛城山、呪法
・明治政府:神仏判然令(1868年明治元年)→廃仏毀釈と女人結界の解禁→実際はそのまま結界が残る
・歴史的に忌避から排除、禁忌から禁制に変化した、筆者見解:宗教ではなく習俗
・清め→穢れ↔不浄→浄、ハレとケ、イデオロギーとコスモロジーでの筆者の分析は分かり難い
・大峰山と登山口の洞川(登拝の根拠地、宿泊施設が集積、登山講(八嶋役講)の講員(行者さん)が訪れる)の相互依存関係
・龍泉寺の女人禁制の解禁は「稲村ヶ岳女人道場修行」となり信者が増加、修験道最極の秘儀「深仙灌頂(じんぜんかんじょう)」にも参加、女性が増える

 相撲は造られた女人禁制をどう見直すか、大峰山は女性との共存に対応するのかが今後の課題だろう

 資料が豊富、見解は面白いが結論がない

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

奈良県の面白さを広域観光にして集客を:大仏商法と鹿からの離脱

2024-06-28 02:50:00 | マクロ経済

 かつて藤井寺に住んでいたころ、自転車とカー・サイクリングで回った。最近は近鉄に乗って京都から訪れる。しみじみと奈良県は見どころが多いと思った。

 しかし、現在奈良市は、宿泊観光が少なく「大仏だのみ(鹿もか)」観光と揶揄されている。確かに、夜の観光も無く「立ち寄り型」であり、神戸と同じ様相だ。但し、神戸には夜の観光、なんといってもステーキと港町の夜景がある。

 奈良市内に宿泊をすすめるには、奈良の広域観光を整備するのが得策だ。そのためには、エリアを回る電車とバス・ルートまたは自転車(電動・変速付き)が有効だ

 奈良宿泊前提として観光客が見たいエリアとして

①法隆寺エリア

・法隆寺、薬師寺、唐招提寺を見るなら一日はかかる

・法隆寺の移転など丁寧な説明があると奥深い

 

②明日香エリア

・ここは自転車で回る

・歴史を飛鳥資料館で学ぶ

・石舞台やキトラ古墳など古墳もの

・亀石や酒船石などの不思議物

・岡寺など初期仏教

③竹内街道エリア

・街道を歩き、古市まで、近つ飛鳥

・二上山、屯鶴峯、葛城修験道( https://katsuragisyugen-nihonisan.com/ )

・當麻寺

④山岳の寺

・長谷寺

・室生寺

・宇陀の町並み

⑤吉野

・近鉄の乗換をもっと簡単に

・坂を登る、金剛峯寺

・大峰山など葛城修験道( https://katsuragisyugen-nihonisan.com/ )との関連

⑥高野山

・奈良駅からバス便が欲しいものだ

・お参りと根来寺などとの関連

・山岳仏教として南都北嶺(興福寺と延暦寺)との比較

 さらに欲しいのは熊野古道への連絡だ。熊野三山を含めたルート開拓ができると魅力的だ。奈良、和歌山、南紀の観光は天皇制発祥の明日香(飛鳥)、山岳信仰、真言密教、原始神道という日本のおおもとが理解できる。これに対して、京都などは新興都市であり災害も多く歴史物が少ないと言える。

 もっと奈良は誇りを持つべきだ、そして観光客の興味を呼び起こさせる働きかけ(ストーリー)が必要だ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

都知事選と行動経済学、選択の科学

2024-06-22 02:18:55 | マクロ経済

 小池都知事はカイロ大らしいが、上から目線のパターナリズム( https://en.wikipedia.org/wiki/Paternalism )のようで、Stay Homeとかの英文の言い含めるようなご指示が大好きだ。この方式は、日本語版Wikiでは「強い立場にある者が、弱い立場にある者の利益のためだとして、本人の意志は問わずに介入・干渉・支援することをいう」というとおりだ。

 なお、行動経済学では、このような押し付けよりも、ちょっと教えるNudge ( https://en.wikipedia.org/wiki/Nudge_theory )が有効とされる。

 どうも、小池方式は押し付けが目立つ

 かたや、蓮舫であるが今までの行いやリーダーとしての統率というより自己表現だ。これは小池に似ている。行動経済学で言うバンドワゴン的だ。

 報道では 油っぽい緑のたぬき と 固くて食べにくい白のきつね と言っているらしいが、うどんとそばの違いはあるが麺類としては同じだ。

 後に控える広島からの出馬も小鳥系カップ・ラーメンみたいな感じがする。

 健康によさそうな、歯ごたえのある野菜炒め定食でも出てこないか

 候補者も多い、30人程という、選択の科学では、おすすめ5つに絞り込んだ方が選択しやすく人が集まるとある。

 なかなか難しいところだ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ともに食べるということ(福田育弘):著作の寄せ集めで分析の整理がない

2024-06-08 02:24:39 | マクロ経済

 早稲田と南仏のソルボンヌで学んだとある。どうりで日本とフランスの事例が混じっているはずだ。内容は6つの著作をまとめたもので、つながりは今一つ。
 知見は:
・1999年民博調査:箱膳(会話は厳禁、食事後団欒)→ちゃぶ台(大正後期・昭和初期 1920~30に出現 話してもよいと厳禁の両立)→テーブル(1960~70年に出現 話してもよい)
・ちゃぶ台は関東では「ちゃぶちゃぶ」(「西洋道中膝栗毛」西洋料理店の意味、「日本大辞書」横浜英語で食事の意味)、関西では石毛(民博)が卓袱料理の食卓が家庭に
・外食:明治36年(1903年)白木屋の食堂が嚆矢、大正から日比谷公園の松本楼に家族連れ、お子様洋食(1930年)三越日本橋本店
・70年代の高度成長期に、仕事に忙しい父はおらず、団欒は失われ、TVが主体
・80年代、個食、孤食の表現が出る
・2000年 中食の調理済みが伸びる
・千利休の侘茶は遊興的、開放的な茶を茶室という閉鎖的、規範性、回し飲み喫茶で一座建立の盟約(熊倉功夫「茶の湯 の歴史 千利休まで」)
・本膳料理:五の膳まで、同時に出る、土産用も、同時に出る場合もある
・すし屋:内店は座敷、普通は出前と土産、その場で食べるのは夜の屋台店(内店の前にも出した)→冷蔵庫がなかったとすれば、夜でも出せるネタはづけや煮物しかない
・Convivialite:共食、Gourmandise:美食的な、Gastronomie:胃袋統制術 はブリア・サヴァラン
・フランス:そそくさと食べると精神性がないとの評価、共食を重んじる、最後の晩餐も→日本は孤食か、鍋はどうか、要は食事の出し方、様式の違いと長々と述べているが

 著述に散漫な印象がある、フランス帰りの意見というところか。共食の意義を時代、経済、国別の習慣などの観点で明確に分析して欲しいものだ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

貧乏人の経済学(アジット・V・バナジー、エステル・デュフロ):いまさらながらためになる、希望と励ましが貧困からの脱出

2024-06-02 02:21:47 | マクロ経済

 2012年の出版、山形の訳。読み返す、知見の整理は:

・ジェフリー・サックスの貧困国援助主義 対 ウィリアム・イースタリー 援助反対

・アマルティア・セン:貧困による才能の無駄遣い→支援の質が問題か

・貧困でも金があると贅沢をする、健康に配慮した若年の栄養や予防が本当は重要だが

・祭が盛んな金をつぎ込むところはメディアがない、メディアがあるとそれに金を使う「退屈」から救ってくれる

・公衆衛生はお節介でも過干渉でも貧困国に行う、説明も

・教育は「優秀な子」優先になり格差を生む、すべての子という方式に変える必要がある

・大家族の子供は金融資産、将来の面倒をみてくれる

・助け合いはある程度まで

・貧乏な人の保険、ファイナンス(融資)、貯金はうまくいかない、モラルハザード、信用調査と不良債権の負担、自制心(無駄を切り詰める方が効果的)

希望と励ましが生活向上と節約、貯金へのみち、生き延びる不安が無駄遣いの原因→ドヤ街などの研究でも同じような知見があった(「ルポ西成」「ルポ路上生活」(國友公司))

・貧乏な人に起業は難しすぎる、資金を集め、起業して、さらに成長させるのは至難

・結論は「3I問題」無知 ignorance、イデオロギー ideology、惰性 inertia 現場を知らない人が、こういうものだと思い込み、それを続ける

・貧乏は①うまくやれる手法など情報を持たない・入ってこない、②面倒な生活運営(水汲み、買出しなど)責任を負う、③不利な価格(高い金利など)、④3Iによる失敗、⑤期待の有効な活用(後ろ向きな評価を受けるのではなく、前向きな事例を見るとかの経験を重視)、やればできる子に。

 

 さらに、制度についても考察がある、面白い

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

絶望を希望に変える経済学(アジット・V・バナジー、エステル・デュフロ):貧困と移動、貿易と所得移転、リソース活用の障害など、事例が多い

2024-05-19 02:53:29 | マクロ経済

 原題はGood Economics for Hard Times うまくいかないときの良い経済学、MITの2教授(夫婦)19年ノーベル経済学賞、貧困の経済学で有名

 経済がなぜうまくいかないかを述べている、特にバナジーにからむインドの経済分析が新しい。知見は:

・移民は労働供給と労働需要両方を右にシフトするため賃金は上がらない

・貧困地域から職のある都市に移らないのは、リスク(機会費用:生命、費用、故郷なら安心)と住環境悪化や住宅負担(2極分化し高級かスラムか、故郷なら住居がある)、家族の面倒を見る人手が必要

企業は群れる:クラスター(集積は)は発展のメリットもあるが、産業崩壊の場合はその都市を死滅のリスクとなる。モレッティは劣位のクラスターの補助金より労働者移動の促進を提唱、これに対し筆者は移動の進行遅れとその間の薬物・アルコールの「絶望死」が急増するコミュニティ問題の発生、短期的に復活は望めないと指摘し補助金の必要性を説く

・リカード:比較優位(どの国も相対的に得意な産業をやるべきだ)

・サミュエルソン:労働集約と資本集約の産業があれば負け組の労働者に、勝ち組の税金を「政府が再配分」しないと生活向上がない(ストルパー=サミュエルソン定理 https://en.wikipedia.org/wiki/Stolper%E2%80%93Samuelson_theorem )

・労働者の移動も資本の新規投資や土地所有も硬直的ならリソースの移動が進まない、リスクを恐れる体質

・自由貿易は良いのはリカード以来根を下ろす、クルーグマンは賛成、マンキューは反対

・全要素生産性(TFP)は労働者の教育水準による技能と機械の性能の向上、この2つ以外を説明できないためこの名前にした「無知を計量化したもの」(ソロー)

モレッティは地域開発が成長の終焉を回避するてこにはならないと指摘、都市間の雇用機会のやりとりであり国家全体には寄与しない

・シカゴ大ブースの研究では、富裕層10%への減税は雇用と所得の増加もなかったが、それ以外90%への減税は効果があった、つまりトリクルダウンは絵にかいた餅

・教育のリソースがあっても雇用のミスマッチがあると就職せずに「ひたすら待つ」

・ラッダイトの背景は1755~1802年にイギリスのブルーカラーの賃金は半減、1820年に回復(65年を要した)

・高い最高税率は税引後だけではなく税引前の所得格差も減らす(報酬が税金になるから高報酬の価値が下がるため)

・アメリカでは教育水準の低い白人の死亡率が上昇、70年代以降の喪失感(→トランプの出現か)

・デンマークFlixicurity:解雇の自由性と手厚い失業保障、NIT(負の所得税)の現金給付も有効

 なかなか奥が深い

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

円安と京都の観光公害

2024-05-05 02:27:34 | マクロ経済

 ¥/$160近くとなった、¥/$65(現行の40%相当)が日本の0インフレとアメリカのインフレの歴史30年から考えても、90年の¥/$130から考えると妥当だ。
 いままでの「円高は悪だ」という考えが、海外生産も多い今、間違っている。その反面円安のため労働力が割安となり、TSMCはじめ、工場回帰により我が国での生産拠点が増加したのは喜ばしい。

 京都は観光公害真っ盛りだ。錦市場は串もの歩き食いのフード・コートとなり、3千円の串物や丼(和牛と海鮮など)が飛ぶように売れているらしい。高倉の入口は整理の警備員まで出動している。京極のアーケードにある忍者や侍、新選組などの土産物店は海外観光客で一杯だ。前と違い、ドラッグ・ストアの爆買いは見ない。
 割安の価格で楽しめるから食べないと損というのは良く分かる。この円高では旅行も割高になっており、ちょっと行く気がしない。

 それにしても、デパートで焼き鳥やケーキの立ち食い、夕方に割引シールを貼った横から買っていくのは、コロナ禍前の様相と同じだ。アジア系より欧米系が増えてマナーは大分良くなった。前は、レジ済みのカゴのままホテルに持って帰っている例が多く、取っ手が取り去られたスーパー・マーケットも未だある。

 自転車での観光も多い

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

技術革新と不平等の1000年史(ダロン・アセモグル、サイモン・ジョンソン):MITの碩学が常識を覆す

2024-05-01 02:25:20 | マクロ経済

 MIT Sloanの教授2人の共作、知らないと思ったら当方より10歳は若い。Sloan留学当時はいなかった訳だ。素晴らしい著作になっている。

 技術発展が搾取につながった不平等な事例など、技術と社会構造、政策の関連からの新しい観点を提示している。知見は:

・過去千年の新発明は繁栄の共有をもたらさなかった、特に中世と産業革命後のイギリス

・250年前のイギリスと現在はイノヴェーションとエリート主義が似ている

・本書の3つの観点

①生産性向上と賃金上昇の時期は何によってきまるか

②よりよい未来へのテクノロジーの方向性は

③AIへの熱狂と気がかりな別の方向への進展

 

・生産性バンドワゴン:生産性が高まると、更なる生産増強により多くの労働者が必要、賃金が上がる はずだがそうでもない事例もある

・労働者の需要増大と賃金上昇の阻害要因

①雇用者と被雇用者の間の強制的な関係:強制労働

②地域への縛り付けと競争の欠如

③賃金は交渉により決定、市場の力だけではない、レント・シェアリング

・スエズ運河の成功体験がパナマ運河の悲劇を生んだ

・説得する力:支配力、自己強化の力学(悪循環)

・中世は宗教が金食い虫、大聖堂ブーム、修道院の運営と土地支配、社会的な配分が不均衡:エリートが搾取、農民が貧しい

・マルサスの罠:貧者は無能、エリート保護、人口抑制(指数関数)は生産(等差数列)が追い付かない(誤謬だった)

・農業:狩猟の倍は働き、身長は低く、寿命は短かった、格差・階級を生んだ

・テクノロジーの哀しみの収穫:アメリカの黒人奴隷、ポリシェヴィキ・ロシアの飢えと恐怖支配(強制収容所)

・1700年半ばに中間層(Middling Sort:著作  https://uppsala.academia.edu/MargaretHunt/CurriculumVitae )の立身出世がプロジェクトの時代と社会・制度変化につながる、次に来るアメリカの発展も

・イギリスは1750年頃(産業革命)から労働の搾取により長時間労働と時間当たり賃金の低下が発生した:週65時間労働

・ラッダイトの機械破壊は工業化による労働者の生活破壊が原因

・生産高の向上に比して、賃金の増加が低い「所得の分配」問題は労働組合の未組織もあった

・アメリカ的生産システムの優位性がイギリスの産業生産性と労働者の交渉権を改革に影響した→Chartism(人民憲章運動 https://en.wikipedia.org/wiki/Chartism )

・フォードの生産システムは労働者をくたくたに、賃金を上げるで解決「生産力は購買力を創出する」

・北欧SAPはレント・シェアリング(超過利益の共有)として公平な分配を規定、協調的組合主義的モデルで成功と成長、富の偏在を修正する

・アメリカ戦後、テクノロジーが同じだったため成長と格差縮小(1960年の「大圧縮」)、テクノロジーによる雇用排除があったが代替の雇用創出があり、スキル習得と賃金上昇につながった(雇用と賃金の好循環)

・第二次オイルショック以降、成長鈍化、教育格差、人種格差が発生、労働分配率も67~70%だったのが、2019年には60%を割る(オートメーションによるレント・シェアリングの崩壊)、さらに労働組合が衰退(一部の組織のマフィアとの絆もあり自滅)、テクノロジーに労働者の発言権がない

・オフショアリングによる生産移転も雇用を減らし、賃金低下に、失業は「絶望死」となり大卒ではないコミュニティ崩壊

・フリードマン・ドクトリン「企業の社会的責任は利益を増やすこと」、ビジネス・ラウンドテーブルは金儲けのあらゆる試みを正当化(エンロン事件になる)と労使で分け合う「厚生資本主義」ではなく、企業は株主への責任

・1970年代から経営のプロ化、CEOのMBA率も80年25%、2020年43%

・GAFAMでトップ企業の市場支配

・産業レベルから企業レベルの労働組合にアメリカでは1947年タフト=ハトレー法、ワグナー法、1980年は20%の組織率が2021年には10%

・規制や誘導などの信号機を取り去ってみると「裸の道路」、テクノロジーが邪魔になっているケースもある

・人間の知能は社会的

①情報はコミュニティにある

②推論は社会的コミュニケーションに基づく

③他者への共感と共有がある

・テクノロジーによる労働管理・監視は「レント・シフティング行為」、労働者の生産性低下と賃金低下を引き起こす、一定勤務がなくなり需要のAIの都合で働かされる「ゼロ時間契約(基本時間がない)」と会社からのスケジュール変更

・AIベースでは作業の自動化と人間監視になり経営者と労働者の二層構造となるディストピア

・中国などのAI活用の監視と情報規制

・Googleは関連性のあるウエブサイトの優先順付け(再帰)と広告収入・広告送り付けの関連

・フェイスブック(「素早く動き、(今までの慣習を)破壊せよ」)のAIでのカスタム・オーディエンスは興味のまとめ、「いいね!」は心理的悪影響、情報を取りに行くAIも問題

 

デジタル技術の補完

①労働者の現在の仕事の生産性を高める

②AIによって新たなタスクを作る

③人間の意思決定により有用な情報を提供する

④異なるスキルとニーズを持つ人々を結ぶプラットフォームを新たに構築

・対抗手段としては、労働組合、市民行動(コミュニティとフォリーライダーの参加)

・テクノロジーの方向転換には、補助金、大手テクノロジー会社の解体、設備・ソフトウエアの低率税(5%、同じタスクで労働者は25%以上)の見直し、労働者への訓練投資、政府のリーダーシップ(社会への恩恵で評価)、プライバシーの保護とデータ活用の承認、通信品位法230条の撤廃:ユーザー発言についてプロバイダーの責任、デジタル広告税

・その他の政策として、富裕税、再分配とセーフティ・ネットの整備、教育、最低賃金(州の格差是正)、学術界の改革(御用学者の追放と基礎研究への出資)

 テクノロジーが必ずしも賃金を増やさない、政策・制度による搾取、今後のAIによる監視の危険性、富裕と労働者内部の格差など幅広い観点で俯瞰している。コミュニティの教え、共感し、共有するとうのは重要だ。

 誠に分かりやすく、示唆に富む

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

格差の起源(オデッド・ガロー):統一成長理論としてマルサス経済時期と産業革命以後200年を一体に考察、グラフの軸の定義と論拠など不明

2024-04-21 02:30:50 | マクロ経済

 Oded Galor( https://en.wikipedia.org/wiki/Oded_Galor )はコロンビア大学の博士号のようだ。統一成長理論( Unified growth theory  https://en.wikipedia.org/wiki/Unified_growth_theory )として200年前までマスサスの法則(食料増=人口増)のため経済成長がなかった時期までと、産業革命以後の(食料増>一人あたり子供の数の減少による人口減)による経済発展を多面的に考察している。

 内容は、ジャレド・ダイヤモンドやSocial Capitalのパットナムなどの孫引きが多い。しかも、Gordonによると1870年を起点として1940年が変革の年との考察もある。( https://blog.goo.ne.jp/n7yohshima/e/d407f650d35bd5bfeffa1c2d54a53cb4 )

 筆者の観点は独自だが証明や根拠が分からない。

 技術は収斂進化に似て各所で同じ技術の発生が見られること。農業革命(技術)が人口を増やすが人口の増大は一人当たり所得を向上させない(図4)というのも概念的だ。

 さらに、マルサス時代(産業革命以前の意味)の人口増加でも人口に対数を利用しておらずセンスを疑う(図6)指数関数的増加には対数を使うのは常識だ。

 マルクスの推測は産業革命により人的資本の重要性を低下させ、生産手段の所有者(資本家)は搾取するという「階級闘争」の仮定は確かに正しくなかった。共産主義が工業でなく農業国家(ロシア、中国など)から進行したのも指摘の通りだ。(逆に国家と国民の争いや飢饉・虐殺が発生した ピンカーなど https://blog.goo.ne.jp/n7yohshima/e/0a0470b08fea4ec903991c0cd52138e3 )

 但し、小子化、教育の充実、生産の高度化の「人的資本」尊重の生産性向上サイクルは結果論ではないか。乳幼児の死亡率が減る医療体制になると出生率が下がり(成長の期待値が高まり、平均寿命も延びる)、そのため教育への投資が時間と金額とも上がるというのが本来の姿だろう。そのため、先進国では、出生率低下、高齢化(平均寿命の伸長)、人口減少のサイクルがあるのは常識だ。

 産業革命と「相転移」も説明が良くわからない。一般に生産に石炭や石油という化石燃料を利用するようになればその分生産が増える。ゴードンの指摘にあるとおり1940年からは生活の質も更に良くなり、小子化と男女平等などが進行した。

 社会システムとして「収奪的」か「包括的」かどうか、「専制」か「民主」主義か、「資本主義」か「共産主義」かの論議は大きすぎるテーマだ。この1冊で語りつくせると思えない。

「文化はゆっくりしか進化しない」は「文化の慣性」であり水平(同年代)・垂直(世代)の価値観の維持とあるが、それだから文化というのではないのか。その他、行動経済学からカーネルマンの引用などあるが付け足しのように見える。

 最後のグラフにある「人口集団の均質性(多様性の反対)」と人口密度や都市化率、GDPなどのラッファー・カーブ( https://en.wikipedia.org/wiki/Laffer_curve )のような形状は、計算手法、根拠、証明が全く分からない。何をもって「最適」と判断するのか理解に苦しむ。逆に適度な均質性とはどういう状態なのか?

 結果からその要因を逆に分析しているとしか思えない。オリジナルな発想があるなら、その理論で事象を証明すべきだ。「格差」の根拠は普通に思いつく分類にしか過ぎない。

 本書は疑うべき内容が多く、既存の知見の流用も散見され、避けるのが得策としておく

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

開発遅延はかつてのJapan as No.1と礼賛 の裏返し:カイゼン、労使一体、職人

2024-04-11 02:55:35 | マクロ経済

 かつて、我が国の製造業は効率と品質において世界の模範となった。いまや、これが陥穽となっているのは、スケジュール遅延と品質問題だ。3つの問題がある

 

1.無理なスケジュールの押付け:役員と生産現場の乖離、利益優先

トヨタをはじめ、無理な開発スケジュールの経営からの現場への押し付けがある。これが、法令無視などにつながった、かつての労使一体の開発(ホンダのワイガヤなど)は無くなり、経営層だけアメリカ型利益志向となりイエスマンが仕切る社内体制となった

・東芝など、事業部に利益出しを迫った、そのため会計上の益出しと不正につながった、これは投資家向けへの役員の忖度が現業への圧力となった

2.硬直した請負条件:スケジュールと金額、施工問題

・大手ゼネコンでも請負の開発スケジュールの遅延がある。麻布台ヒルズ レジデンスBの遅延( https://diamond.jp/articles/-/336690 )はスケジュール短縮を狙った独自工法の問題、スケジュールのミスの大成建設「世田谷区役所」( https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00154/01836/ )など枚挙にいとまがない

・長期大型工事の赤字では「麻布台ヒルズ森JPタワー」の清水建設が喧伝されている( https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00154/01994/ )

・さらに、建設での瑕疵もある。大成建設の(「仮称)札幌北1西5計画 」における施工不良と解体( https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00154/01739/ )、、清水建設の「ザ 豊海タワー マリン&スカイ」( https://news.yahoo.co.jp/articles/6fed7dd1133960e3c0bc67ce18ab946584c1eac3 )、「田町タワー」( https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00154/01881/ )など多々ある

・加えて、作業所の事故は大林組の八重洲鉄骨崩落事故( https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/na/18/00224/103000006/ )など今までにない事故となっている

・しかも、作業所での下請けにおける職人が減り、専門性の伝承も危うい。急いだスケジュールになると事故の可能性が技能とコミュニケーション欠如により上昇する

3.リーンすぎる在庫とサプライ・チェーン管理

・リーン生産の反動により、在庫が減少し、コロナ禍や天災による工場事故や高速道路の不通などにより生産が遅延する場合が目立つ

・納入も、最安値の単独下請け依存が目立ち、下請けの裾野が狭くなるのと価格競争激化(下請けの採算低下)が目立つ

・リーン生産とはピラミッド最上部の元受け(メーカー)が利益を享受するのみで、その他は納入時間・在庫完備・生産の変更の対応を受けざるを得ない構造政策となっている可能性がある(親の総取り構造)

・冗長性がなくなり、効率優先の裏返しというべき事態だ

 あの著作から30余年、いまや弊害も目につく、我が世の春はICTで世を押さえているGAFAだ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

金利のある世界と中小企業の賃上げ:今までの延長か

2024-04-07 02:06:05 | マクロ経済

 17年ぶりの利上げというがマイナス金利の終焉とイールド・カーブ・コントロールという官製経済の縮小だ。

 10年債でもアメリカ4.2%に対して、我が国は0.7%と3.5%の差がある。インフレ(CPI)がそれぞれ3.1%と3.2%のため、アメリカ買いが続いて円安投機が起こっている。

 その円安をてこに株高も発生して、実需というより海外からの投機としか言いようがない。

 日銀は中小企業の賃上げも見込んでいるが、岸田政権は「政策総動員」と、ゼロゼロ融資の二の舞のような補助を考えているのではないか。それよりも下請けいじめ対策( しわ寄せ防止総合対策 https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000522110.pdf )をさらに厳格化させる方が良い。

 安易な補助金はゾンビ企業の延命を生むだけだ。しかもバラマキに近く、成長産業への重点配分とするべき時間も査定もできていない。

 昔、中小小売店保護のため、大店法の規制があったが、2000年に立地法に改正( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E8%A6%8F%E6%A8%A1%E5%B0%8F%E5%A3%B2%E5%BA%97%E8%88%97%E6%B3%95#:~:text=%E5%90%8C%E6%99%82%E3%81%AB%E4%B8%AD%E5%BF%83%E5%B8%82%E8%A1%97%E5%9C%B0%E3%81%AE%E7%A9%BA%E6%B4%9E,%E5%A4%A7%E5%BA%97%E6%B3%95%E3%82%82%E5%BB%83%E6%AD%A2%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%80%82 )された。

 その時には、ショッピング・センターは中心市街地から郊外に転出し、市街地の中小企業はコンビニに制圧された。このように、時代遅れの保護や補助はシャッター街を生んだのみだった。

 また、賃上げも〇%とか言うが、基本給のみであり、職能給・職種級など手当は含まれない。給与所得が〇%上がる訳ではない。さらに、手取りは税金・保険料などの増加もある。

 企業が、賃上げの代わりに手当を厳しくする、役職定年を引き下げる対応などあると生涯給与は下る。65歳定年が基本だが、最近は資生堂や製薬など黒字企業でも50歳以上のリストラも多い。企業の人事は昇給査定(SABCの比率を変える、または降格もありとする等)や退職金を操作するのに長けている。一部の企業などは退職金がないが(見た目の)給与水準を高くしているところもある。

 

 世の中、簡単な数字だけや、中小企業保護の御旗を疑う方が良い

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

株高と円安は投機だったか:利用された我が国のリフレ政策見直しの遅れ

2024-03-20 02:26:17 | マクロ経済

 リフレ政策とは、インフレ期待を呼ぶはずだったが、提唱者の一人だったクルーグマンも2014年に「間違いだった」と早々に認めている。(https://www.nytimes.com/2014/10/31/opinion/paul-krugman-apologizing-to-japan.html https://equitablegrowth.org/morning-must-read-paul-krugman-apologizing-japan/ )

 デフレが問題ではなく、経済成長がほとんどない、給与が上がらない(終身雇用のメンバーシップ制の終焉)が実は問題だったと今わかる。

 利下げの世の中が続いたが、欧米はインフレ対策として金利を上げた。しかるに我が日銀は低金利、金融緩和、イールドカーブ・コントロールと3つ揃ってそのままだった。国債保有とETF保有が大きく、「売るに売れない、売ると下る」というジレンマに陥っていた。

 ここで投機筋が、円安誘導(65円/$あたりが適正なのだが)、円安をてこに円買いと株の投機を始めた。

 よって、円安が来て我が国のGDPはドイツの後塵を拝する。恐ろしい勢いの株価の上昇になる。下がっても空売りでのヘッジがあり相場が動くと儲かるのが投機だ。

 これを、メディアが分からないとはとても思えない。コロナのばらまき低金利とその後のインフレ、高金利政策から、まさかの投機が起こった。

 実体経済では、中国の不動産関連のバブル崩壊、アメリカでの不良債権(不動産関連融資とクレジット・ローンの滞納)、ウクライナ・パレスチナでの紛争など懸念材料が多い。そのため、投機のターゲットとして我が国の円レート、株が狙われたとしか思えない。

 やっと、ゼロ金利解除とYCC(長短金利操作)の撤廃、規制国債相場から自由経済に戻る。リーマンショック後の低金利により、家計資産の金利の損失を、国家の赤字利払い減少にあてた仕組みも終焉に向かう。逆に言うと、これからの国家財政の利払いが膨らんでゆく。増税への圧力が強くなる。

 地獄の窯の蓋が開いて、損するのはヘッジのない一般投資家

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アジア発酵紀行(小倉ヒラク):発酵とアジアの食・文化・都市格差

2024-03-08 02:50:23 | マクロ経済

 謎のアジア納豆(高野秀行)も面白かったが、この著作も良い。
 中国雲南省の縦の茶発酵の道と、ミャンマーからインドまでのヒマラヤ縦断道とミャンマー横断道の2種類の旅行記だ。

 知見は:
雲南省の縦
・菌は適者生存、川を越えると変わる
・日本酒は麹菌で糖化、酵母がアルコール化という「バトンリレー」方式、ビールは麦の発芽時の自己分解作用
・白酒の裸麦は種麹(クモノスカビ)を直接に入れて発酵、蒸留
・ナシ族は商売上手、雲南の麗江( https://blog.goo.ne.jp/n7yohshima/s/%E9%BA%97%E6%B1%9F )など観光開発、平野部を押さえ貿易拠点化、1992年の鄧小平「南巡講話」から発展、「民族文化のテーマパーク化」に、都市化は漢民族の昆明(クンミン)のみ
・トンパ味醂が麗江にある34度ときつい
・ダーリーの藍染:阿波のすくも、石灰石による色素遊離で携帯可能な商品作物化(染料としての生産産業)。ペー族はいきなり石灰に入れる1段構えの発酵のため地場藍染
・茶の種類
①非発酵茶:熱・乾燥・摩擦の物理的作用:緑茶
②茶自体の酸化酵素利用:青茶:ウーロン、紅茶、白茶
③カビや乳酸菌など後発酵:黒茶:プーアル茶
・黒茶はかけ流し、一杯目は捨てる、「泡茶」

ヒマラヤ縦断道とミャンマー横断道
・集落の孤立と物の交輸のできない平野部と海岸沿いに独自な発酵がある:保存食が山間に、伝播した先に土地の特性に合わせたバリエーション、「隔てられているが、集まっている」集落がねらい目:大きな川沿い、星団のような島嶼部
・インド亜大陸にはアニミズムのヴェーダが根本にある。ヒンドゥー教は遊牧系アーリア人に先住民族の農耕系ドラヴィダ人の文化:創造神ブラフマー:「肉と乳」と「豆と野菜」に分かれる、バラモン教とカースト制度、これに対抗がカースト否定の仏教
・ネパールのパタンにあるグンドゥルックは日本のすんき漬け( https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/sunki_zuke_nagano.html )そっくり
・麹は
①麦を練る
②豉:大豆にカビ
③蘖(よねのもやし):米とカビ→糀の祖先
・パタンのリンブー族のダルバートは発酵食品で構成、納豆カレー
・インド コルカタのマニプルでのナニは魚だけで作る魚醤(インドの滋賀:鮒ずし)
・コルカタが糀の元祖らしい

 面白くためになる

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

GE帝国盛衰史(トーマス・グリタ、テッド・マン):大企業は東西同じ、アメリカでもメンバーシップ体制だったとは

2024-02-15 02:58:27 | マクロ経済

 トヨタの問題を考えるのに、GMやGEの変容は参考になると思う。ただしGEは本業が変更になった。祖業の信用を担保に金融に進出したのが特徴だ。

 GEやGMはその発祥から官僚的な縦割り、エリート選別、トップの独裁があったと聞いていたが90年代までその影響があったとは初めて知った。

 大企業病は東西で変わらずというのが感想だ。

 まず、ウェルチのGEキャピタルも祖業の信用によりCP( https://www.ey.com/ja_jp/corporate-accounting/glossary/glossary-a-z/cp )を利用した低利調達資金の運用でありもともと有利な仕組みだ。さらに大損の保険を隠蔽など魔窟のようだ。

 さらにGEパワーは将来の維持管理契約の収入参入など、会計のマジックはエンロンと変わらない。

知見は:

CEOへの権限集中とへつらい、レガシー造りへのこだわり

マトリクス型のサイロ構造組織(部門毎の閉鎖的階層):複数の階層、複数の上司(ラインと本社など)

・人事の部門異動のローテーション(一部はエリート・コース)、監査として2年のエリート・コースも

Borg(GEのHub)をコングロマリットの中枢に、階層主義の復活

Rank and Yank:ウェルチの下位10%を退職させる人事方策→最低の制度

・業績目標の部門での表明と達成:手段は問わない、結果主義、悪いことは失点になるため、伝えない、握りつぶすというのも同じ

Pivot: CEOの新規事業展開→買収と売却、決めると高値買いも辞さない「目的化」

・役員への過大な経費支出→取りやめに

・リーマン・ショック後のCP発行を政府に救われる、バフェットの$30億の優先株投資

・FRB(IRSではない)の監査:エネルギー会計、保険事業は大損→SEC和解案(2020年$2億 https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-12-09/ge-agrees-to-pay-200-million-to-settle-sec-accounting-probe )

・GEヘルスケアのプレディクス(データ統合と活用)は完成前に売り込み、工場を建ててから社員を雇い、生産ラインを立ち上げてから、設計するようなもので経営陣に現場が従うというぶん投げに近い→我が国でも最近多い

 GMも一度破綻したが、GEも3分割の様だ( https://en.wikipedia.org/wiki/General_Electric )ウェルチのCapitalは良い思い付きだったが、後に火薬庫となった。

 我が国は、それに比べて長寿企業が多いが、組織や風土はかつてのGEと似たようなものだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トヨタ車のスタイリング:昔の未来より、未来的

2024-02-11 02:40:56 | マクロ経済

 トヨタは最近攻撃的なスタイリング(デザインではない、外装のこと)が多い。歌舞伎のようなプリウスや昆虫のようなC-HR( https://blog.goo.ne.jp/n7yohshima/e/926eac76d8fdb26e9ea1fce7e3333c4e )のスタイリングを批判したが、今回のナマズのようなプリウスには驚いた。

 BMC 1800 Pininfarina Aerodinamica 1967年 ( https://minkara.carview.co.jp/userid/1095234/blog/42782257/ )は昔の空力の理想のコンセプト・カーだが、これを超えた現実の車が今回のプリウスだ( https://toyota.jp/prius/?utm_source=google&utm_medium=paidsearch&utm_campaign=prius_always_2204_tq&utm_content=2204_prius-always-tq_paidsearch_google-src_001_td_prius-rsa-1x1-common_prius-jptop&utm_term=all_google_src_model_001&gad_source=1&gclid=Cj0KCQiA2eKtBhDcARIsAEGTG43h4beVlsW0xKOn2U6KB279CnUlGo3yulLC8PI2xMy_dbYnKKaAZGwaAmA0EALw_wcB )

 サイド・ヴューではフロントのノーズとウインドウはほぼ連続し、22度ほどの傾斜だ。昔は倒しても30度というのがあったが、それより倒れてフロントウインドウの上はほぼ運転席の額の先だ。リア・ウインドウも同じ位の傾斜であり、Bピラー(フロント・ドアの後ろの柱)が最高点になる。さらに、Cピラーも太く後方視界は相当に悪い。

 これは空力的には良いが、フロントもリアも車端がつかみにくく、視界も狭まっている。Aerodinamicaでは、車幅はつかみやすい。また、室内空間も広い。今見ても古臭くない、実際その後の色々な車に影響を与えたバランスのとれたデザイン(機能設計)だ。

 プリウスがスポーツ・カーなら文句はないが、狭い道の多い我が国では速度が低く空気抵抗など関係がない(空気抵抗はほぼ車速の二乗に比例するため)実用の車に、昔のコンセプト・カーを上回るスタイリングは必要がない。

 プリウス( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A8%E3%82%BF%E3%83%BB%E3%83%97%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%82%B9 )は3代目までがスタイリングやパッケージングが良かったが、今は幅広なスポーツ・カーだ。( https://toyokeizai.net/articles/-/729896 )世の中のニーズと合致した製品(Product)をトヨタはいまや供給していないように思う。自動車界の覇者のおごりだろうか。顧客の喜びより作りたいものを作っていまいか。

 方向性を間違っていないか、昔のクジラ・クラウンの蘇りか

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする